D.I.Y.出版日誌

連載第351回: 出版と民主主義

Avatar photo書いた人: 杜 昌彦
2022.
12.26Mon

出版と民主主義

ユーザの視界をコントロールするつまり見せたいものだけを見せることで利益を得る商売なんだよプラットフォーム企業はアパルトヘイトで成り上がった出自の暴走自動車で財をなした武器商人が自分の所有物で何をしようが勝手じゃないかいやなら自分でサーバを建てればいいだれもが一国一城の主となって自分自身を独裁すりゃいいんだよ楽犬舎は一般開放しないことにした自分の言葉に責任をもつ権利=自由のための仕組みなのに他人の建てたサーバに所属するんじゃ意味がない他人に責任を負いたくないしそのスキルもない他人が視界に入るとつい較べて惨めになる

 ためしてないけどMastodon のアプリは候補から著名な大規模汎用サーバを選ぶようになってるらしいねそれでどこかに所属するわけだ租税回避でケイマン諸島にあるような企業の製品にねなむさんがまずアプリを入れてみるとおっしゃっていてそういうことじゃないんだけどなぁとおれは思ったのだけれどふつうのひとにとってはそういうことなのかも進学したり就職したり結婚して家庭をつくったりするようにそれが当然なのかもしれないだとしたらまちがっているのはおれのほうだ

 ひとつのサーバに大勢のひとが所属するという考えにそもそもなじめない社員とか家族とか政治団体とかなんらかの同一性を訴える目的ならまぁ⋯⋯わかるのえるさんの DTP-Mstdn.jp みたいな同業者の集まりや小嶋智さんの読書好きサーバ bookwor.ms みたいな同好会や趣味のサークルのようなやつとかね楽犬舎を寄稿者や読者向けのサーバにする案もそういう理屈からだったやめたけど独自実装された機能でサーバを選ぶのもわかるそういう意味ではのえるさんの Fedibird は特徴があっていいかもしれない

 でも企業の大規模汎用サーバに隷属する価値観はわからないたぶんそういう生き方なんだねきっとそれが正しいんだ世間では

 集まるといえば人格OverDrive も ActivityPub 対応したので寄稿者の集う Fediverse サーバではある寄稿されるたびに楽犬舎のおれのタイムラインにも流れてくる一夜文庫さんが盛り上げてくれているしイシュマエル氏が連載中だしくみたさんも書いてくれているしなむさんも一作寄稿してくれたからかなりゴージャスな誌面になってはいるいっときでもこんな時期があるのは光栄だ

 しかしその余波でなむさんの作品ではなく世間的な評価に憧れるファンを断る業務が生じつつあるなんで小説にまるで関心がないひとが小説を書きわざわざ本好きのサイトに寄稿しようとするのか理解できない試合を見たこともなければルールも知らないのにテレビ局の花形アナウンサーと結婚したくて野球選手になるようなものか報道になんの関心もないけど野球選手と結婚して社会的ステータスを得たいからメディアに就職するとかなるほど生産的だそんな価値のあるあなた方がなぜわざわざうちを選ぶ?

 小説を書く能力のない素人の短文をフラッシュ・フィクションと称するらしい生産性の時代にはそういうソーシャルメディアに最適化されたものが喜ばれるいまの読者は何かを感じたり考えたりするのを悪と教わって育ってきた権力にとって都合が悪いからだ経験と技術によって書かれたものは読み味わうにも経験と技術を要するし何かを感じたり考えたりすることが求められるだから蔑み素人くさいものを尊ぶ見慣れぬ独自性を憎み画一的なだれともおなじものをなじみ感から称賛する一瞬の消費を正義と見なしじっくり読み味わうものを憎む感情を動かされるのを非効率とみなして不快に感じるそして主人公がなんの葛藤も経ずに成功する物語をもてはやし起伏のある物語をきらうみんなが権力に従ってつながることを重視し疎外されることを畏れ疎外される者を貶める

 いまの日本において映画や小説や音楽は社交の手段でしかないさもなければ大企業が貧しい若者から搾取する手段だ。 「推し」 「推し活なる魔法の言葉を考えたメディアの商売人は賢いよ貧しい若者からいくらでも搾り取れる立ちんぼさせてまでねしかも合法だ数秒の動画フラッシュ・フィクション推し活⋯⋯何も感じさせず何も考えさせずに搾取するそれが現代の日本この状況をつくりだした責任をメディアとりわけ出版社はどう考えているのだろう

 責任? いや功績か金になるからいい生産性そういうことなんだろうな視界をコントロールし見せたいものだけを見せて読者に何も感じず何も考えなくさせるのがメディアの使命ってわけだ戦争の準備は着々と進んでいるって聞いたよあなた方の努力が実りつつあるようでよかったねでも頼むからおれの読みたいものを奪わないでくれお願いだまぁあなた方が脅威を口実にこの国をどう変えたところでいくらでも出し抜くつもりではいるけどねガリ版刷りの手製本やX線写真のレコードで⋯⋯

 つまるところそれが人格OverDrive や楽犬舎ってわけだ


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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