杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第294回: 腰痛で禁酒を決意した

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2020.
11.06Fri

腰痛で禁酒を決意した

出版、というのは自己満足の観点からは不純で浅ましい行為かもしれない。他者と関わろうとする要素が濃いからだ。社会の基準や他者との比較で裁かれるのも相容れないし、自己完結できない浅ましさも望ましくない。しかしそうした矛盾があるからこそ惹きつけられるようにも感じている。FacebookでMartin Newellをフォローしている。先日の投稿がよかった。世界中からたくさんCDのメールオーダーが届く、人を雇うべきかとも思うけれど自分でやるんだ、考えてみれば半世紀前のバイトと似たようなことをいまだにやっているよね、といった内容。わたしのやっていることと似ている。ちがうのは物理的な在庫を抱えたり梱包・発送作業をやったりはしていないこと。そこはAmazonに丸投げしている。でもいずれやってもいいような気がする。たとえばオンデマンドのペイパーバックはAmazonや楽天やHontoや丸善の流通に乗せず30冊以上ならソフトカバーをつけることができる。BandCampやストリーミングに取って代わられたD.I.Y.カセットテープ文化は80年代に盛んだったと聞く。ZINEやフェミニズムとも相互に密接にかかわる流れだ。Martin NewellやR. Stevie MooreやGary WilsonやDaniel Johnstonが活動の舞台としていた郵便のネットワークってどのようなものだったんだろう。メールオーダークラブのようなものがあったと聞いてるんだけど。ディスカバラビリティや流通に関するところが重要に思えるのにそこがよくわからない。ディスカバラビリティのことを考えていたら諸屋さんのテレビ出演の件で放送局の方からメールをいただいた。権利的なことをすごくきっちりしているんだなと感心した。サイトの問い合わせフォームからではなくメールアドレスに直接届いたところを見ると、時間を割いてFacebookページまで確かめてくれたようだ。そりゃまぁ、一瞬とはいえうっかり変なサイトを紹介しちゃったらまずいからね。そういうところも含めて丁寧な仕事ぶりに感心した。問合せフォームが使われなかったのは所属を入力する項目がないせいだろう。ビジネス上の連絡には向かないのだ。寄稿者の利益になる機会を逃しかねないので、これは改善する。フッタにメールアドレスを記載してもいいかもしれない。あるいはそろそろ週一でニュースレターをやるべきかもしれないな。サブスクライブしてもらってメルマガ送るやつ。取材をされた方はまずお店に関心をもって小説のことも知ったのだろう。わたしが諸屋さんを知ったのはどちらかといえば『コロナinストーリーズ』のほうが先だったと記憶している(お店のこともほぼ同時だったかもしれない)。小説もお店も、どちらも芸術家としての彼女の作品だとわたしは考えている。書店を経営する作家にはたとえばアン・パチェットや柳美里さん(日本の作家だと敬称をつけたくなるのはなぜだろう)がいるけれど、実際に本を読むお客さんの顔をまいにち見ているって重要なことだと思う。過去作品をD.I.Y.で出版する佐藤亜紀さんとか、出版と読書のありようを捉えなおす取り組みをされる作家はこれから増えるだろうし、そういう作家のほうが読者に信頼されるはずだ。考えてみりゃ全員女性だな。ローカル番組の小さな枠で一瞬映るかもしれない程度でどのくらい影響があるかと思ったら、まったく影響なかった。むしろ事前チェックらしき閲覧のほうが多かった。まぁそんなもんだよね。お店のほうは繁盛してほしいな。長崎はいちど行ってみたい街のひとつだ。『ぼっちの帝国』がハリウッドで映画化されるとか、わたしが世界の王となるとかいったことでも起きないかぎり、東北から一歩も出ずに一生を終えそうだけれど。『GONZO』はようやく第一部を書き終えた。これまでの分にもだいぶ手を入れた。完結はいつになることやら。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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