杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第271回: 日曜の道化師

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2020.
08.27Thu

日曜の道化師

われわれがコンテンツビジネスだと思わされているものは実際には権利ビジネスで、コンテンツだと思わされているものはサービスだ。現代において本や映画や音楽は権利者が認めるあいだだけ利用できるサービスでしかない。うへさんの傑作が公開されたのにいつもほどには読まれない。と思ったら公式発表はないもののアルゴリズムが調整され(いちいち公表するわけがない)、twitterジャパンに益しないかぎり外部への導線が抑制されるようになった……というか体感できる水準までその調整が強められたらしい(諸屋さんはFacebookからの流入が多いけれど、うへさんはtwitterからが主だった)。デマの類だとする火消し記事をいくつか読んだが、いずれもユーザが体感した変化への説明にはなっておらず、論点をずらしている印象を受けた。商売の場から客を逃がさぬため、外部への誘導を禁ずるのはAmazonも楽天もやっていることではあるけれど、twitterジャパンの場合、言論統制の意図がより強く感じられる。「トレンド」に表示される投稿は人力によってキュレーションされており、その内容は政治的な偏りを隠さない。「虐待されるクルド人」の表示頻度を抑制して「ブルーインパルスに感動するひとびと」を優先的に表示させる、といったように。いまのtwitterはフォロワーの投稿すべてをタイムラインに表示することはしない。われわれが目にするのはアルゴリズムで取捨選択された結果だ。人力の修正がまにあわずにアルゴリズムが拾ってしまったのか、調整の話題は今朝はトレンドにあがっていたが、いまはもう表示されない。検索をかけても大本営発表を素直に信じ込むような従順なひとびとばかりが表示される。退会したので外部からはわからないが、おそらくタイムライン上でも不都合な発言はフィルタリングされ表示されにくくなっているだろう。彼らにとって都合のいい投稿ばかりが優先的に表示されるはずだ。いまに始まったことではない。彼らの見せたいものだけを見せられていること、運営会社が政府とつながりの深い大手広告代理店と資本関係にあることを、多くの日本人ユーザが気にしないのは「汎用性」の制約から逃れられないからだ。だれもいない土地よりも国家の圧政のもとで群れて暮らしたいのだ。虹色リボンMAXに寄せる女たちのように。とはいえ一時的にではあってもその話題をわたしが目にできたということは、表示が抑制されているだけで水面下の不満はそれなりに高まっているのかもしれない。Amazonにしても彼らの売りたいコンテンツばかりが優先的に表示され、本好きの需要は埋もれさせられている。数少ない現代のミリオンヒット・アルバムはふだん音楽を聴かない中高年に、大手代理店がマスメディアで、番組タイアップやCMなど、三十年前のような販促をひたすらやって物理メディアを買わせることで成立したそうだ。本にせよ音楽にせよ、ふだん本なんか読まない層、音楽に関心のない層に売り込まねばならない。愛好者だけを相手にしていては市場が小さすぎて商売が成り立たないからだ。芸術に関心のない客に売りやすい商品が選ばれるのも、アルゴリズムをそのような売り方に最適化するのも、メセナではなく商売なのだから当然だ。結果としてそれ以外、すなわち芸術なり言葉の自由なりを求めるユーザは疎外され淘汰される。アルゴリズムが人間性に寄り添うのではなく人間の側がアルゴリズムを学習し、自らをそこに最適化することを強いられている。権力が個人を規定すると考える多くの日本人には都合のよいことだ。その流れに抗うためにD.I.Y.のサミズダートをやっている。帽子に合わせて頭を削いだりベッドに合わせて両脚を切断したりするような真似はもうやめよう。われわれは主体性を、自分らしくあるための自由を取り戻さねばならない。そのために書きたい、本を出したいという仲間を求めている。『本の網』の選書傾向や掲載作品に共感したら問合せフォームから連絡ください。連載を経てKindleやペイパーバックで単行本(Amazon、楽天、Hontoで販売されるISBNとJANコードのついたプリントオンデマンド書籍)化する手助けをします。原稿料が出ない代わりに印税からマージンをとることもない。寄稿者用Mastodonサーバも開設したので、中央集権の資本主義サービスに縛られずに書きたい方はぜひ登録なりリモートフォローなりを。現状はわたしが独り言を垂れ流すだけの場でしかないし、今後もそうありつづけるだろうけれど。

オール・トゥモロウズ・パーティーズ
杜昌彦のアカウント


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
ぼっち広告