D.I.Y.出版日誌

連載第271回: ここではない場所

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2020.
09.05Sat

ここではない場所

別人に変わるしかないのはわかっているけれどほかのだれとも違う自分であることからは逃れられない連載中の Z 級 BL アクション小説GONZOの閲覧者がわたしだけであるのは仕方ないとしてあれを公開するようになってからぼっちの帝国の KENP が完全に死んだ作品の善し悪し以前に作家の人格そのものに難があるたとえわたしと接点のない人気アカウントであってもわたしが共感できるようなツイートをした途端ごっそりフォロワーが減るましてわたしは自分が共感できることしか書けないのでだれからも決して肯定されないにもかかわらず一方で適切な客筋にリーチできていないだけなのではこの地上のどこかには千人くらい読者がいるのではという妄念がどうしても拭えないわたしの顧客はソーシャルメディアにはいないAmazon にも楽天にも BW にも Honto にもいないインターネットにはいないかといって実店舗にもこんな醜い棚で売られたくないという違和感しかないからやはりそこにもいないそれらはどれもテレビの客層と重なっていてわたしはそうした感性に適性がないだれからも一度として好まれたためしがなくそのような人間であることが最大の障壁になっている流通手段ももうちょっと何かましな手はないものかと調べてみたいかにも民主的みたいに装っている新サービスもどれもこれも結局は既得権益というか既存の価値観から一歩も出ないスノッブな世界であることを思い知らされるばかりだ出版の民主化をうたう WordPress でさえも近頃は押しつけがましく感じられ学習コストは厭わないから自由にやらせてくれと思わずにいられないやはりわたしの言葉は  公に出すパブリッシングには向かないのだだれにも見られていない場所で常軌を逸した独り言を延々と垂れ流すのが似つかわしいしかしそれを他人を巻き込んでやるのはまちがっているし本来の意図とも異なるわたしの使い方がまずいせいでせっかく登録してくれた寄稿者の方々が使えずにいるのはわかっているオール・トゥモロウズ・パーティーズは告知に特化していずれは別のサーバを建てるべきかもしれないしかしメンテナンスの手間が要らないことや維持費の安さを考えるとポルトガルの業者に委託した現状維持でいい気もして迷っている人格 OverDrive をだれでも審査なしで登録して投稿できる方向にすべきだろうかセキュリティの問題もあるし著者別にカテゴリを割り振って専用テンプレートをあてる現在の運用も考えなおさねばならないいずれにせよわたしはただの無能な屑のままでいたくない人生の手綱を握っている実感がほしい錯覚でもいい


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。