ある書店が 「死にたくなったら読む本」 のフェアをはじめたそうだ。 わたしは死にたくなったら読むような小説しか書いていない。 死ぬことを考えている若者に一冊を勧めるなら 『逆さの月』 かなぁ。 あるいは 『Pの刺激』 に収録した 「ガラスの泡」 かもしれない。 『ぼっちの帝国』 は生きるための小説として書いた。 書くのも自傷だし、 書いたものを消すのも自傷。 ていうか生きてて楽しい幸せ! ってひと小説、 読まなくない? 実人生で充分じゃん。 あと基本的に小説は生きる役には立たないね。 サミズダートの小説にしがみついて圧政を生き抜いたひとたちがいるのは知っているし、 わたしもまた虐待をそのようにして生き延びはしたのだけれど。 だからといってこの人生がましになることはない。 苦しまなきゃいけないような人生ならそもそも小説と関係なく苦しいでしょ。 小説なんか読もうが読むまいが変わりない。 そこまでの力は小説にはない。 わたしはほんのちょっとだけキリスト教徒なので (どこの教会にも所属してはいない)、 言葉の力をそれなりに信じてはいるけれど、 それでもそれは何も救わない。 そのことを経験として知っている。 生まれつき愛された人間だけが救われる。 小説は何も変えられない。 でも、 しがみついてしまうんだよ。 twitter のような公の場にこういうたわごとを書いては消す、 という習慣が不健康なのは知っている。 それだけのために BuddyPress 戻そうかなぁ。 金を出して借りたサーバで、 だれも見ていない場所で何をやろうが文句をいわれる筋合いはない。 書いて、 書いて、 書いて、 何もかも消す。 他人の眼に映る自分を罰する。 わたしはわたしを垂れ流すわたしを消しつづける。
2020.
05.25Mon
(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
『D.I.Y.出版日誌』の次にはこれを読め!