くみた柑のオキラクニッキ

連載第4回: 嫉妬の炎に焼かれた過去を思い出した話

Avatar photo書いた人: くみた柑
2022.
12.08Thu

嫉妬の炎に焼かれた過去を思い出した話

只今アニメで絶賛放映中なチェンソーマンをご存知でしょうか?

私は最近漫画をあまり読まなくなってしまったので恥ずかしながら最近まで藤本タツキ先生のお名前を存じ上げませんでした少し前に Twitter のタイムラインに流れてきた読み切り漫画ルックバックを読んで感想がすごい⋯⋯すごいしか言えなくなる人になったわけですがその時にお名前をバッチリ覚えて今今ですか? ちょっとすごいしか言えません藤本タツキ先生もチェンソーマンもヤバいです。 (語彙喪失

ルックバックは当時とても話題になったので読んだことがある人も多いのではないでしょうか

私は小さい頃から絵を描くことが大好きで一時は漫画家になりたいと新人漫画賞に応募したこともあります今日は、 『ルックバックを読んでずっと昔の記憶絵を描いていた頃のエピソードをいろいろと思い出した時の話を書きたいと思います

小学校34年の頃でしょうか

私は暇さえあればせっせとチラシの裏に絵を描いているような子でした

私を含めクラスに何人か絵を描くことが好きな女の子がいて自分の作品を友だちに披露して、 「○○ちゃんうまいね~なんて言い合ってました

いつの頃からかその絵をかわいい折り紙と交換するという文化が女の子の間で流行り始めました

模様付きの折り紙はとても綺麗で女子心をくすぐります

私が描いた絵も、 「この折り紙と交換して!と嬉しそうにもらってくれる子がいてなんともいえない喜びを味わいます

絵の代わりに手に入ったキラキラな折り紙が嬉しくて私はそれを励みにさらにせっせと絵を描くようになりました

絵を描く人は私の他にクラスで数人

その中には足が早くて頭も良くて発言力もある今でいうカースト上位な子もいましたクラスで一番権力を持っている子です

ある日自分の中の傑作を何枚か持参し皆に見せたところ評判は上々。 「かわいいね~」 「上手だね~なんて言われて浮かれポンチになっていたところでそのカースト上位女子も持参した絵を披露します

すると女の子たちはそっちに行きめちゃめちゃ盛り上がっています私もその絵を見に行きました

なんだたいしたことないじゃん

当時の私は本当にそう思いました

でも今思い返してみるとあの子の方がうまかったようにも思います

当然女の子たちは折り紙を出しながら私にちょうだい争奪戦が始まります

折り紙の枚数によってその絵の価値が決まる

まるで折り紙が札束に見えるような光景オークションか競り市か?

微笑ましいような怖いような今思いだすと笑っちゃうけどなんともいえないシュールな光景です

そこで見向きもされなくなった私は思います

私の方がうまいのに

あの子はクラスのボスだから私より下手なのに折り紙たくさんもらえるんだ

うわあ見ましたか奥さん!

これが嫉妬ってやつですよ!

でもこの頃は自分が描いた絵が一番と本気で思い込んでいたし自分よりもたくさん折り紙がもらえているその子のことが羨ましくて妬ましくて仕方がありませんでした

私はこの頃からチキンなので嫉妬の炎に焼かれながらも何も言えないしできなかったのでチキンでよかったね⋯⋯と心から思います

それでも同級生は絵を褒めてくれるからいいですが大人はシビアです

母は家にいましたが仕事をしていたので暇を持て余した私はよく隣の家にあそびに行ってましたそこは大人しかいない家だったんですけど居心地がよくてしょっちゅう入り浸ってました

そこでも裏が白い広告をもらってやっぱり絵を描いていました

いっとき馬ばっかり描いている時があって

馬って走っている時の姿がめっちゃかっこよくて線が美しいなぁって子供心に思ってました

その時も何枚も馬の絵を描いていたのですがそれを見たおじちゃんが話しかけてきました

それ何描いてるんだ?

馬だよ!

馬ぁ? ははっへったくそだなぁ全然馬に見えないよ

ガガーン!!!

めっちゃ落ち込みました

今でも鮮明に覚えているくらいだから相当傷ついたセリフでした

でもやっぱり今思い返すと複雑骨折している馬⋯⋯っていうかむしろ UMA ?

なんだかよくわからない絵でしたおじちゃん何も間違っていません

いや馬の足って難しいよ? よく描こうと思ったね?

たしか羽根も生やしていた気がしますペガサス描こうと思ってたのかな

母の実家に帰省した時

親戚のおじちゃんに漫画家になりたい!と言ったらははっ!漫画家になるのはすごく大変なんだぞなれるわけないだろうと笑われ、 「絶対なるもん!とムキになって返すと、 「漫画家になりたいと思う人はたくさんいるけれど本当になれるのはほんの一握りだみたいな正論をぶつけられてめっちゃ悔しくて泣きました

今でも覚えているくらいだから相当傷ついたセリフでした

そんなこんなでもっと絵がうまくなりたいと思った私はとにかく毎日絵を描きまくります

でも新人賞に何度か応募しましたが最高でもう一息賞止まりだった私は結局漫画家にはなれませんでしたおじちゃんが言ったとおりでした

漫画を完成させたときは間違いなくその時の私の最高傑作であり新人賞に送るときは入選・準入選はまあ無理だとしても佳作くらいはいっちゃうんじゃない?なんて思ったりもしました

いやはっきり言って今思い返すと絵は下手だしストーリーも浅いしよく自信満々で送ってたな⋯⋯と思います

あの若い頃の謎の自信ってなんなんでしょう

自分の作品が大作に見えてしまう謎フィルター

なんなら、 「この漫画家さんにはかなわないけどこの漫画家さんには勝てる!みたいな自意識過剰も甚だしい上から目線

そんな謎フィルター越しの自信も年齢が上がるとともに薄れていきはっきりと見えてきたのはプロと自分の圧倒的な力の差その頃にはしっかりと自己肯定感は低くなっており自分の凡人さ加減を思い知っていました

漫画家を諦めたあとも幸い絵を描くことは好きだったので趣味として楽しめています

こんなに成功体験がないのに絵を描くことを嫌いにならなかったのは唯一私を褒めてくれる存在母のおかげかなと思っています

小さい頃国語の教科書に載っている物語のシーンを絵に描くみたいな課題だったと思うんですけどたぬきがお寺かなんかで踊っている絵を母がえらく気に入ってくれて

客間の壁に額縁に入れて飾ってくれたんですよ

時々来る母の知り合いに、 「この絵うまいでしょたぬきのポーズが絶妙で~みたいに私が一緒にいるとき人前で褒めまくるんですよ

もう恥ずかしいから飾るのやめてよ~なんて言いながらめっちゃ嬉しかったんですよねたしかに自分でもうまく描けたなって思っていた絵でしたし

でもこれただ親ばかなだけなんですよね

いやめっちゃ恥ずかしい!

恥ずかしいけど今でも覚えているくらいですからめっちゃ嬉しかったんですよ親ばか最高!

下手なりに絵をずっと楽しく描いてこれたのは母が褒め続けてくれたからだと思うんです

あと広告の裏紙をめっちゃ集めてくれてたこと。 (←?

ちょっとルックバックの話に戻ると私は漫画家になれなかった凡人なので恐らく感情移入すべきはちらっとだけでてきた嫉妬で狂ってしまった側の人間です

折り紙の枚数で自分が描いた絵を評価されていたときのあの嫉妬の炎がずっとメラメラしていたら

大人になっても自分の作品が高品質に見える謎のフィルターがかかったままだったら

ルックバックは天才たちが主役のお話でしたが自分よりも何倍も何十倍も努力してその地位を得ている天才たちに嫉妬心からやばいことをする人間になっていた可能性もあるわけで

おそらく大半の人は自分と犯罪者の間には分厚い壁があると思っているかもしれませんが意外とその壁は薄くちょっとしたきっかけであちら側へ行くことも十分にありますそこに気づけているかどうかって実は大切なことなんじゃないかなぁと思います

時に嫉妬は人や自分を傷つけてしまうけれど凄い才能に出会ったら純粋に凄いと感動できてこんなふうになりたい!と自分のモチベをあげていけるならそれは自分にとってプラスになる嫉妬

努力してチャレンジしても結果がなかなかついてこないと辛いけど好きなことを楽しめなくなってしまったらもっと辛いから嫉妬とはうまくつきあっていきたいなって

私の母みたいに無条件で褒めてくれる存在やルックバックの京本のように自分が気づいていなかった才能に気づかせてくれる人の存在って人生においてとても重要だと感じます

私は運良くそんな人と出会えました

⋯⋯ということで私は人の良いところを見つけたらその人にガンガン伝えていくことをこれからも続けていきたいと思います

もしかしたらこんな凡人の私の言葉でも何かのきっかけになれるかもしれないからね!


2013年に第一作目となる『記憶の森の魔女』をKindleにて出版。他に、タイムリープを題材としたロングセラー作品『今度君に逢えたら』、初のコメディとなる『行き先はきくな』など。電子書籍を中心に活動中。
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