D.I.Y.出版日誌

連載第261回: できることをやる

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2020.
07.17Fri

できることをやる

書かぬと書けぬと書く気になれぬではそれぞれが異なる書かぬは意志であるわたしの言葉など求められていない他人には迷惑でしかない社会に害をなすよりほかにもっとやるべきことがある読書なり何なり有意義に時間を使うべきでそうする決断を下すのは前向きな行動だ書けぬは未練たらしくしがみつく惨めな行為だ求められぬばかりか迷惑にしかならぬのにまだやろうとするさっさとあきらめて読書でもするがよいもっともよろしくないのが最後の書く気になれぬというやつただの無気力であるなんら生産性がない有限の人生を無為に費やすばかりだどうせだれの役にも立たぬ人生だから構わぬはずが無駄にしたとの思いが精神衛生によくない現在はこのもっともよからぬ状態にある字を憶えるなりずっと書いてきた人生だ大抵のものを惰性で書くだけの筋力はあるつまらぬへたくそやめておけとの内なる声に対しては酒で感性を鈍らせ大音量のヘッドフォンで耳を塞げばそれで済むしかしその気にならぬわたしにだって正気に近づく瞬間はあるのだつまらぬへたくそやめておけうんそうだねやめておくよ過剰な暴力描写さえやれたらあとはどうでもいいZ級アクションで荒唐無稽で真実味のかけらもなく前作より劣ると書く前からわかっているものだから内なる声につい従順になる読み返したら冒頭としてはそう悪くなかった年に一度は何かを書くと決めている年の瀬までにはどうにかなるだろう今月はまだ手をつけない読書と飲酒を優先するどのみち飲むのだ700ml 瓶半分で潰れる下戸のくせになぜか屑だからさ人生はしらふでいるには厳しすぎるちょっといいこといった解説しようわたしのような屑を目にしたらわたしだって険しい態度になる見下げ果てた野郎だ臭うんだよお呼びでないこりゃまた失礼しましたとばかり世間から退場するのがいちばんの良薬であるしかし生まれ出てしまったからには喰わねばならぬ稼がねばならぬそれがために顔をしかめられつつ世間と関わる鼻つまみの運命が避けられぬならせめて余暇には引きこもりたい精神衛生に確実に貢献するのは PHP やら HTML やら CSS やらだ画像の多用で表示が遅いのはやむを得ぬと諦めていた当サイトをあの手この手を費やして軽量化したPageSpeed Insights や GTmetrix の数値ばかりではなく体感上も劇的に改善できたプライベートモードの Safari でも問題ない速度で表示される以前はねブラウザキャッシュが効いていなければ 95 年のダイヤルアップかと疑うくらいの緩慢さだったんですよそれで逃した客も多かろうわたしひとりが閲覧者だった以前はそれでよかったが寄稿者を迎え読まれるべき作品を預かったいまではそうもゆかぬほかにもちょこちょこと弄ってサイト内 SEOというほど大層でもないな所詮は自己満足だ網の目のような関連付けを強化した寄稿者が世界の文豪と肩を並べ著者紹介には連載が本のように表示されクリックすれば記事一覧に飛ぶ仕掛けだこのことをわたしはいつも得意満面ドヤ顔で鼻息も荒く説明するのだが感心されたためしがないまぁよい世間はそんなものだD.I.Y. による極小規模のインディペンデント出版のブランディングについて四年前との違いを説明するつもりだったが長くなったはしょって書いておくと契約の法的問題が未解決で電子化が遅れかつ KU 以前でもあった当時はプロと同等かそれ以上の品質でありながらプロにない独自性を有するというプロでもアマチュアでもない第三の価値を捏造しブランドとして提示する好機だったのだがへたくそなままで甘やかされたい有象無象に反感を持たれいやがらせが殺到し有識者に恫喝され殺人予告めいたものが密かに届き切磋琢磨で底上げが期待できるし彼ら自身そのような向上を望んでいたと当時わたしは信じた参加者らにまで危害が及びそうになってやむなく断念断念と同時期に KU がはじまり一年後にはプロの電子化もようやく進んだのでその試みは陳腐化した今回やっているのはその改定更新版である状況は何もかも変わったプロと張り合う意味はなくなったアマチュアのゴミは論外なので可能なら隔離してほしいが現状はストアにとって旨味があるのでしばしば優先表示される)、 品質の優劣は問題ではなくなり単純に出版と流通の手法に差があるのみとなった四年前のやり方では才能や向上心のないアマチュアともある程度関わらざるを得ずそれゆえに失敗した参加者のことではない参加者につながる有象無象だ星1レビューや関連付けのような表示の面でも人格の面でも彼らは有害でしかなく距離を置くに越したことはないと学んだ手法に差があれば結果にも影響するがさておきただ物語を楽しみたいだけなのに大金や労力や燃料を費やして無駄に生産して保管したり物理的に移動させたりするのは with 安倍with 女帝の時代に愚かしく感じられるもしそれが取次の配本をただ受け入れるだけの判を押したような没個性の店であるのなら感染リスクに身を曝してまで混み合う街の書店へ足を運ぶまでもあるまいもしどうしてもそうしたければ人格 OverDrive の本は丸善ジュンク堂三省堂の店頭で注文して後日受けとることができる)。 企業は個々の例外はあるにせよ構造上判で押したように権力におもねる本しか出版しようがないし隣国の言論弾圧を見るにつけソーシャルメディアの表示アルゴリズムと資本関係を意識させられるにつけ地下出版サミズダートの手法で将来に備えるのは有意義であるように感じる暴動が起きた地域の平均年収と変わらぬ暮らしぶりでもあることだしそんなこんなで身の丈に合った出版をやっていこうと思う次第であるこの件はまたいずれ気が向いたら説明するWordPress について何も知らなかった四年前よりは技能も向上したWordPress出版の民主化を謳うだけあって便利な道具であるInDesign なんかと較べて実に使い勝手がよいだいいち名前がよいではないか


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。

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