D.I.Y.出版日誌

連載第281回: iOSの仮名漢字変換は行動履歴まで拾うようだ

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2020.
10.10Sat

iOSの仮名漢字変換は行動履歴まで拾うようだ

単純に表示させるだけでは導線にならないしそれよりは文章で言及したほうがいいという指摘をいただいてなるほどなと思ったでもどう活かせばいいかわからないわたしは文章で他人に言及できるし読みたくさせることもたぶんある程度はできる逆はない自分と違って他人はコントロールできないから言及させることはできない他人から好意的に受け入れられることもない人間性という技術に欠陥があるからだそれを補正できればと思うのだけれどどのみち書いたものに価値がないのであまり意味がないか結局読まれるだけの才能がないのだ見出される能力以前に書くものに価値がないそれは人として最低限の能力が欠けているからだ見せかけの補正ではどうにもならないやっぱり評価される人は人間としての価値が実際に違うのかもしれないなそのあたりがわかっていない時点で能力がないということなのだろう能力がないからその重要な差が見えない太宰を検索してうへさんにたどり着くことはあるかという話でそれはないだろうという話だった逆ならあるだろうと太宰の情報はどこにでもあるがうへさんの連載はうちでしか読めないではうへさんを検索して訪れた客がわたしを見いだすことはあるかレーベルとしてのブランディングに成功すれば⋯⋯と夢見ていたが画面遷移を説明したところどうもそれもなさそうな感触だった導線をうまく提示できていないデザインできていないという次元ではないのかもしれないそしてそもそも見出されやすさの話ではないのかもしれないソーシャルメディアやモールの表示アルゴリズムがどのようであっても寄稿者のみなさんは遅かれ早かれいずれだれかに見出されるわたしはそうではない読まれないのは見出されやすさの問題ではないすごいひとの書くものを追いかけているとやはり人間の次元が異なるのを感じる頭の出来というか能力がないからその本質的な差異に気づかない目の当たりにしても理解できない理解できないから自分の書くものにも価値があるかのように錯覚するいやでもレーベルとしてのブランド価値の提示はこれからだなやはり単行本を出さないとウェブサイトというひらかれた媒体ではやはりだめだばらけていてつながりがない個々の商品がパッケージとして閉じてないと閉じられた個々の提示があってはじめてつながりが見えてくるブランド価値? わたしのやることにそんな価値があるのか? 寄稿者それぞれにわたしと関係なくあらかじめ価値があるだけではないかせめてわたしと関わることで価値を貶めてなければいいが寄稿者それぞれのファンが別の寄稿者を見いだすことは今後のやりようによってはあり得るかもしれないそれとわたしの無価値は切り離して考えるべきだあるいは単純に楽しいから同人誌ごっこをやってますでいいのかもしれないばかなのに考えようとするからいけないのだシンプルに考えよう寄稿者はあらかじめ価値があるわたしにできることは何もないわたしのやることには価値がないわたしにできることは何もないでもウェブサイトのデザインは割とだれに見せてもそこそこ好感触だなでもそれなんか役に立つの立たないデザインは何をどう実現したいかで目的を達成するための手段なわけだけれど個々の作品を読ませるという次元でしか機能できていないその先に行くデザインではない行けないだろうという感触を得た。 「本の網特集の関連付けはまったく機能していないうへさんの読者がそのようなリンクの存在に気づいていないあるいは見てもピンとこないあるいは素人くさく感じるということはこの方向での考えやデザインは失敗しているということだ見た目は別に不評ではなさそうだからつづけるけれど意味はない価値のある人間が売れるものを書くしかないんだろうなブランディングなんてことがあり得るとしたら価値がない以上それはわたしには関係がない肯定の言葉に悩むからなのか小説を書き上げるなんてすごいねといわれることがあるもちろんすごくない書きはじめて最後まで書けば書き上がるしやめればそこで止まるそれだけだむかしはてなの有名人に同じことをいわれて明らかにそのひとは価値があるのでむりやり最後まで書かせたことがあったもちろん価値のある傑作が完成したのだけれどあれどうなったんだろう出版されたという話は聞かないそれ考えるとわたしはむかしから似たようなことやってるな独善家で一方的で進歩がないそういえばはてなの有名人でセルフパブリッシングしてる人は多いしよく売れてるけど小説で成功した例は知らない小説は嗜好品だから売りにくいんだろうなあらかじめコミュニティの支持基盤があれば売れるなくても価値があればモールで優先表示されてそこで見出されて売れるインターネットに適性がないから見出されず売れないと考えていたけれど単なる認知の歪みだったかもしれないな見出されるのは社会性の問題なのかそれとも固有の価値の問題なのか社会性の問題ならおそらく技術的に克服できるそっちだと思っていたけれど違うのかもしれないたぶんわたしは努力しなきゃいいんだよな努力するから見返りがほしくなる他者との関係性でしか結果がはかれないことに関心を向けるからつらくなるのだ


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。