杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第289回: 秋の道

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2020.
10.18Sun

秋の道

人格OverDriveでPA-APIが取得できなくなった(したがって価格などの表示ができなくなった)問題、あるいは著者紹介ページのリンクからAmazonの著者ページへ飛び、そこから購入されているからではないか。著者ページは商品じゃないので許されるか判断がつかずAmazon著者ページへのリンクにはアフィリエイトタグをつけていなかった。迷いながらも試しにタグを仕込んでみた。ほかにもこういう取りこぼしがあるかもしれぬ。アフィリエイトの売上は発生せぬのに自著はちょぼちょぼ売れる。上記仮説が理由でなければほかに導線が存在することになる。本の紹介ページに価格を表示できないのは些細な問題だ。何を経由して購入に至ったのか。道筋が明らかにならないかぎり再現のための手を打てない。Amazonの最大の強みは顧客情報を握っていることだ。KDPの管理画面がアクセス解析を提供してくれたらいいのだけれどそんなことには絶対になるまい。周辺から探るより手はない。経路、導線は再現できればよいというものではない。Amazonが優先表示のために想定するのは小説をあまり読んだことのない客層だ。さまざまな小説を読み慣れた客よりそうでない客のほうがずっと多く、容易に金になるからだ。本をあまり読んだことがない客は自分が知らない書き方がされた小説に出くわすと浅薄にも「下手だ」と断罪する。読書能力を向上させる発想がないからだ。相手が拙いことにしてしまえば努力せずに済む。「ありのままで可愛い僕ちゃん」を大切に抱き締めていられる。困ったことにインターネットではそういう意見のほうが正しいことにされてしまう。出版社や書店が読者を育てる努力を怠ってきたからだ。筋の悪い読者に出くわせば人格OverDriveの本(現状は自著のみ)はまっさきに価値がないものと見なされる。『ウィトゲンシュタインの愛人』も『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』も『J R』も読んだことがない(語りの幅を知らない)客に断罪されるのは割に合わない。そうした客層は人格OverDriveにとってミスマッチとなる。望ましくない客に読まれればとんちんかんな低評価をつけられ、それが正しいものとして広く固定されてしまう。それを避けるには望ましい導線を積極的に提示し、顧客を誘導するしかない。「本の網」はそのための試みでもあり、経路を進んで提示することで客層を改善する試みでもある。出版社や書店が読者を育てぬ以上はわれわれ読者が、小説を愛する読者としての人格OverDriveが新しい世代を育てねばならない。この日記はわざと自分にしか理解できない書き方をしている。これまでの経験からいって文意がとれるような書き方をしたところで理解されるとは考えがたいからだ。ところが深夜に公開すると数名の方に即座に読まれる。失敗作とはいえ連載中のZ級BLアクション『GONZO』のほうが確実におもしろいのに。実際あの小説がなんなのか自分でもわからない。ミステリでないのは確かだ。アクションの要素はあるけどリアリティを完全に蔑ろにしていて、かといって当初予定していた「細かいことはいいんだよ!」という感じとも微妙に方向性が異なる。巧いか下手かでいえば下手なんだけど瑕疵と断じたら全体の意図を無視することになる。結局は完成するまで本当に失敗作かはなんとも言えない。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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