D.I.Y.出版日誌

連載第243回: ことばの民主化

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2020.
05.27Wed

ことばの民主化

グーテンベルクは一部の特権階級のものだった本を多くのひとびとへ開放したインターネットもまた権力に認められなければ言葉を広められない状況を変えうるものとして期待されたしかし実際には個人に何の力も与えなかった権力に与するものまたは新たな権力をかたちづくるものでしかなかったソーシャルメディアと政治カルトがともにファシズムの語源であるを訴えるのはそのためだそれが彼らの利益になるtwitter や Amazon のようなプラットフォームはそもそも中立ではない商売に投稿者を利用しているだけだ企業は政府に忖度するものだしとりわけ日本の twitter は人権をなくすことを悲願とする政治家に共鳴している投稿者の自由は当然ながら運営企業の許す範囲にしかない書くための場所に金を払わぬというのはそういうことだサーバまで用意するのはさすがにハードルが高いにせよ自由な発言の場は自前でつくるしかないWordPress は出版の民主化を謳っているepub はインターネットから派生しながらも閉じられているがゆえに個を尊重するしかし結局はそれらも Amazon や twitter や Google のようなプラットフォームがなければさながら無人の森で倒れた木のごとく存在せぬも同然となる現実がある欠陥が広く知られながらもだれもが巨大プラットフォームに依存せざるを得ない理由は結局のところ汎用性にある人間はひとと違うことに耐えられない。 「みんながやっている場でなければだれも使わない。 「だれもが同じのプロトコルにのっとりそこに最適化された社会的評価こそが人間の価値として流通する汎用性のないそれ以外の価値は通貨として無効だ民主的であるとは他人と折り合いをつけながらそれぞれが自分らしく生きることだと思うのだけれど現実の社会は残念ながら他者との違いを尊重した時点で疎外される立て付けになっている個を尊重することと汎用性が両立する術はいまだ見出されていない


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。