イシュマエル・ノヴォーク

第13話: カリフォルニア州ロサンゼルス

書いた人: イシュマエル・ノヴォーク, 投稿日時: 2021.09.24

ウォルナット材の円形テーブルを囲む者たちその場を取り仕切るのは白髪の長い髪をカール・ラガーフェルドのようにポニーテールに結んだ男でダークスーツと丸みを帯びた襟が遊び心を感じさせたこの男はロサンゼルスの弁護士であり名前はジェフリー・ウァースという彼は元アマチュア・ボクサーであり今でも週に二回はスパーリングを続けているまた彼はロサンゼルスのヒスパニック系アメリカ人に向けた無料法律相談を受け付けている社会奉仕と健康に信念を置くウァースがなぜウォルナット材の円形テーブルの前で彼の正義や信念を理解しそうにない理解したとしても冷笑的な態度をとるだろう人物たちの前で話をするのか? 理由は簡単ウァースの専門は著作権に係わることだから
 ウァースは退屈そうな顔でコーヒーに角砂糖を二つ放り込む男に向かって笑顔を見せた三か月に一度はホワイトニングを欠かせないウァースの笑顔は眩い彼は円形テーブルを囲むように座る者たちを見るロイ・ハイドパークジノ・フィルジョン・フーパー一九七二年に急死したビビアン・クロウの両親ピートとジェーン彼らの甥あるいはその代理人ダリル・ロブソンアイザイア・ドノヴァンジョン・マーロウギャビン・ピンタースタン・カーツダニエル・マクマーティンヴィクター・ゲイブリエル
 ウァースは彼らを胡散臭い人々だと感じているし法律を盾に富の安定を画策する愚か者だと考えているものの彼らは依頼人であるウァースは彼の信念である社会奉仕を続けるために必要最低限の悪を見過ごし妥協しているウァースが口を開く
皆さん調子はいかがです?
 ウァースは空いた椅子を見るなりミラーさんは今日も欠席のようですね残念です
 フーパーがロビーは病気だから仕方ないと言ったフーパーの吐息から酒の臭いを嗅ぎ取ったロイが顔を顰めた手をヒラつかせたフィルが
どちらにせよ彼は来ないよぼくのことを嫌っているし
 フィルの一言で剣呑な雰囲気が漂った円卓を囲む一一人はフィルがビジネスで成功しつつも熱狂を失っていないことを知っているし何人かはフィルがパーセプションを再結成させようと画策していることも掴んでいる円卓を囲む一二人は全員腹に一物あり腹蔵なく話すことなどあり得ないことなのだウァースは円卓を見渡し
ミラーさんをイスカリオテのユダにするのはよしましょう彼は私たちと意見が合わなかっただけで素晴らしい音楽を残してくれたのですから
 ピンターが身を乗り出し残してくれた? それはつまり彼は死んだ?
死んでない先月会った元気そうには見えなかったがとフーパーカーツが
死にかけているんだろう? そうするとどうなる?
 示し合わせたように一二人は顎に手をやった円を描くように設置されたオーギュスト・ロダン作考える人を想起したウァースは心の中でそれよりは地獄の門とつぶやくロイが
あの男が死んだとしてワシらに変更はあるか?と尋ね首を横に振ったウァースが
変更はありません彼は権利者ではありませんから
 テーブルを打楽器のように叩いたピンターが
メンバーだったのに権利者じゃないなんてな申し訳程度に椅子だけ用意してやっているのはひょっとして罪滅ぼしかい?
 ロイは目をつり上げどこの馬の骨とも知れない若造が気安く喋るな大体こんなことは馬鹿げているんだそう馬鹿げて……
 柔和な笑みを浮かべたウァースがピンターさんは権利者です裁判所も認めています
そんなことはわかっとる
 ウァースは常温で持ち歩いているペットボトル入りのボルヴィックを一口飲んだウァースが言う
今日皆さんにここに集まっていただいた理由をお話しさせてくださいとても重要なことです皆さんはマーガレット・ホットフィールドという女性をご存知ですか?
 ロイとフィルがうなずきそれ以外の者たちは首を横に振ったウァースの
彼女は自分がダグラス・ハイドパークの娘であると主張していますという言葉で円卓は喧喧囂囂未来派作曲家ルイジ・ルッソロが発明した調律された騒音機械イントナルモーリが演奏したインモラルな夕べロイは顔を真っ赤にし肩を震わせながらあの小娘にやられたと言ったフィルが手を叩き大笑いしたフーパーが驚いた顔でどうした?と尋ねるとフィルは涙を拭い言う
いや……おかしくってね馬鹿馬鹿しくてさなんでぼくはこんな所に座って話を聞いているんだろう? 楽曲の権利がぼくにあることは確かだけど本当に関係があるのはぼくとジョンまぁロイも関係あるだろうせいぜいそれぐらいだっていうのにもういないビビアンの家族たちが当たり前の顔で座っているこんな馬鹿げたことってある? それで極め付きはマーガレット今日のことで踏ん切りがついたよ本当はもっと前にすべきだったのになぁなぁにしていた発表するよ近くジョンと新しいパーセプションを結成するつもりだ新しいメンバーのオーディションもしようこの中で楽器ができる人は名乗り出てもいいよ
勝手な真似をするなとロイ
勝手にさせてもらうよぼくの勝手なんだからそれから提案があるいい加減リマスター盤をリリースすべきだアナログ時代の焼き回しばかりでうんざりだよぼくたちは今を生きているダグはもういないけれどそれでも若い世代にもっと聴かれるべきだみんなにも権利料が入って来るし悪い話じゃないでしょ?
 狸の皮算用算盤をはじき終えたピートとジェーンロブソンドノヴァンマーロウピンターカーツマクマーティンゲイブリエルがうなずいたロイが
ワシの家をこれ以上滅茶苦茶にはさせん
ダグのお蔭でビバリーヒルズに家を買ったのに?とフィル
 ロイが固めた拳で円卓を叩くとウァースが言う
皆さん落ち着いてここは喧嘩をする場所ではないのですからホットフィールドさんの代理人である弁護士のエリック・コッパードからの訴状があります読み上げましょう
 ウァースによって訴状が読み上げられていきそれと同時に円卓を囲う不平不満が波打つフィルはデビューしたばかりの頃にバーで浴びた観客たちからのブーイングを思い出しフーパーの腹を肘で突いた
昔に戻ったような気がしない?
デビューしたての頃の話か?
うん
思い出に浸るのはまぁいいが……最悪のタイミングだ
気にしていたら何も始まらない
これで次からは二人揃って針のむしろだ
 手をヒラつかせたフィルは胸を張りぼくたちらしいじゃないかと言ったウァースは判事のようにあるいはシャネルフェンディクロエをデザインした皇帝のように突き立てた人差し指を左右に振りお静かにとても重要なことですちゃんとお聞きになりましたか?
 一二人は示し合わせたように完璧なユニゾンで首を横に振ったウァースは心の中で深いため息をつきこれも社会奉仕だと頭を切り替える精一杯の笑顔を浮かべたウァースが
ではもう一度


『ロクス・ソルス』という同人小説サークルで活動しています。それから、ジャズピアノの演奏活動をしています。気が向くと絵を描いたりします。
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