杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第331回: 連休の大半を掃除に費やした

書いた人: 杜 昌彦
2021.
09.26Sun

連休の大半を掃除に費やした

おれのような人間がひとと関わればその時点ですでに暴力でましてひとさまの作品のために口出ししたり原稿を預かってウェブや紙の上におれがいいと思ったように表示するのは暴力以外の何ものでもないおれが正しいと思うもののために他人を巻き込んで犠牲を払わせているそんなことをツイートしていたらヴァニティプレスの宣伝業者にフォローされたいやちがうから⋯⋯出版社に相手にされない作家志望者みたいに見られたんだろうなどっちかというとおれひとさまの原稿を編集して出版する側です非営利だけどその業者のサイトには編集者に気に入られるにはみたいな記事がならんでいた編集というより営業ではと思ったがいずれにしても何様だよという話だそんなことばかりやってるから出版がつまらなくなって読みたい本がなくなるんだよ自分の書くものに執着はあるけれど愛情はない評価されなければならなかったのにうまくやれなかった悔しさしかない読んだり書いたりする上で言葉のおもしろさ語りのおもしろさには執着する書いてしまえば虚しいゴミでしかないだれにも読まれないものは出版したとはいえない自分に価値がないのは知っているから価値ある他人の本を出版したい価値がある言葉を読みたいそこにしかない言葉をおもしろい物語であってほしいけれどもおもしろいだけなら読む価値はない読むのも書くのも出版も言葉へのフェティシズムめいた執着でやっているような気がする小説においてそれが何より大切だとまでは思わないまず第一に物語がおもしろくなければそのためには人間がちゃんと描かれているのが条件でそうでなければおもしろく感じられないしかしそれらを充分に満たしていても言葉がつまらなければ味気ないそしてそれ以上に共感したり勇気づけられたり啓発されたりするような著者独自の視点もほしいすでにあるものほかのだれでも交換がきくようなものなんてわざわざ手間と金と時間をかけて読みたくない自分とは異なるものの見方があるのだなと気づかされるから別に嫌悪を催させるような視点でもいいのだけれどでも社会的な暴力に加担するようなものはどうかなと思う暴力に抗う表現が多様にゆるされていてその上で加担する表現もあるなら均衡がとれているけれどもこの国では抗う側は出版されにくいだったらわざわざ加担する小説なんて読みたくないいちばん苦手なのは世の中で多くのひとが無自覚に持っていておかしいとは気づいていないことをさもいいことであるかのように書いている小説それはおかしいんじゃないのというのを読みたいのに日本の企業はすでに実績のあるものしか出版できないこれはむかし編集者からよくいわれた知り合った全員がいっていたからそういうものなのだと思うそのようにして出版と読書の幅を狭めて読者を育てるのを怠れば若い世代にとって読書はつまらないものになってしまうだから epub やプリントオンデマンドはおれにとって福音だったのだけれどでも結局はそれらもプラットフォーマーに気に入られなければ読者へ届けられずプラットフォーマーのやることはアルゴリズムによる利益の最大効率化でしかないから結局はおれがもっとも苦手とするものしかゆるされない苦手とする価値観に抗う表現は利益にならないので表示機会が抑制され読者にとって事実上不可視になるおれの居場所はどこにもないおれの求める読書も


(1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
ぼっち広告