D.I.Y.出版日誌

連載第315回: 小説の客

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2021.
04.10Sat

小説の客

数年前から契約が整備されて電子化が進み Kindle ストアの客層も少しずつ改善されつつあるそれまではペドアニメの客小説を読んだことがない客だけだったほんとうに粗悪なゴミしか売られていなかったからほんとうに粗悪な客しかいなかったいまは一応まっとうな客が増えてきたただおれとは好みが相容れないだけだペドアニメの客よりはまだましだけれども合わないことに違いはないたとえば一人称と三人称多視点の小説しか読んだことがなければ神視点の小説をまともに読めず下手だと勘違いするだろういまはまだそういう読者しかいないそれでもまだ小説を読んだことがあるだけ以前よりましだこれもたとえばの話だがピンチョンの読者が Kindle ストアに訪れるようになったらましな読まれ方がされる余地も少しは出てくる。 『ブリーディング・エッジの刊行が遅れているのは電子版の契約を進めているからではないかという気がする数日後の追記:違った)。 法的なハードルをさっさとクリアしてほしいおれの客は Kindle ストアにはまだ存在しないそして POD は高すぎて売りようがないまだ紙でしか小説を読んだことがない読者に訴求するにはどんな手があるだろう印刷したお試し版みたいなものを希望者に送付するとか? 個人情報は預かりたくないしだれだってそんなことは求めちゃいまい人格 OverDrive 誌上がそれに相当すればよいのだが残念ながらそのように機能してはいないベストは尽くしているこれだけ組版にこだわった文芸サイトはそうはないしかしこだわったところでどうなるというのかオチはない


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。