コイディシュ・ブッフ
第3話: ベルゲンソンよりギンプルへ
親愛なるシャバタイ・ギンプル
ヨハネスブルグの生活、なにより商売が順調だ。順調極まりないとすら言える。かつて、君は反対したけれど、今でも反対しているのかな? ここは素晴らしい。ワルシャワに比べれば遥かに暑いが、それでもお釣りがくる。君は反論するか、もしかすると怒りさえするだろうが、ワルシャワもアメリカも、いるべき場所じゃなかった。
我々は流浪の民だ。らしく振舞ったほうが賢明だろう。
こちらは先日のディンガーンの日でてんてこ舞いだった。ディンガーンの日というのは、ボーア人とズール人が戦い、それを記念した日のことで、この戦いでカフェルとの関係がしっかり叩き込まれた。主従関係と言っていいだろう。こちらはハヌカの用意も覚束なくなるような忙しさだったよ。もちろん、ハヌカをおろそかにしたりはしないが。
こちらでは奇妙な話を山ほど耳にする。毎日のことなので、全てを覚えているわけではないけれど、君なら興味を引かれるような話ばかりだ。取材という形でこちらに来ることはできないかな?
シュモクドリという鳥がいる。コウノトリに似ている鳥だが、この鳥はしばしば奇妙な行動をする。水溜まりの前に立ち、水面に映された自分の姿を見るんだ。カフェルたちはシュモクドリをマシアノケと呼んでいて、未来を見通すと考えている。だから、離れて様子をうかがう。予兆や前兆を読み解こうとしているんだ。
彼らのすることはわからないことばかりだが、興味を引かれるだろう?
取材したくなったら、是非、伝えて欲しい。
サウス・ブロンクスの同胞たちによろしく。
ロゼ・ベルゲンソン