( ※これは架空のお店での架空の会話です )
いらっしゃいませ~!⋯⋯あぁ今日は人出が多いなぁ。 あったかくなると皆さん街に出てきますな。 分かりやすいな。 ⋯⋯あっすみません、 お呼びでした? お待たせしました! お会計ですか? ⋯⋯えっ、 これと同じものを三十個!? ち、 ちょっと在庫を確認しますね。 えーと電話の子機どこだ? あったあった。 ⋯⋯あーもしもし、 今大丈夫ですか? ちょっと在庫確認お願いしたいんですけど、 五万円の特大水晶玉・座布団付きって三十個あります? ⋯⋯はいはい。 お客様ちょっとお待ちくださいね。 今探して数えてますからね。 ⋯⋯はい。 おっ! ある? ありがとうございます! すいませんけど今持ってこられます? 大丈夫? やった! ちょっとこのまま待ってくださいね⋯⋯。 お客様ありましたよ! 少しお待ち頂ければ今持ってこられますが、 どうしましょう? お時間大丈夫です? じゃ、 手配しますね。 ⋯⋯もしもし、 すいませんけど持ってきてくださーい。 お願いしまーす。 はいはい。 はいー。
今持ってきますからね。 よろしければ店内ご覧になって少々お待ちください。 いやぁそれにしても、 こんなもの三十個も買ってどうするんですか。 って売ってる店の人間が言うことではないんですけどね。 だいたい皆さんこういう商品はきゃあきゃあ言いながら写真撮って終わりなんですよ。
あっちょっと失礼しますね。
「エクスキューズミー! シューズオフプリーズ! ソーリーセンキュー!」
⋯⋯失礼しました。 最近は観光客の方も多くてですね、 土足で試着室に入っちゃう方、 結構いるんですよ。 日本には靴を脱がないといけないエリアがあるというのは知ってる方は知ってるみたいなんですけど、 そうでない方もまだまだ多いですね。 脱いでいただいたら今度は素足で店内中をお歩きになっていたりね。 私達は土足ゾーンと素足ゾーンの境界を自然に理解していますけれど、 違う文化圏にはその概念は存在しないのですね。 面白いものです。
⋯⋯いやいや、 慣れてしまえば何も大変なことはないです。 色々なことも全部いい経験になりますし。 困ったお客さん? いや究極には万引きされなきゃ何でもオッケーですよ。 はっはっは。
最近は海外のお客さんが増えたので英語を思い出しているところです。 コロナの間はさっぱりでしたから、 使わないと忘れるものでね。 いや全然しゃべれないですよ! しゃべれないですけど、 必要に迫られるとよく使う単語なんかは自然と覚えます。
アジア系の方だとパッと見では日本人と区別がつかないので、 あちらがニコニコしているので延々日本語でしゃべりまくったら最後に 「謝々」 って言われて膝から崩れ落ちそうになることとかありますよ。 「あ”~?」 とかでも何かしらあちらの言葉で言ってもらえたら、 こちらも英語なり漢字筆談なり Google 翻訳なりに切り替えるんですけどね。 今は翻訳の精度も上がりましたよね。 昔、 Google 翻訳で話しかけてくれた旅行者の台湾の女の子のお客様と意気投合して盛り上がって楽しかったんですけど、 そのテンションが反映されてか彼女のしゃべった言葉の語尾が 「わっしょい」 になってましたからね。
逆に無口な方で 「袋いれますか」 とか 「カードご一括ですか」 とか必要最低限の問いかけにお返事がなくて、 日本語わからないかなと思って英語に切り替えたら 「⋯⋯大丈夫です」 ってネイティブの日本語が返ってきて失笑されたこともあります。 いやはや。
意外に気を使うのが、 日本語お勉強中のお客様です。 勉強中の方だとぎこちない片言のひとからかなり上手いひとまで皆さんそれぞれ習熟度に差があって、 それはみんな最初は誰でもそうなので当たり前ですけれど、 その会話からそのひとにどこまで通じるかを見極めて簡単な日本語に言い換えることが必要になってきます。 そうなると明らかに 「この単語は通じないだろうな⋯⋯」 っていうときもあって。 でもやっぱりご本人は勉強中の日本語で対応してほしいんですよね。 そんな場面で役立つのが 「ルー語」 です。
そうです! お客様お察しの通り、 あのタレントのルー大柴さんのしゃべっているあれですよ。 「ミーはトゥデイもハッスルハッスル!」 みたいな日本語と英語ごちゃ混ぜのあれです! あのノリです! 今の若い子は知らないかもですね。 まぁ今の若者はなんでも検索できるから便利なものですよね。
それでルー語を使うわけです。 簡単ですよ。 この単語は絶対しらないよな⋯⋯というところを英単語に置き換えるだけです。 例えばこの水晶玉、 壊れ物ですよね。 こちらも梱包はしますけれど、 お持ち帰りは気をつけてもらわないといけないので一言添えておきたい。 そんなときは 「これはブレイカブルなので、 気をつけてください」 なんて言います。 他にも 「このスナックはホットですけど OK ?」 とか 「そのシャツはあなたにはタイトに見えます」 とか、 色々使えますよ。 時には 「ディスはブレイカボーなのでビーケアフォーね!」 とか、 もう英語で全部言ったほうが早いんじゃないかみたいなことを言ってます。 でもこれが意外と通じるんですよね。
時には 「いや全部日本語でも通じますけど」 的な物足りない顔をされることもあるので、 それは申し訳ないのですが、 だいたいはすんなり通じます。 で、 あちらも 「私の日本語通じた! 日本語で会話が返ってきた!」 という嬉しそうな表情をされているのを見ると、 いいコミュニケーションが取れたなぁとちょっと気持ちよくなりますね。
MANGA の影響も大きいのか、 日本語を勉強している海外の方は多いみたいです。 私も英語以外にも色々な言語を覚えてみたくて勉強しようとしたときもあったのですが、 だいたい古本屋で会話集を買うだけ買って満足して全然やらないですね。 だから観光で来ているだけなのに少しでも日本語をしゃべるようにしているひとはすごいと思います。 パッケージツアーで行ったら現地の 「ありがとう」 すら覚えないひともざらにいますもの。 でも、 海外旅行に行くなら現地のひととコミュニケーションを取れたほうが楽しいじゃないですか。 自分も旅に出るといつもそうでした。 現地のひとに助けてもらったことも国内でも海外でも何度もありました。 自分が旅したときにお世話になったから、 自分も少しでも旅人のお役に立てればと思っています。 まぁいつもうまくいくとは限りませんから、 あんまりりきまず自然にできる範囲でやっていきたいですね。
⋯⋯おっ、 きたきた! 水晶玉三十個きましたよ! しっかりお包みしますね。 どうやってお持ち帰りになります? タクシー? じゃ、 そこの大通りまで台車でお運びしましょう。 降ろす時が大変ですね。 いやほんとブレイカブルなのでお気をつけて! おっと! ついルー語が出てしまいました! それじゃ乗せますよ。 せーの、 よいしょっと!
ありがとうございました!またのお越しをお待ちしております!
( ※これは架空のお店での架空の会話ですが、 ルー語が意外と通じるのは本当かもしれません⋯⋯ )