杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第279回: コミュニティを越えて

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2020.
09.30Wed

コミュニティを越えて

八月から紹介料が発生していない。小遣いを稼ぎたいわけではなくてリンク経由での購入がないとPA-APIが使えず、結果として本の紹介ページに価格や出版社の表示ができないので困っている。納得いかないのは寄稿者の書評からは購入アクションが発生しないことだ。労せずして儲けなし、というのはそりゃそうかもしれないけれど、寄稿者の記事はわたしのがゴミに見えるほどに優れているし、読まれてもいるのに購入実績に繋がらない。サイトのつくりに問題があるからだ。正確にはリンクは踏まれているけれどもそこから購入に至らない。何かしらミスマッチなり導線の断絶なりが生じているのだ。指名買いの客が検索して訪れた場合は、書評の書き手(わたしのことだ)に関心がないし、もともと買うつもりだから購入に至るけれど、書き手(寄稿者のことだ)に関心があって読みに来た場合は、読み終えたらそこで目的が果たされるので、わざわざその先のアクションを起こさない。だとすると寄稿者の背景にある読書体験に読者の目を向けさせる導線が必要かもしれない。寄稿者の才能や傑作がいかにして生まれたのか、知りたい読者は多いはずだ。今月は自著のKindle版の単品購入が多かった。なんの根拠もない想像だけれども、おそらく柳楽先生かどなたかが身近な方に勧めてくださったのではないか。普段は紹介ページ経由で買われるのに今月はまったくリンクが踏まれない。あるいは自著の広告に金を突っ込むか否かが影響するのかもしれない。だれだって知らない本は買いたくない。あらかじめ調べて、いいと思ったら購入する。それでこれまでは紹介料が発生していたのだろう。モール内の優先表示や関連付けに誘発された購入は客層のミスマッチが生じやすい。こちらとしてもよく知って納得してから買っていただきたいので望ましい循環だった。その意味で広告は継続すべきかもしれない。一日百円の広告でも月間にして千円はkindle版の収益に差が出る。毎月二千円は損をする計算になるが出版とは本来がそのようなものだ。商売ではないのである。本のメタファに徹した「これもお薦め」表示の効果は明らかにあった。それまではお目当ての記事のあとは即離脱されていたのにサイト内を巡回してもらえるようになった。いま人格OverDriveでやろうとしているのは結局のところよそのコミュニティで育まれた評価のフリーライドなのかもしれない。かといって人格OverDriveをコミュニティにするつもりはない。それはだれにも求められないわたしのような無数の無名人を踏み台にした搾取構造に他ならないからだ。noteがいい例だ。いずれは人格OverDriveから有名になる才能が現れればいいなと思うけれど、それは決してコミュニティとしてではない。あくまで作家本来の価値を伝えることができた結果としてだ。価値の見極めと見せ方にはわたしが全面的に責任を持つ。魅力が感じられなければそれは見せ方が悪いからだ。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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