イシュマエル・ノヴォーク

第1話: 一九七一年 パリ、ホテル・アンリ四世

書いた人: イシュマエル・ノヴォーク, 投稿日時: 2021.08.06

ヒトデは星にちなんで名付けられましたフランスおよびドイツでは海の星と呼ばれていますこの生物は一見すると柔らかいように見えますがコブ状針状の突起が並び丈夫なつくりになっています消化管は下面の中央の口から伸び腕が集まる中央の盤と呼ばれる箇所の大部分を占める胃に通じていますそこから上面中央に開く肛門へと直腸が続いています胃は大きく二つに分けられ最初の噴門部は大きく筋肉質ですこれは食物を採る際には体外に広げられます後方の幽門部からはそれぞれの腕に管が伸びその先で左右に分かれてそれぞれの腕の内部にある肝盲嚢につながっています水管系は皮膚と内骨格の間を走っており他孔板から石管が下側に伸びて口周辺を取り巻く環状水管に続くそこから歩帯溝中央を走る放射水管へとつながります神経系は水管に沿って環状神経と放射神経が走っています生殖巣は肝盲嚢の下に腕に一対ずつあり腕の間の位置の盤上周囲に開きますまた体腔内にはシダムシ類が寄生していますヒトデの発生の多くは体外受精でふ化した幼生はプランクトンとして生活しますこの頃はビピンナリア幼生ブラキオラリア幼生と呼ばれます

 ロックバンド、 〈パーセプションのヴォーカリスト詩人のダグラス・ハイドパークはソファに深々と腰掛け全裸のまま二の腕をチューブで縛り上げているテーブルには空になった注射器が散乱しており注射針が鈍い光を発している遮光カーテンの隙間から三本の光が差し込みピラミッドのような形を作っているブラウン管の中ではフランス語の教育番組が放送されているがハイドパークの耳には入っていないなぜなら彼の脳内はジアモルヒネが血液脳関門を突破し言語化不可能なありとあらゆる快楽が駆け巡っているからハイドパークの全身を蝕む悪魔のように意地の悪い物質はネバダ州エルコにあるハイドパークの生家母親のエリザベスが弾いてくれた初学者向けピアノ曲集と同じ名前の製薬会社が製造した二つの水酸基を酢酸とエステルにした鎮痛剤眠りの王と無水酢酸で煮られたもの人生の半ばで道に迷ったダンテと彼を導くウェルギリウスを追いかけ回す悪魔が落ち込んだ瀝青のように性質の悪いもの
ハイドパークが上体を起こし深く息を吐きながら身体を弓なりにくねらせるブラウン管の中では白衣を着たゲイリー・クーパーに似た男が言う
プランクトンとして海中を漂った後に幼生は海底に降ります口の部分の周辺を中心に新たな体が作られる形で変態が行われようやくヒトデらしい姿になるのです


『ロクス・ソルス』という同人小説サークルで活動しています。それから、ジャズピアノの演奏活動をしています。気が向くと絵を描いたりします。
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