イシュマエル・ノヴォーク

ペリフェラル・ボディーズ

第2話: ローン・スター

イシュマエル・ノヴォーク書いた人: イシュマエル・ノヴォーク, 投稿日時: 2020.10.02

1960s El paso

 へし折った生木で焚火をかき混ぜると苦し紛れに火の粉が飛び出したバーリングが火の粉を目で追う中空を舞った火の粉が黒ずみ哀れな塵が土くれの上に寝転がった薮が揺れ背中にショットガンを背負ったラフ・ベルがあらわれたベルはベルトの金具を締めると地べたに腰掛けたバーリングは所々がへこんだブリキ製コップにお湯を注ぐとアーバックルの粉が膨らみコップをベルに渡したベルが言う
ありがたい夜は冷えるからな
 アーバックルを一口飲んだベルの上唇に粉がつき手で拭ったバーリングはカウボーイハットのつばを一撫ですると
悪いな
 ベルは焚火を見ながら
礼なんて水臭いことは言わないでくれおれが勝手に引き受けたことなんだ気にしないでくれ
それならいいんだが
含みのある言い方だな気になることでもあるのか?
 バーリングは白いものが混じる口髭に手を伸ばすと
気になることならもう終わったくたびれたよ
 ベルは二重顎に生えた無精ひげを撫でながら
レンジャーの仕事は大変そうだおれといえば相変わらずなのにな
 バーリングは腕時計次に焚火を見ると昔みたいにロングドライブだけで食っていた頃が懐かしい気楽だったし冒険していた
今のほうが冒険しているように見えるぞ?
 溜息をついたバーリングが
仕事だからなそれにエミールが生まれてからは用心深くなったそもそもこれは冒険か?
エミールは何歳になった?
一〇歳だ
そろそろ銃の撃ち方を教えてやるといい
 アーバックルを飲み干したバーリングはコップに残った泥のような滓を地面に落としたバーリングが
おれみたいになって欲しくないエミールはお前みたいに農夫になってくれていいし役所で書類整理してもいい
デニス子どもは親に似るエミールもお前みたいになるレンジャーの仕事が嫌なのか?
嫌じゃない誇りにしているよ
じゃあ何が不満だ? 何に苛ついている? お前は名誉あるレンジャーで相変わらず早撃ち名人だ
 生木の枝で焚火をかき混ぜたバーリングが
お前は言ったよな? 子どもは親父に似るってなそれならお前は? お前の親父はニューヨークでラビだったお前はラビじゃないしユダヤ教徒ってわけでもなさそうだ
 首を傾げたベルがおれは神にそっぽ向かれちまった
それじゃあお前が言ったことは間違っていることになる
 ベルはそう言われるとそんな気がしてきたと言ってラグにくるまると地面に横たわった
 
 後ろに組んだ枕がわりの腕煌めく天体は空気光の加減で瞬きをする重力に束縛された岩石ガス塵は凝縮されて漂い続ける
 
 翌朝ベルが目覚めると熱を失って黒ずんだ焚火の残滓が見えたバーリングが近くの樹木に繋いでいた馬の背中に鞍を乗せていたベルは眠たい目を擦りながら
目覚めのアーバックルは? あれがないと始まらないんだ
 バーリングは馬の足下に転がる大きく膨らんだ麻袋を見て
手伝ってくれこいつを馬の尻にのせてやらなきゃならん
 ラグを丸めたベルが立ち上がると起き抜けにそういうものは触りたくないもんだ
四の五の言っていないで早くしろ
 ベルは口笛を一吹きすると昔と変わらず相変わらず人使いが荒い
 バーリングは麻袋からしみ出した赤黒い染みを見ると
事務所に置いているコーヒーメーカーを新しくしたんだそこで飲もう日が高くなる前に戻りたい
 麻袋を指差したベルがこいつは何をしたんだ?と尋ねるとバーリングが振り返ったバーリングは噛み煙草を噛んでいるらしく片側が膨らんでいたバーリングが言う
人殺しだそれはおれも同じだが


『ロクス・ソルス』という同人小説サークルで活動しています。それから、ジャズピアノの演奏活動をしています。気が向くと絵を描いたりします。
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