D.I.Y.出版日誌

連載第342回: 貴重な三連休が終わる

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2022.
10.20Thu

貴重な三連休が終わる

時間を遡って天井の Yes を No に書き換えて The Beatles の解散を防いで世界を救う小説を書くつもりだったメンタルが悪すぎて資料を読めないんで諦めた資料を返して手製本にかんする解説書を四冊借りてきた案の定どれもハイソで器用で上品なインテリ金持向けだそうじゃなくておれみたいな発達障害の貧乏人でもつくれるような手間と金をかけずに楽に製本する方法を知りたいんだよゆとりのある社会階層のお洒落な趣味としてではなくてさサミズダートってのは追い詰められた貧民が必要に迫られてやることなのにそれに応えられる情報がない調べれば調べるほど教養と金と時間と器用さをすべて兼ね備えた特権階級のおしゃれな趣味って印象が本文用紙 30 枚入りでコピー用紙 300 枚と大差ない値段か⋯⋯不器用なおれには敷居が高すぎるし一冊にこんなに手間をかけていられないこれじゃ POD のほうがむしろ安上がりだわ安く上げるために手で製本することを考えていたけれどどうやら逆であるらしい大量生産するから安くできるのであって手で一冊ずつ製本したら高くつく読むための本ではなくて贅沢な工芸品になってしまうやりたいのはそんなことじゃない教養やゆとりのあるひとたちのためのお洒落な工芸品としては高くついても正しいと思うでもうちの本はそれじゃだめ水や食べものとおなじ生活必需品だから粗雑だっていいんだよ貧しい若者が気軽に買えるくらい安くなければだれのための出版かって話おれの頭にはいつだって追い詰められた若き日の自分がいる何も持たず味方もだれひとりいないかれのためにおれは書いて出版するそういう意味でおれのやっているのは旧共産圏のサミズダートや D.I.Y. カセットカルチャーに似ているおれは出版で Martin Newell とおなじ道を追いかけているLou Reed が死んだときはかれが死ぬということの意味がわからなくて喪失感にとらわれたり哀しいと自覚したりしたのは数年後だったNewell が死んだらおれは立ち直れないかもしれないなんというか子どもの頃から自分を溺愛してくれた叔父さんみたいな動画や写真で見慣れたかれの部屋は子どもの頃からいりびたっていた部屋みたいだあまりにも身近で自分の一部のようにかんじているたぶんおれにもかれのような asd 的傾向があるんだと思うまぁおれがかれのように再発見されることはないけれど⋯⋯実際おれは小説でもウェブサイト制作でもほかにだれもやっていないことをやってきたし無名の個人が片手間でやっているにしては才能の発掘においても打率は高いと思うのだけれどメディア取材が二回プロデビューがふたり)、 なぜだれも理解しないのかわからない次に進むべき道は手製本だ手間のかかった美しい工芸品としてではなくて単に価格を下げたいがためと自分の机で出版のすべてを完結させたいがための雑な本POD はピタゴラ装置みたいにまわりくどいあまりにも融通がきかないどうせおれしか買わないのに金と手間がかかりすぎる業者を通じて AmazonPOD を使うにしても KDP Print を使うにしてもおれはその前身の CreateSpace しか試していない)、 たかが自己満足するためだけにやるにしてはあまりにも迂遠に感じられる反面、 「Amazon で売るという点だけは利点があるそれはそれとして利用しつつ本筋はおれが印刷して手で綴じておれのサイトで売るということになりそうだGoogle アナリティクスが使いづらくなり素人には何が何やらわからなくなってだれにどれだけ読まれているのかわからなくなったのでもうどうでもよくなったのもある金をかけてこだわって美しさを追求する上製本ではなくとにかく安くつくりたい極端な話雑な紙束であっても本として読むことができればそれでいいでもそういう情報はぐぐったかぎりじゃ見つからないPOD とおなじ価格じゃ意味がないんだよと罵りながらサイトを改修したFireFox でも小説を読めるようにしたおなじことをやろうとしているひとのために書いておくけどstr_replace で連続した約物を span で囲って halt で 50% 幅を適用して半角空白を足しているんだよ縦書きでは vhal だ半角空白は連続したり行頭行末にきたりすると吸収されるからアキ量がちょうどよくなるところが FireFox は vhal を扱えないらしくて縦書きではぐしゃぐしゃに表示されるもともと FireFox にはドロップキャップのマージンに不具合があって使いものにならないので無視していたでもユーザが三分の一もいるのではちょっと可哀想かなという気もするそれで縦書小説にかんしては半角空白でのアキ量調整をやめて連続した約物のアキを vchw で調整する約味フォントを使って FireFox でもまぁ読めるように改修したウェブでドロップキャップをやると行頭に鉤括弧がきたとき次の文字まで拾ってしまうそれが半角空白と鉤括弧なら span で囲われた鉤括弧だけがドロップキャップになるんで都合がよかったけど約味を使うやりかたでは行頭行末で鉤括弧が調整されることはないんで不具合がでる迷ったけど FireFox ユーザの便宜を優先することにしたなんて博愛精神に満ちたおれドロップキャップは鉤括弧を span で囲うことで解決したFireFox のマージン不具合は放置)。 str_replace も併用してうまい具合にやっているほんとうは preg_replace の正規表現で行頭の鉤括弧だけ置換したかったんだけどやり方がわからなかったFireFox の :first-child:first-letter でマージンがおかしくなるのは有名らしいんだけど縦書きの不具合はおれしか気づいてないらしくて日本人はほんとうに従順だな)、 ぐぐっても何も情報が見つからないブラウザ自体の不具合なのでどうにもならない諦めた


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。