杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第244回: わたしを消す

書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2020.
05.25Mon

わたしを消す

ある書店が死にたくなったら読む本のフェアをはじめたそうだわたしは死にたくなったら読むような小説しか書いていない死ぬことを考えている若者に一冊を勧めるなら逆さの月かなぁあるいはPの刺激に収録したガラスの泡かもしれない。 『ぼっちの帝国は生きるための小説として書いた書くのも自傷だし書いたものを消すのも自傷ていうか生きてて楽しい幸せ! ってひと小説読まなくない? 実人生で充分じゃんあと基本的に小説は生きる役には立たないねサミズダートの小説にしがみついて圧政を生き抜いたひとたちがいるのは知っているしわたしもまた虐待をそのようにして生き延びはしたのだけれどだからといってこの人生がましになることはない苦しまなきゃいけないような人生ならそもそも小説と関係なく苦しいでしょ小説なんか読もうが読むまいが変わりないそこまでの力は小説にはないわたしはほんのちょっとだけキリスト教徒なのでどこの教会にも所属してはいない)、 言葉の力をそれなりに信じてはいるけれどそれでもそれは何も救わないそのことを経験として知っている生まれつき愛された人間だけが救われる小説は何も変えられないでもしがみついてしまうんだよtwitter のような公の場にこういうたわごとを書いては消すという習慣が不健康なのは知っているそれだけのために BuddyPress 戻そうかなぁ金を出して借りたサーバでだれも見ていない場所で何をやろうが文句をいわれる筋合いはない書いて書いて書いて何もかも消す他人の眼に映る自分を罰するわたしはわたしを垂れ流すわたしを消しつづける


(1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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