D.I.Y.出版日誌

連載第341回: 明日を探す

Avatar photo書いた人: 杜 昌彦
2022.
09.21Wed

明日を探す

人格OverDrive 創立は 2010 年右クリックの仕方を教えてくれるレベルの職業訓練でサイトをつくったその頃から epub で本を売りはじめたのだけれどAmazon で本を売るようになったのは 2012 年 10 月でそうかあれから十年いろいろやってきたよな⋯⋯海外では事例があっても日本ではまだだれもやっていないことを率先してやってきてでも一度もなんにも報われなかったウェブサイトだけはゴージャスになったな十年前は自力で PHP を書くなんて想像もしなかった思うんだけど出版社が本にしたり売れたりソーシャルメディアで話題になったり発言力のあるひとに絶賛されたりするのってまともな家庭で愛されて育ったひとだよなもしくはわかりやすい困難に打ち克つ機会に恵まれたひといずれにせよあらかじめ他人や世間に愛されてなきゃものごとの感じ方には最低限共通の経験にもとづく土台分かち合える部分が必要だそんなのがあるからこそいいねやリツイートをされたり話題になったりするわけだつまりおれの人生そのものに汎用性がなさすぎて共感の余地がないんでそんな人間の書くものは世間のひとたちにゃバズるバズらぬ以前に理解のしようがないおれの本が出版社どころかだれからも相手にされないのは複数の方から言及されたように人間の生の感情が書かれているからいやそれが小説ってもんだろうがよと思うのだけれど残念ながらそうであった時代は四半世紀前に終わった少なくとも日本では当たり障りのないすでにどこにでもあるようななじみ感のあるものプロの技術を感じさせない読者との敷居がないものそういうものが話題にされやすく消費されやすいそういう企画でなければ会議を通らないそういうのをゼロリスク低賃金で実現できる手段が AI ですよ企業にとってはいい時代ですねそんなもんだれが読むんだよという話でいずれ人間の読者には飽きられる計算され尽くした巧みさだけがあって生の感情がそこにはないからなので将来は読者も AI になる人間には理解できなくても AI なら上手に読むからねターミネーターの未来戦争みたいな廃墟で人間が人間のためにサミズダートする世界はもうすぐそこおれはそれを先取りしてるだけまぁ生の感情だって条件さえ揃えればいくらでも再現できるんだけどプラットフォーマーはそういうのお嫌いでしょこの四半世紀排除されてきたのはそういうものだからそんなことを考えながらずっとウェイバックマシンで過去の人格OverDrive をながめていた記録に残るのは 2013 年からで三年間のおれは失われている2016 年から WordPress に移行し翌年にはドメインと筆名も変え⋯⋯なんだおれがんばってきたんじゃん過去のおれが目指していた場所にちゃんとおるわもっと先が見えていて未来のおれはそこにいるたぶんまたしてもひとりで⋯⋯この十数年ずっと主張してきたことなんで当時からおれを知ってるひとには耳タコだろうけどおれは本を以下のように定義している: 1. 本は言葉ないしそれに準ずるものをパッケージした綴/閉じたものである2. 本はひらかれた文脈で網の目のようにつながっている⋯⋯人格OverDrive はこれらの定義を可視化する試みでそれをコツコツと実現してきたその間ますますはっきりしてきたのはコンテンツビジネスはいまじゃ権利商売で儲ける主体は表現者じゃなくて法律を使って商売する企業様出版は音楽のあとをちょっとずつ追いかけてるんだけどかつて音楽は無料配布ないしサブスク表現者にとっては無料配布と大差ないで販促して公演で稼ぐというビジネスモデルになりつつあるといわれていたこれがコロナでだめになってオンラインの物販が主体になったそれも実際に売っているのはモノじゃなくアーティストの支援であってTシャツなどのグッズやらヴァイナルやらにお布施する文化ねコロナでヴァイナルが売れたのはこれが理由おれは出版もそうなるとずっと主張していてその考えのもとに 2010 年から人格OverDrive をやってきたで今後の展開epub の配布やウェブサイトでの無料公開で知ってもらってTシャツやマグカップや iPhone ケースやプリントオンデマンド本の物販で稼ぐ⋯⋯といいたいところだけどそれらの物販は出版の場合まったく儲からないまあぁあああああっっっっったくなんの儲けにもならないプラットフォーム企業だけが上前をがっぽりもっていくでいま考えているのはプリントオンデマンドじゃなくておれが刷っておれが製本する手製本おれが刷るTシャツとかそういうやつ世界でひとつだけのハンドメイドもうほんとにモノとしての価値じゃなく支援って概念が純粋にモノ化したようなそういうとこに金を出してもらう集客して読者と対話しながら書いて連載して版をつくって印刷して製本して売って届けるそれぜんぶをおれ対話と書くとこは寄稿者もでやる読者のやることは対話と読んで拡散するとこだけウェブサイトを会員制にして epub を無料配布し希望者に手製本を売ることを考えているどうせだれも読まないし自分と国会図書館に一冊ずつあればいいからねいや手製本も進呈でいいなどうせだれも登録しないから自動両面印刷のレーザープリンタ一万円で買えるのか⋯⋯やれそうだなやってもいいな問題はおれが病的に不器用なことと表紙をどうするかPOD より安くあげるのが目的なのにぐぐって得られる情報は上製本ばかり読めりゃいいPOD の劣化版でいいんだよしょせんおれの自己満足なのにだれが気にする? あとは人格OverDrive を会員制にしてコミュニティ機能をもたせると同時に寄稿者とのやりとりもサイト内でやれるようにしたいと考えているのだけれどなぜか BuddyPress が機能しないどうもおれが魔改造したテーマが干渉しているらしいのだけれど何がいけないのかわからないおれは病的に無能で人間性も最低だから客観的にいっていないほうが世の中のためだってのはわかっているでもけりをつけようにもしくじるに決まっているから他人に渋い顔されながらだらだらとみっともなく生きつづけるつもりでかといって他人に渋い顔されてまで生きるのは楽じゃないおひとり様 BuddyPress に自分を隔離して考えたことをぜんぶ実現してあたかもクレバーでスマートに人生を操っているかのような錯覚を得たいそうでなきゃ耐えられないだからきっとそうするんだ


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
ぼっち広告