D.I.Y.出版日誌

連載第275回: 本をつなげる

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2020.
09.26Sat

本をつなげる

人格 OverDrive はどうやら人気サイトになりつつあるいうまでもなく傑作が連日のように寄せられるからであるやっぱりうへさんは腕を上げている最初からうまかったとはいうものの自分を落とす笑わせ方がさらに洗練されてきたこんな才能がどうしていままで東京の大出版社に見出されずにいたのだろうもし該当する方がここを見ていたら恥ずかしいと思ったほうがいいいっとくけどね彼は金になるよわたしではなくあなた方がその気になればね前にわたしがこのような発言をしたのは十市 社とヤマダマコトについてだけだ正確にいうと十市 杜については世界文学級の才能だといったしヤマダマコトについては大金になるといった後者がプロにならないのはあなた方に関わるより彼ひとりでやったほうが儲かるからだいいですか長崎の出版社編集室 水平線の西 浩孝さんは諸屋さんを見出しましたよあなた方はいったい何をやってるんですかご寄稿いただいている才能には本職のライターさんもいらっしゃるからあんましこういうこと書くべきじゃないんだけどね⋯⋯わたしの意見はわたし個人の意見でしかなくて寄稿者とはいっさい関係ないということはご理解いただきたい寄稿者のみなさんはそれぞれの固定ファンをお持ちなのだけれど現状はそのファンはごひいきの著者しか読まずそこから別の著者についでにそっちも読んでみようかなと関心を向けることはまずないこれをどうにかできないか当レーベルには明確な色があってひとつが好きならほかの著者も好きなはずなのだサイドバーにこれが好きならこれもお薦め的なサジェストを表示するのがひとつの手だがわたしはサイドバーそのものを憎んでいるし読書において情報量が多くなりすぎるのは気が散ってこれまた好みではない盛り込めるとしたら著者紹介の下にある広告スペースだここにほかの連載のバナーをランダム表示させればいいのかもしれないでもそれはそれで何か違う気がする馴染みのある UI ではないからだあそこにあるべきはやはり広告バナーだ横長のサジェストなんて見たことがないトップページの閲覧率はやはり低いここからご贔屓の連載を探す読者はほとんどいないまずはソーシャルメディアでの著者自身の共有から飛んでそれだけ読んで満足して帰ってしまうその前に別の著者へ関心を惹きつけなければならない悩んでいたら寄稿者の戸田鳥さんからトップページに索引的な機能がほしいとご意見をいただいたうーん⋯⋯まずテキストは増やしたくないスマホで直感的に操れないからだ画像も増やせないいますでに重くなりすぎているサイト紹介のアイコンは現状でも著者一覧本の網コンテンツ紹介を兼ねた出版物一覧にそれぞれ飛べるけれどもわかりにくいぱっと見てわかるものでなければならないトップ画像をカルーセルにするのはひとつの手だけれど⋯⋯実際前はやっていたしかしなるべく使いたくない落ち着きがないでしょあれ重くなるしソースコードが汚れるからというのもあるハンバーガーメニューも大きらいだウェブマガジンの UI ってどうあるべきなんだろうとぐぐってみたけれどどのサイトも重い重すぎる表示にどれだけ時間かかってんだよ暇人のわたしでさえそんなには待てない人格 OverDrive でそんなあほなことをやらかしたら寄稿者のせっかくのファンも逃げてしまうざっと見たうちでは WIRED が比較的ましだけどあれもうちより重いしまだごちゃごちゃしているもっとすっきり単純でかつ一覧性があるものがいい⋯⋯というわけでさんざん悩んだ挙げ句本のメタファーに寄せたランダム表示リンクをトップページと各記事の下部に載せることにしたこれが正解かはわからないとりあえずしばらくこれで行ってみるスマートフォン以降のウェブと本との差違はどんどん狭まっていくと考えている本を本たらしめているのはパッケージによる読書体験と可搬性なのだけれどそれはあくまで概念としてのパッケージと実用上の可搬性なのでスマートフォンで閲覧する以上は概念的にパッケージ化できてさえいればウェブサイトも本になり得るのだ人格 OverDrive の UI はその考えに基づいてデザインしているその路線をちょっと推し進めてみた感じだちなみに新規参加者はいつだって募集中なのだけれど正直いまの寄稿者が全員すごすぎて同水準を期待するのはむりだろうという気がしている商業出版があほらしく見えてくるレベルだからねいや負けないぜという猛者はふるってご応募ください原稿料は出ません


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。