D.I.Y.出版日誌

連載第313回: どこにもいないわたしに

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2021.
03.22Mon

どこにもいないわたしに

これまでの執筆分を読み返すとGONZOがどうしてだれからも相手にされないのか理解に苦しむ年内には仕上げたいが月に 30 枚のペースではむりだろう書くものもウェブサイトも他人と較べてそう劣る水準とは思わないにもかかわらず貶められることはあってもだれからも評価されないのは自己宣伝の才覚がないからだやってきた仕事に見合うだけの評価を得るにはモールに気に入られるかソーシャルメディアで支持者を得るかの二択でモールに気に入られるには商品そのものがモールに最適化されなければならない別な人間にはなれないので論外だであればモール外のソーシャルメディアで自己宣伝するしか道はないその能力が致命的に欠落している父親は自己宣伝に長けた自己愛性の社会病質者だったそのような人間を憎んで人格形成したいまさら自己宣伝の権化にはなれないしなりたくもないしかしその適性を身につけなければ評価はされない自分自身であることを完全に消し去って大勢が交わる場へ積極的に首を突っ込みあたかも名刺交換のごとくに他人と交流して顔を売ることに徹する内容は伴わず自分をよく見せかけるそういう才覚が最低限必要で本そのものはどうでもいいというのが海外の自主出版では常識だもちろんこの国でもそうだろうあるいはこの国だからこそ資質と相容れない技能を身につけなければ今後はない業者を雇うことを検討した安くて月三万断念した十年以上もやってきてただひとりの支持者でさえ出逢えないだからせめて逆に自分がいいと思ったものは全力で支持しようと思ったのだけれどもそれすらうまくいかない寄稿者に魅力を感じてもらえる場には結局なれなかった二ヶ月も投稿がなく今後も見込めないので諸屋さんと成鵜さんのバナーと著者紹介をトップページから削除したもちろん作品はひきつづき閲覧できる)。 ジョン・ボン・ジョヴィが自分の曲をかけてくれる最初の DJ を見つけろと若者に助言する記事を読んだ世間に合わせて自分を変えるのではなくわかってくれる最初のひとりを見つけろという十年以上もやってきてそのたったひとりをいまだに見いだせない逆にいえばそのひとりにいまだ見いだされないこの十年ずっとリサーチしときに試して痛い目に遭いながらさまざまな可能性を検討しているがソーシャルメディアはどうしても膚に合わないわたしという人間だけではなく書くものもソーシャルメディアと致命的に相性が悪いATP についてはきわめて個人的なマイクロブログと認識して運用しており他人の目に触れることは想定していないFediverse に期待した時期もあったがそれもまた女児のアニメ風画像をアヴァターとする成人男性の世界だった)。 モールもソーシャルメディアも普通の人のためにあるそれが金になるからだ女児のアニメ風画像をアヴァターとする成人男性のような普通の人が手軽に消費できるものでなければ許されない。 「普通のアルゴリズムから疎外されたひとびとのために書いている手軽に消費なんてされないひとびとだモールやソーシャルメディアに馴染めぬなら金で表示機会を買うしかない五年前から広告に金をちびちびと投じてきたけれども総額は本を売って得られた収入より明らかに多いやり方が悪かったそもそもが Kindle を利用するひとびとは少なくともこれまでは人権意識に偏りのある中高年男性だけだったしKindle 利用者かつ女性で絞り込むと表示先が極めて限られこの国がどのような社会であるかを思い知らされるそもそもモールのランキングや関連付けの表示を見れば明らかだ)、 彼らに読まれると毀損しかされないもっと別な層へ向けてプリントオンデマンドを売るべきだった自己宣伝の醜い殺伐とした世界で成功したいのかとみずからに問えば答えは否だしかといって現状を晴れやかに受け入れる気持にもなれないそもそも生きていること自体がまちがっている人間が何をやったところでだめだソーシャルメディアやモールというよりもインターネットというかそれ以前に人間の社会そのものに適性がないのだからどこへ行っても疎外され居場所を見いだせないのが当然だそれが毎度の結論で十年ものあいだこの思考サイクルをくり返している子どもの頃に作家になろうとした理由はほかに食べていく手段がないと思えたからで被虐待経験者や発達障害者のロールモデルがほかになかった)、 現代の出版事業においてはだれよりも普通でなければ作家にはなれないことがわかったし書いたものを金に換えずとも生活できるようになったので別に読まれずとも構わぬ理屈だであればあとはいかに自己満足できるか自己肯定感を少しでも向上させる生活ができればいいわけでそのために必要なのはどちらかといえば充分な睡眠とよい音楽やよい読書なのだろう書く必要もなくなったわけだがこれは病態の一部でありわたしがわたしである以上はどうにもならない病態で自分を肯定するのはむりな話であってむしろ貶める結果になるのは避けられないがそうであっても書くことはわたしであることと不可分なのでしょうがない書いて出版することで貶められながらも読むことで満たされるのを今後は目指すべきなのだろうよい音楽は Spotify で充足しあとは読む本さえあればいいがこれに窮している書いたものは世間から蔑まれ自分でも蔑んでいる世間に馴染めぬほど異常でなんの価値も生じぬほど凡庸な人間だこれまでの積み重ねが無価値ならそれよりつまらぬものはもっと価値がないちょっといいかと思えても読みすすめると自分より低水準だとわかる何を読んでも価値を感じられずつまらないどれだけ世間の評価が高くとも明らかに自分のよりいいものしか楽しめずそしてそんなものには滅多に出くわさない


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。

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