D.I.Y.出版日誌

連載第361回: このたわごとに意味はない(AIの自動生成かもしれないぜ)

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2023.
05.27Sat

このたわごとに意味はない(AIの自動生成かもしれないぜ)

国民総背番号制の何が悪いの便利だからいいじゃんといっていた連中がばがばのゆるゆるで常時失禁状態だったのが明らかな今日この頃いかがお過ごしだろうかそれでも大政翼賛で国体万歳なんだろうか寡占的テック企業どもやある種の政治家たちがめざしているのはまさにそのばかさ加減を利用することなんだけど世の中全体が大喜びで大挙してばかに邁進するこの現状日本人はまたしても滅びたがってでもいるのか自分だけは特別だとでもかんちがいしているのだろうか企業や政治家はばかを操って支配していつまでも生き血を啜れる食い物にする側にいつづけられると思い込んでるようだけれどごく一握りの人間だけがいい思いをする世界なんてそんなにいつまでも持続するんだろうか教えて賢い健常者様方生き血を提供する側はたぶん企業や政治家が望むより早く絶滅する生き血を啜られるだけでは生活していけないから啜られるためのボタンをタップする金すら稼げなくなるそうなればおまえらの餌もなくなるんだよばーか自分の尊厳を踏みにじる権力を諸手を挙げて大歓迎する常軌を逸した態度を眺めていると日本人はつくづく自由意志や人権や民主主義を憎んでいるのだなと実感する思考を権力に委ねることを切望しそれを妨げるものを烈しく憎悪し排除するそんな賢い国民性ってどこから来たんだろう何かを知りたいときかつては図書館で本を調べたちょっと前は Google で検索した最近はソーシャルメディアでそしてこれからは AI でかつて図書館は政治家の都合のいい本だけを収蔵するように強いられたいまは民間企業に委託されポイントカードで利用者が管理される企業や政治家に都合の悪い本は廃棄されるGoogle は利用者の視界をかれらの利益になるように操りそれを全世界だと思わせるそして吸い上げた個人情報を金に換える買いたがる政治家もいるだろうし事実売り買いされているソーシャルメディアはそれをさらに洗練させた若者たちは自殺し民主主義の議会は暴徒に襲撃されたそしていよいよ真打ち AI の登場だひとびとは作話にとじこめられ外の世界に触れる機会は得られない図書館どころか検索もソーシャルメディアも必要ないだれかに都合のいい嘘をあたかも本当であるかのように吹き込まれそれを全世界と信じるすばらしい新世界のはじまりだ

 アイドルに課金する小遣いのために闇バイトに応募して逮捕され親が七百万の負債を負った女子大生の話を読んだアイドルにせよホストにせよ動画配信の何かにせよ若者から搾取する悪徳商売が気に入らない。 「推しとか推し活なんて言葉を考えたやつは地獄に落ちてほしい努力が大事といいながらその努力の具体的な方法を教えずに成果だけ求めたらそりゃ若者たちは一攫千金の自己啓発みたいなのをポジティブな努力と捉えるようになるだろうよそれがテック企業や政治家の信奉する新自由主義経済ってやつなのかもしれないけどさソーシャルメディアはあっさり成功したやつだけをまるで全世界のだれもがそうであるかのように優先表示するから若者たちにはそれが全世界に見える闇バイトやらインスタ映えを意識した雑な強盗やらの流行はそういうことあれソーシャルメディアの安易で輝かしい成功のイメージにとらわれたポジティブな努力なんだよソーシャルメディアのアルゴリズムはそのようにして自由意志を糞以下に貶めた適応できなければ糞以下の扱いを受けるAI の時代ではさらに世間の普通の人は努力しなくても当たり前になんでもやれる生まれながらにアルゴリズムに聖別されている一方生まれながらに疎外されたおれは職場でもウェブでも浮世のどこでも蔑まれるだけ筋トレして走っても貧弱薄らデブ何を書いてもどんなサイトを構築してもなんにしてもそう努力してもむだ募集要項も掲載ページも削除したあとでお遊戯会に応募してきた方もう受けつけてないですって教えてやっても無視なんなの礼儀以下じゃんおれのサイト一瞬たりとも見ていないでしょ。 『本の網や連載や日記どころか募集要項さえも見てないってことじゃんだってもう存在しないんだからそれでなんで応募してくるんだよ⋯⋯そいつの Twitter を見に行ったら同人仲間の悪口をいっていてしかも口汚いのでひいたこえーな創作で交流する健常者様の世界でプロフィールにすばるかなんかにエッセイが掲載されましたって誇らしげに書いてあんの集英社日本語も読めないやつの文章載せるのかよそりゃ出版も読書文化も滅びるわけだそしてそんなやつに下働きとして利用されるだけの扱いだったわけだ先月のおれはあれはとにかく最低だった百円ショップにずっといると感覚が麻痺して帰宅してすぐにゴミ箱へ直行するようなものを買ってしまうのに似て明らかに見込みのないものに期待してしまいちょっとメールでやりとりして愕然とさせられたこともあったあのままつづけていたら下手が伝染ったというかすでに影響を受けたからそうしたものに価値を見いだそうとしたそうするのが正しいかのように思わされたおれにとって有害な要求に耳を貸してしまったんだおれとは真逆の普通の人たちが世間でちやほやされるために顎で使われ下働きをさせられたそれを進んで受け入れたかと思うとわれながら正気だったとは思えないそんなことのために大切なサイトを明け渡すところだったもう二度と他人なんか信用するもんか

  AI に意図通りの動作をさせるためにプロンプトを試行錯誤するうちに人間との意思疎通もおなじだと理解したとの増田を読んだおれはコールセンター SV なんでまさにそれを実践したり教えたりすることで給料をもらっている相手のアルゴリズムにあわせて自分を最適化する作業仕事だからやるけれど苦痛でならないプロトコルの差違を吸収しようと相互に努めるのはむしろ当然でそれによって社会が成立しているところが本来はその努力や技量や資質は相互に求められるはずなのに弱い立場の一方ばかりが奴隷たることを強いられるかのごとく過剰に求められその負荷につりあう対価はいっさい与えられずどれだけ心身をすり減らして尽くそうがなぜもっとうまくやらないのかと責め詰られ貶められ悪意を向けられるサービス業の歪な対人関係においてがまずもってそうでお遊戯会における一部の輩もまさしくそれだったわけだけれど国家や企業といった権力が個人に対してそうなっちゃいけないしましてや国家や企業が利益を得るアルゴリズムが個人に対してそうあってはならないサム・アルトマンは米国主導だとか法規制だとかいってるそうだけど要するに利益と権力を独占したいだけじゃないか医療倫理を議論したところでどっかの独裁国家が人間にクマムシの遺伝子を組み込んで無敵の兵士をつくろうとするのを止められないAI 開発の暴走だっておなじようなものところが日本じゃだれもが拍手喝采だ勇ましいあなたの夢はあなたの頭上に爆弾が降ってきてあなたが木っ端微塵になってあなたが死ぬんですよ違法に取得された情報で AI を訓練するのが日本では合法つまりこの国ではどんなに働いても AI に持って行かれるだけ当然これまで積み重ねてきた労働もだ肖像権なんかはとっくに崩壊した。 「おっさんの画像を生成させたら実在のおっさんしかもそこそこ有名人が架空の人物として表示されたという話があるソーシャルメディアにアップロードされた無数の肖像が勝手に利用されるわけだ奇妙な笑い話だと思っていられるのはいまのうちと思いたいところだけれど、 「普通の日本人は生き血を啜られ全身が権力に食い物にされてもまだ残った口で笑いつづける兵隊さんは死んでもラッパを離しませんでしたご立派なことだ

 何かを待って時間を潰しているかのような気持ちでずっと生きてきた待っても何もないのはわかっている境界知能なので学のある知的な頭のいいひとたちに憧れとコンプレックスがある社会的能力に障害があり蔑まれているので他人とあるいは世の中でうまくやれるひとに憧れとコンプレックスがある柳楽先生や mimei 先生に対しては単純にかれらの文章が好きで読みたかったからってのが八割かれらの客層を取り込みたい利用したいという下種な下心が二割だった結果としてかれらが読まれただけで文章にせよ編集にせよデザインにせよおれの仕事へ評価が波及することは一切なかったけれどおれがいいと思って書いてもらった文章おれが無理強いしなければ書かれることのなかった文章が多くのひとに評価され十万 PV やらプロデビューやらメディアでの紹介やらにつながったことには幾ばくかの満足をおぼえたでもおれがちっともいいと思わないそれどころか逆に世間では評価されるけれどおれ個人はすごくいやなもののために下働きをさせられ、 「デザインが変だから直してみたいに顎で使われたのはおもしろくなかったなんかもうどうでもいい読まれて評価されるのは所詮徹頭徹尾他人でしかないおれが見込んで頼んだ才能ならまだしも募集要項さえ一瞥もしない赤の他人が大挙して押し寄せてきて十数年かけて積み重ねてきたものを食い散らかし我が物顔にふるまっておれは顎で使われるこの変なデザインあたくしのすばらしい作品の邪魔だから直しといてへえご主人様たいへん失礼いたしやしたぁあっしは教養のない薄らばかの陽気なアンクルトムでござい⋯⋯いやもしかしたらおれはとんでもない思い違いをしていたのかもしれない人間を人間であるかのように思っていたこれまでにかかわった連中をよく思い返してみれば人間は心のない AI だった異星の金属生物だったあるいは怒った蜂手塚の火の鳥交通事故で頭を打った青年が人間が無機物に見えるようになるという描写があるごうごうと風の通り抜けるような音を発する土塊もしくは茨のような金属の塔人間はあれだあたかも血の通った心があるかにふるまうが実際はあのようなものだあるいは窓に幾度となく体当たりしている蜂気の毒に思って窓をあけてやろうとすると攻撃とみなされて刺される人間はあれだある時期まで読書はそうじゃなかった本に描かれる人間には心があった生きて呼吸していた血が通っていた風の音を発する土塊だったり茨のような金属だったり怒った蜂だったりする現実と違って本の中にだけはそうじゃない人間がいたそれが本まで現実と同じになったおれはそれを読書や出版が変質したと思ったアルゴリズムに調教された心のない AI みたいな連中が本をつくり読むようになったのだとでもそうじゃなかった本をつくり読むひとびとは最初からそうだったむかしもいまも本が現実と同じになっただけだ

 要するにおれは異星の金属生物でも AI でもないからソーシャルメディア的な感性が理解できないんだよなだから現実世界に見切りをつけて自己完結しなければならない自己肯定感の条件に他人をかかわらせてはいけないそれは ASD 的な対人操作欲求につながるおれがもっとも憎むものだそして他人はコントロールできないできるのはそしてしなければならないのは自分だ自分さえよければいい他人を排除し自分だけがいいと思える視界を構築するそのためにサイトをひらけば自分だけがいいと思えるものばかりが表示されるようにする一時の気の迷いとはいえ他人のいうことに耳を貸して世間でうまくやっている連中に隷属したのは大失敗だったしいい教訓になったおれにとってあれがいちばん不快な有害なことであっておれがおれをいいと思うためにはあれと真逆の方向に突き進めばいいおひとりさまサーバとは別に大勢のおれがいるおれだけのソーシャルメディアみたいなものをつくりたい楽犬舎はあれでいいんだ生身のおれが思考を垂れ流すそれとはまた別に複数のおれが同時にてんで勝手にしゃべっているようなタイムラインを見たいAI バージョンのおれをつくれないものか他人はおれを蔑んだりばかにしたり貶めたり嘲笑したり憎んだり攻撃したり無価値なゴミとして無視したりするだけそれはそれで他人の自由だから別にいいんだけどおれは自分をいいと思うためにそういう他人を視界にいれたくない基本的には自分の声のこだまだけを聞いていたいけれどそうでないときもあるだから大勢の別のおれを背景音として聞き流したいそいつらとかかわりたいわけじゃないときには会話や議論をすることもあるかもしれないけれどでも基本的にはそいつらが勝手にしゃべっているだけおれはおれで自分のしゃべりたいことをしゃべるそんなふうにしたいAI をおれのたわごとで訓練して別の複数のおれをつくるのはおれにやれるかどうかはさておきたぶん技術的にはそれほど難しくないと思う学習データにおれより賢いやつの言葉を混入させて訓練すれば少し賢いバージョンのおれが気分のいいときのおれのデータだけを学習させれば陽気なおれができるしかし考えてみればそれより本物の作家のデータを学習させて青脂を採取するのがいいかもしれないうんそっちのほうがいいな人格 OverDrive のタイムラインにおれと開高健と獅子文六とディケンズとチャンドラーと太宰の言葉が流れるわけだときどきクソリプしたり喧嘩したりする

 連載の UI を本の網と完全に同一にした書名を文節で折り返せるようにもしたまったくの自己満足でしかないがこんなサイトをつくったのは世界でおれひとりこれだけのことをやったのに世界でだれひとり気づかないだれからも未来永劫一度たりとも評価されない貶められるだけだ評価されるのは社会的能力ソーシャルメディアなり実社会なりでうまくやる才覚作品とはなんの関係もないというかむしろ逆で作品に価値があると交流ツールとして消費しづらく評価されない小説は好みの問題でしかないかもしれないけれどなんの教育も受けていない人間がこれだけのサイトを自力でまったくの独学で構築したのは評価されていいと思うんだけどなまぁ他人はおれを貶めるだけの存在なのだからおれはおれで自己満足する方法を見つけなければいけないんだよないいと思った他人の本を出すことにはかなり関心が薄れつつあるそんなことをしてもどうでもいい赤の他人に都合のいい下僕くらいに思われるだけだすでに依頼した著者にはこれからもサイトに書いてほしいし巨匠の本はこれからも出しつづけたいでもそれは結局それらの書き手が読まれるだけでおれには一切一ミリも関係ないATP の無償提供と似たようなもので人気著者のファンのためのボランティアでしかないもっと何か楽しいことを考えよう自分のために物事のよい側面に目を向けたい人間にはうんざりだ自分がいいと思うことを寄せ集めたサイトにする音楽とか身につけるものとか三十年前のヴィレッジヴァンガードみたいなサイトにしたい服や靴や真空管アンプやスピーカや照明や椅子や机やそういう生活用品についても書きたい好きなレコードも表示したいけれどレコ評はちょっとちがうな音楽について何も知らない語るほどの何も持ち合わせないただ表示するだけ並べるだけでいい直販ページもつくって T シャツやマグカップを売りたい買うのはもちろんおれだほかのだれも要らないレコード一覧は Amazon の商品コードを入力すればすべての情報を表示できるようにすれば楽なのだけれどそれだと商品点数が増えるにつれて重くてまともに表示できなくなるしアフィリエイト売上の少なさによる上限にすぐに達して API が取得できなくなる画像とタイトルとアーティスト名と短いコメントと商品コードの入力欄を備えたカスタム投稿タイプを用意して機械的にそこに突っ込んでいけばいいか表示するのは一覧ページのみで⋯⋯何か突っ込んだことをやりたいとき日本語で検索するとアフィブロガー向けの中途半端な記事しか見当たらずに苛々させられることが多いウェブの日本語組版でおれとおなじことをやるやつがいないからだということはつまり世界でおれしかやっていない世界でおれしかやっていないことをやるために参考になるのは英語の記事だったりする日本人は権利と責任を権力者に委ねることに異常なまでにこだわり妨げる者を全力で排除し淘汰する自分のことを何ひとつ自分で決めたくないからだだから日本人は日本語をウェブで表示することに無関心でそれでおれはおれだけの努力をせねばならなくなるおれは英語がひとこともわからないがhtml や css や php はどこの言語圏だろうが共通なので見ればだいたい見当はつくおかげでこのサイトをつくれた世界を記述するプログラミング言語があればいいのにそしたらおれはそれで小説を書く


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。