夜の雑記帖

連載第4回: 共犯者たち

Avatar photo書いた人: 一夜文庫
2022.
10.08Sat

共犯者たち

いつも使っている通勤路に鬼灯が生えている場所がある

昔からある食品卸会社の古いコンクリート造りの社屋の隅にそれは生えている植えてあるのではない路肩のコンクリートの細い隙間を突き破って勝手に生えてきている冬になると姿を消し春が訪れるとまた芽吹く白い小さな花をつけ実を結び秋には朱に色づく

建物の持ち主は絶対に存在に気づいているはずだその上で放置している放置しているというか手もかけないが抜きもせずそのまま生やして見守っているというところかだから冬になり葉が落ちるといつの間にか姿を消している明らかに枯れるのを見届けてから刈り取っているのだ

鬼灯は毎年毎年律儀に生えてくるいつしか私はその姿を見るのを楽しみにするようになったきっとそれは建物の主も同じなのだろうそしてもしかしたらこの街に住む別の誰かにも私のように鬼灯を楽しみにしているひとがいるのかもしれないもしかしたらそういうひとは何人かいるのかもしれない

コンクリートから生えた鬼灯を見て抜いてしまおうと思う人がいても不思議ではないはずだけれど鬼灯はいつもそこにある鬼灯を見つけた人達はみんな鬼灯を残すことを選んでいる会ったこともないその人達に私は不思議な連帯感を感じる

そう私達は鬼灯を守る共犯者なのだ

季節がめぐり今年も色づいた街の片隅に朱く灯る私達の鬼灯の実


寝る前の読書を愛する本好き。趣味で一箱古本市に出たり、ツイッターで本をオススメしたりしている。人格OverDriveに憧れてダメ元でお願いしたら書かせて頂けることになってしまい震えている。永遠の前座。
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