D.I.Y.出版日誌

連載第292回: 腰痛で禁酒を決意した

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2020.
11.06Fri

腰痛で禁酒を決意した

出版というのは自己満足の観点からは不純で浅ましい行為かもしれない他者と関わろうとする要素が濃いからだ社会の基準や他者との比較で裁かれるのも相容れないし自己完結できない浅ましさも望ましくないしかしそうした矛盾があるからこそ惹きつけられるようにも感じているFacebook で Martin Newell をフォローしている先日の投稿がよかった世界中からたくさん CD のメールオーダーが届く人を雇うべきかとも思うけれど自分でやるんだ考えてみれば半世紀前のバイトと似たようなことをいまだにやっているよねといった内容わたしのやっていることと似ているちがうのは物理的な在庫を抱えたり梱包・発送作業をやったりはしていないことそこは Amazon に丸投げしているでもいずれやってもいいような気がするたとえばオンデマンドのペイパーバックは Amazon や楽天や Honto や丸善の流通に乗せず 30 冊以上ならソフトカバーをつけることができるBandCamp やストリーミングに取って代わられた D.I.Y. カセットテープ文化は 80 年代に盛んだったと聞くZINE やフェミニズムとも相互に密接にかかわる流れだMartin Newell や R. Stevie Moore や Gary Wilson や Daniel Johnston が活動の舞台としていた郵便のネットワークってどのようなものだったんだろうメールオーダークラブのようなものがあったと聞いてるんだけどディスカバラビリティや流通に関するところが重要に思えるのにそこがよくわからないディスカバラビリティのことを考えていたら諸屋さんのテレビ出演の件で放送局の方からメールをいただいた権利的なことをすごくきっちりしているんだなと感心したサイトの問い合わせフォームからではなくメールアドレスに直接届いたところを見ると時間を割いて Facebook ページまで確かめてくれたようだそりゃまぁ一瞬とはいえうっかり変なサイトを紹介しちゃったらまずいからねそういうところも含めて丁寧な仕事ぶりに感心した問合せフォームが使われなかったのは所属を入力する項目がないせいだろうビジネス上の連絡には向かないのだ寄稿者の利益になる機会を逃しかねないのでこれは改善するフッタにメールアドレスを記載してもいいかもしれないあるいはそろそろ週一でニュースレターをやるべきかもしれないなサブスクライブしてもらってメルマガ送るやつ取材をされた方はまずお店に関心をもって小説のことも知ったのだろうわたしが諸屋さんを知ったのはどちらかといえばコロナ in ストーリーズのほうが先だったと記憶しているお店のこともほぼ同時だったかもしれない)。 小説もお店もどちらも芸術家としての彼女の作品だとわたしは考えている書店を経営する作家にはたとえばアン・パチェットや柳美里さん日本の作家だと敬称をつけたくなるのはなぜだろうがいるけれど実際に本を読むお客さんの顔をまいにち見ているって重要なことだと思う過去作品を D.I.Y. で出版する佐藤亜紀さんとか出版と読書のありようを捉えなおす取り組みをされる作家はこれから増えるだろうしそういう作家のほうが読者に信頼されるはずだ考えてみりゃ全員女性だなローカル番組の小さな枠で一瞬映るかもしれない程度でどのくらい影響があるかと思ったらまったく影響なかったむしろ事前チェックらしき閲覧のほうが多かったまぁそんなもんだよねお店のほうは繁盛してほしいな長崎はいちど行ってみたい街のひとつだ。 『ぼっちの帝国がハリウッドで映画化されるとかわたしが世界の王となるとかいったことでも起きないかぎり東北から一歩も出ずに一生を終えそうだけれど。 『GONZOはようやく第一部を書き終えたこれまでの分にもだいぶ手を入れた完結はいつになることやら


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。