Noooooh、 憎み合ってるかぁーい? かれの言葉が Twitter で流れてきて、 まだこの本を紹介していなかったのを思いだした。 ファンのみなさんにはもうしわけないけど、 おれはかれの音楽をそれほどよく知らない。 何枚か、 たまに聴きかえすアルバムがある程度。 でもこの本は大好きだ。 ブコウスキーの日記みたいでもあり、 ある人物の意識から別の人物の意識へ渡り歩く語りは、 サイケデリックな小説みたいでもある。 作中で語られる思いは、 搾取され殺される側のおれたちが権力と戦争を礼賛する現代では理解されないかもしれない。 だからこそ残念なんだ、 いまこの世界にかれがいないことが。 物語の後半で語り手は病に冒され、 死期を悟りながら弱っていく。 自転車を奪った犯人をおれは許さない。 そいつがこの本を読んで悔やめばいいと思う。 そしてこの本の予言が成就されないように、 なんらかの行動を起こせばいい。 念のために断っとくけど、 どっかのしょぼい犯罪者みたいにだれかを暗殺しろってんじゃないよ。 なんとかガールズや尻馬に乗る連中みたいに英雄に祭り上げろってんじゃないんだ。 あれ以来、 何かを変えたり動かしたりするには暴力が有効だってことになっちまったし、 同じ穴の狢を生贄の羊にして切り棄てることで、 連中はまんまと野望を成就させつつあるけれど、 清志郎はそんなことを唄っちゃいなかった。 言葉や音楽には力があるはずで、 その力に動かされて世の中を変えるのは、 言葉や音楽を理解するおれたちにほかならない。 ルー・リードがヴァーツラフ・ハヴェルと話して考えたみたいにね。 腐った奴らが増えているんだ。 自分を見失わないで欲しいんだ⋯⋯。
ASIN: 4404041438
瀕死の双六問屋
by: 忌野清志郎
1998年11月~2001年4月にかけて『TV Bros.』(東京ニュース通信社)で連載され、キヨシローが、「俺が唯一(絵本以外で)というくらい、まじめに(ゴーストライターやインタビューおこしではなく)自分で書いた」(「あとがき」より)と語る、「瀕死の双六問屋」を加筆修正した本書は、「理想郷」である「瀕死の双六問屋」で暮らす男が縦横無尽に音楽への愛、社会への怒りを語り尽くすというサイケな作品。君が代、憲法、自殺問題、さらには反核・反原発曲の収録問題を理由としたレコード発禁事件等々エピソードは多岐に亘り、10年以上の時を経ても、その文章はサイコーにクールでホット!
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いまでも生きていたら……
読んだ人:杜 昌彦
(2022年12月26日)
(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
『瀕死の双六問屋』の次にはこれを読め!