D.I.Y.出版日誌

連載第342回: 希死念慮を追いはらう方法

Avatar photo書いた人: 杜 昌彦
2022.
09.24Sat

希死念慮を追いはらう方法

これまでに出版した本を机から片づけたAmazon やソーシャルメディアと相性がよくないし商業出版とは今後も縁がないし媚びたところで受け入れられない場のために金と神経をすり減らすのには限度があるいずれは WooCommerce で手製本を売るようになるのだろうレーザプリンタでコピー用紙に印刷して手で折って糊で製本してこれまでただの夢想でしかなかったことはたいがい実現してきたなるべく自分でコントロールできる範囲でやりたいおれひとりが手に取ってぱらぱらやって押入にしまうだけのためにAmazonPOD はおれには大仰すぎるあれはくだらないルーブ・ゴールドバーグ・マシンだよでも自力で通販やるにはセキュリティに不安があるんだよな⋯⋯個人情報あんまり預かりたくないし⋯⋯おれは鼻つまみで爪弾きだどこにも受け入れられないだから何をどれだけ努力してもだめセルフパブリッシングはいまやゲームの用語になってしまったけれど十年前は本について使われる言葉で当時似たようなことをやっていた同期はみんな職業作家になったり海外で翻訳されたりコンテストで有名になったりソーシャルメディアで人気だったりしているおれだけが指をさされて嗤われる無名人のままだ成功したひとたちの活動を眺めていてよく思うのだけれど要は交流なんだよな名刺配り挨拶まわりで顔を売ること商業出版でもおなじ世渡りができなければ社会性と人間性がいちばん大事なんだよおれはその両方とも致命的にだめでだから職業作家になれなかったしいまも世間でうまくやれない積極的に交流しましょうだって? おれみたいな社会性と人間性に欠陥のある人間がむりに他人に話しかけてみろよ⋯⋯大事故だよ通報されるこないだも若者におじさん構文で話しかけたアカウントが吊し上げられていたけれど社会的能力に欠陥があるってそういうことなんだよな本質的に暴力でしかないおれとは真逆の人間なら⋯⋯たとえばなむさんはソーシャルメディアと相性がいい話題にされやすいネタ的な方面にもお洒落な ZINE 的な方面にも適合しているくみたさんはアニメを通じて日本文化に関心をもった海外のひとたちに人気があるほかにも Amazon の客層に合っているとか地域社会とうまくやっているとかもともと本業やソーシャルメディア社会活動などで支持者の多いひとたちあるいは同人誌の世界でつながりがあるひとたちそういう何かちょっとしたものでいいんだけどそういうものがあれば努力しだいで読まれるどこにも適応できないおれは自分に合った客層を見出すことができないかといって潜在的な顧客がこの地上のどこにもいないとはどうしても思えないんだよ似たような思いをして生きてきたひとはいるはずだからおれはそのひとたちにあなただけじゃないと語りかけるつもりで書いている答えはまだ見つからないけどでもあなたのいるその場所はけっして不可視じゃないなかったことにはならないよおれの本おれの言葉があるかぎり⋯⋯そういうあかしはふつうに売られている本では得られないひとそれぞれぜんぜんちがうのが当然でそんな世界中の他人と折り合いをつけていくためにも想像力ってのは大切でそれもまた小説の役割だと思うしだからこそおれは発狂も自殺もしなければ犯罪者にもならずに済んできたのだけれど効率優先の現代社会じゃそういう価値は否定される若いときに何人かの編集者と話して実感した都会のりっぱな企業に勤めているひとたちには残念ながらそういうことはわからない伝わらない意思疎通が成立しない人間知らない世界のことはわからないうまくやっているひとたちはわからないことをなかったことにするわかったところで会議を通らないしね労力とリスクの割に金にならないから最初からかかわらないうまく適応した汎用性のあるやつが個別の事情をかかえたやつを排除するそうして純粋な均一性が高まり物事は円滑に運営されるそれが生産性とか需要ニーズってもんでしかたのないことなんだあなたは排除する側される側? いつまでも安心してはいられないよだれだってね


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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