わたしはサイコパスの息子としてサイコパスの遺伝子を受け継ぎサイコパスに虐待されて育ったのだが、 病識はあるし共感能力もそれなりの倫理観もあるのでサイコパスそのものではない。 が、 某中央集権の資本主義サービスを覗き見ると、 運営によって優先表示される投稿のほぼすべてが⋯⋯なんというか特有の思考であることに驚かされる。 まぁ日本版はそういう企業が運営しているからそれはそうなのだろうけれど。 昭和の作家について調べるとみんな若い頃からの知り合いで、 同人誌をやっていたりそこから見出されたりしているので、 つい当時の才能はすげえなと思わされがちなのだけれど、 そうではなくて一部のひとたちの活動がそのまま権威づけられただけなんだよな、 ほかにやるやつが少なかったかなんかで。 逆にいえばいまから仲間内ではじめた動きを世間に受け入れさせていけばあたかもそれが正しかったかのようになるわけだ。 ただ当時といまとではメディアのありようが異なる。 いまはゲーム的な才覚でビッグテックの表示アルゴリズムに最適化されていなければならない。 五年前は瀬戸内レモンとか今治タオルみたいなブランドをつくる話をしていたけれど結局だれも理解しなかった。 直後に KU がはじまって単品売りの時代ではなくなったのでいまとなってはもうどうでもいい話だけれど。 話したうちの百分の一くらいの、 全体からすればわりとどうでもいい部分だけをとりあげて、 理解したような顔をされると心底がっかりする。 たぶんいま書いていることも三十年くらいしないとだれも理解しないし、 理解したところでわたしが話していたことと結びつけるやつはだれひとりいない。 それにその頃にはわたしはもうこの世にはいない。 以前、 Facebook 経由で知って購入した商品は満足度が高いと書いたけれど、 ビッグテックの関連付けサジェストは積極的に調教の手を入れてやらなければすぐ濁る。 Facebook はしばらく放置したらゴミみたいな広告表示をするようになった。 Google の関連サービスのサジェストは、 わたしの依存度が高すぎるおかげでまだましだ。 逆にいえば、 われわれの生活に完全に浸透しているという点で Google がいちばん怖ろしい。 われわれはもう彼らを疑うことができない。 体内を巡る酸素や血液を疑うことができないように。 いまのまま嗜好をないがしろにしつづけていたら Amazon はたぶん三十年以内に凋落する。 Apple や Facebook も安泰とはかぎらない。 でも Google はよくも悪くも、 というかおそらく悪いほうで今後もわれわれの生活の基盤として沈着する。 Microsoft はビジネスの基盤として定着したから残る。 ただビジネスというものの性質上これより悪くはならないと思う。 だれだって働くのはきらいだろ。 いやだと思いながら使いつづける分には安全なんだよ。 Microsoft も Adobe もまったく脅威には感じない。 道具としての分をわきまえているかに感じる。 それらはわれわれの認知の枠組を変容させない。 われわれの認知は彼らに依存しない。 ほんとは文学やロックンロールが変容させなきゃいけないのだけれど、 ひとたび権威と化して認知の枠組を決定づける立場になった企業は、 その安定を脅かすものは排除するだろうね。 文学やロックンロールは表示アルゴリズムに淘汰されるか、 抗うか。 D.I.Y. の出版はいまのところ Amazon のインフラに依存しているけれど、 幸いにもそれが本質になるところまでは行っていない。 モールに焚書されても epub と WordPress さえあれば、 もっと極端なことをいえば最低限 HTML と CSS があればどうにかなる。 WordPress も Google 八分にあえば存在しないも同じになる、 それはそうなんだけれど、 でもわれわれには ActivityPub がある。 いずれ本は Mastodon の検索窓で口づてに見出されるようになる。 恐怖政治下の地下出版のように。 なんのためにわたしがオール・トゥモロウズ・パーティーズをやっているか、 人格 OverDrive を ActivityPub 対応させたかといえば、 そういうことだ。
2020.
10.18Sun
(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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