D.I.Y.出版日誌

連載第318回: 無能は何をやっても無能

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2021.
04.29Thu

無能は何をやっても無能

ジムでひさしぶりに体脂肪計に乗ったら軽度の肥満と表示された腰を痛めてから下半身を鍛えるのをやめてコロナの流行以降はマスクで苦しいので走るのをやめたおかげで上半身の筋肉量は増えていたが下半身の筋肉が落ち結果としてもっともましだった頃に 13% だった体脂肪が 19% に増えていた体重も三キロ増えているたしかに上半身ばかりやっていたがだからって肥満はないだろう努力してもデブすればするほどデブ努力しても読まれないしまちがってたまに読まれれば客層のミスマッチで低評価何をどれだけ努力してもうまくいかないやり方が悪いということか筋トレについては足腰を鍛えればいいとわかったが出版のほうは八方塞がりだ日記でさえふたりには読まれるのに本の感想文は文字通りだれにも読まれない一方で検索流入は特定の本の感想文だけでそこから別の記事は読まれない同様に柳楽先生やイシュマエル氏のファンはそれぞれの作品を読んで満足しほかの記事を読みに行くことはない相互の行き来がまったくないUI はつねに試行錯誤しているけれども導線は何ひとつ改善されないまじで今月の出版収入は 228 円になりそうだいつもの月より桁がひとつ少ないし本来ならふたつ多くたっていいと思っているまず他人に認知されなければ知られていなさすぎるAmazon の関連付けから読まれるとろくなことにならないゴミを好む読者に読まれてゴミと関連づけられペドアニメやペドゲームみたいじゃないから低評価をつけられゴミ評価が強化される外部の評価と導線がなければ悪循環にしかならない月千円ほどツールに金をつっこんで twitter アカウントを運用するのは三ヶ月以内にはじめたいたぶんそれで効果を得られるとしたら広告に金をつっこんだときだけだろうtwitter と Google と Facebook と Amazon のすべてで広告を一度に打たなければならないしかしそれはそれとして twitter に何を投稿するかだいかにも無害でわかりやすいものでなければtwitter の主な利用者層は 10 代からせいぜい 30 代までのあまり本を読んだことのない若者だろうからその層に向けて販促をやるとしたらやはり悪魔とドライヴだろうあれは若者向けにわかりやすく書いた。 『ぼっちの帝国はたぶん大人向きなのだと思う本をあまり読んだことのない若者にはむずかしすぎるFacebook での販促にもっと力を入れるべきかもしれないそれだけなら金さえあればいますぐやれる一万くらい突っ込むか世間的には大型連休だしFB 広告に一万つっこむのはまぁ遊びとしてやってもいいかもしれないな効果はないだろうGoogle 広告はあまり気が進まない使い方が難しすぎるブクログに広告を出したせいで合わない客に読まれて低評価をつけられたりしたAmazon 広告にいたっては金がかかるばかりで効果が何ひとつ感じられないストア自体との相性が悪すぎるストアの表示から商品を選ぶような客の前にもし仮に露出できたところで選ばれる可能性はない彼らの好みとは違いすぎるからだやはり twitter アカウントのプロフェッショナルな運用を急がなければ技能として身につけたいhtml や css や PHP とおなじようにadobe ツールとおなじようにつまり人間性を自分から完全に消し去る技能を身につけたいただそれを実現すると何も書くことがなくなるんだよそれが問題なんだ心のない機械を模倣すること自体はやればできる言葉を憶えてから人生の大半を小説を書いて生きてきたAI による自動生成の小説がまだ存在しない時代に AI による自動生成の小説を模倣したソローキンほどにはうまくやれないがすでにある時代のおれにやれないはずがないただだれとも区別のつかない規格化された人間になることだけはできないんだよなきちがいに虐待されて人格形成したきちがいだから定型発達者のようにはなれないしまして企業が望むプロトコルに最適化されるなんて高度な芸当はできない現代の人間として最低限求められるその能力がないそれができなければ twitter ではうまくやれない心のないほかのだれとも同じあたかも人間みたいに見える仕掛けみたいに装いながらかつ文章を投稿しなければならないそしてそれはあの場のプロトコルに合致した非人間的なものでなければならない小説は人間を書くものだから twitter のプロトコルとは本質的に相容れないんだよでも身につけなければ健常者が当たり前にやっているそれができないせいで今月の出版収入二百円なんだからなFB 広告に一日千円で五日間つっこむことにした五千円なら伊達や酔狂で済むただいつもそうなんだけど広告の効果ってすぐにはあらわれないんだよな数ヶ月後半年後一年後に KENP で読まれるようになる広告をやめるとおなじタイムラグでいずれ読まれなくなるいまがそのときでだから二百円だ広告に投じた金を回収できるかといえばできるようなできないようなという感じやらないよりはいいがやってもひしゃくの水で火事を消そうとするようなものというかざるで水を汲もうとするようなものというか沈む舟からひしゃくで水をくみ出そうとするようなものというか一日経過した時点で管理画面を確かめると九百円弱で中高年主に老人に対してのみ表示されたった 20 クリック明らかに Kindle を利用する客層ではなくまったくコンバージョンせずうーん⋯⋯ Kindle を利用する客層は 20 代から 40 代のペドアニメやゲームを好む男性でtwitter にはそういうのがいっぱいいるがそもそもミスマッチな客層でそのひとたちに読まれるとろくなことにならない一方で Facebook には老人しかいない本は読むかもしれないが Kindle は利用せずペドアニメを好む twitter ユーザとはまた別の意味でつまり年齢的な意味で)、 現代的な人権感覚をたぶん理解しないプリントオンデマンドは気軽に買ってもらえるような価格ではないので Kindle 版を売るしかないのだが日本の電子書籍は漫画から普及した背景があり小説は最近になってようやく権利者との契約問題が解決しつつあるレベルでその状況で読書家に本を売るのはきわめて困難な状況だFacebook 広告と Kindle はやはり相性が悪すぎる一方でおれの書くものは twitter のような若年層もしくはペド中年男とは相性が悪すぎるちゃんと小説を読める大人でかつ電子版に親しんでいる読者はどこにいるのだろうFacebook 広告のランディング先を Kindle 版ではなく POD 版にしとくべきなのかもしれない高齢者なら金は持っているだろうからいやでも高齢の女性は夫に財布を握られていて自由に読書はできないから高額な POD 版には手が出せないかどうだろう高齢者に読んでほしいかというとそれもちょっと違うんだよな隠居した世代ではなくこれからの世の中を変えうる世代に読んでほしいかといって若者にはおれが書いているようなことは理解できないそれは若者の知恵や経験が浅いせいではなく単純に出版業界が読者を育てなかったツケだあとは広告代理店による従順な消費者にさせるための反人権教育若者に罪はないむしろ彼らは有能さゆえに搾取のプロトコルに最適化されてしまっただけだ気の毒でさえあるがこれはどうにもならないFB 広告は三日で中止した。 『ぼっちの帝国の表示優先度がほかの自著よりもあがっていたということは売れたか読まれたかしたはずなのだけれども管理画面に変化はないだとすれば POD が売れたのかもしれないがインプレスの管理画面に反映されるのは来月だもしほんとうに POD が売れたのであればやはり年齢層の高い FB で POD を広告するのが正解ということになるペドアニメとゲームしか知らない若年層の twitter よりは客層も適しているし⋯⋯考えてもむだだやめよう三千円つっこむ価値はなかったプロフェッショナルなアカウント運営とやらもどうでもいい売れない読まれないも問題だがそれ以前に書くことすらできない今月は年休消化で休日がやたら多いのにもかかわらず二話しか書けていない。 『ぼっちの帝国のときならとっくに書き終えていたこれだけ書けないのは体調やメンタルのせいもあるが題材が自分に合わなかったのも大きいアクション小説なら簡単に書けそうだと思ったのだが逆にむずかしかった健常者なら当然だれでも当たり前にわかっているはずの一般的な社会常識を持ち合わせていないからだあまりにものを知らなさすぎるこんな書き方じゃだめだだから難航してるんだな知らないことをごまかして書こうとしている根本からやりなおしたほうがいいかもしれない一般常識的をもうちょっとどうにかしないといくらだれも読まない小説だからってこれはない警察小説でも推理小説でもないしリアリズムとは無縁の空想的な話で映画によくあるアクション銃撃戦やら爆発やらカーチェイスやらさえやれたらあとはどうでもいいという方針で書いてはいるのだけれどもそれでもやはり最低限雰囲気だけでもそれっぽく見せなければいけない部分はあるごまかすにしても限度とかやりようがあるたとえばカーチェイスを書かなければならないのだが運転ができないので途方に暮れるしかない免許保持者の全員にカーチェイスの経験があるはずはないがそれはさておきとりわけ刑事が登場するのに警察のことを何ひとつ知らないのがまずい。 「刑事ドラマで得たまちがった知識ですら持っていないだからこんなことになるんだ若い頃なら図書館に通ってどうにかしたんだけれど⋯⋯いまそれをやって悪いということもないのだけれど⋯⋯いやそれ以前に図書館コロナのせいで休館中だった向いてないわこれ向いてないもう二度とアクション小説はやらないほんと何やってもうまくいかないなぁジムに通っても腰を痛めただけで肥るばかりだし小説はこのざまだし生きるのに向いていない


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。