杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第238回: D.I.Y.出版と広告、そしてソーシャルメディア

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2020.
04.08Wed

D.I.Y.出版と広告、そしてソーシャルメディア

経済効率の最大化ばかりで読者を向いていないインターネットモールの関連付けと違って、生身の人間がおこなう実店舗のレコメンドは優れている。という賞賛を、実店舗に勤務する書店員さんの体験談を引用しつつツイートしたのである。するとまさにその書店員さんから蔑みに満ちた叱責を受けた。あべこべに実店舗を批難したかに受けとられたのである。やはりソーシャルメディアは苦手だ。一事が万事、文意が伝わったためしがない。そのあたりがわたしの本が読まれず、貶められる理由なのだろう。ソーシャルメディアは「世間」の「普通」のひとびとが使うものである。彼らと同格になったかに錯覚して、「いいね」で好意の表明をすると冷ややかな悪意が返ってくる。何こいつキモい、という具合である。とりあえず今後は偉大なる某モール様のことは偉大なる某インターネットモール様、と「わかりやすく」記述しよう。新刊書の実店舗ではもう買い物しない。アニメ風イラスト表紙の本やヘイト本ばかり並ぶ店で会話を成立させる自信がない。読んできたものが違いすぎる。幼少時から何を話してもだれにもまともにとりあってもらえず、貶められて育ったので、蔑まれることに過敏な人間になってしまった。事情があって伏せざるを得ない書き方をして、そのために誤解を招いたのはしょうがないにせよ、わたしを難じる曲解が大勢に共感されるのを見てしまうと「世間」がおそろしくなる。人間は意思疎通のかなわぬ昆虫のようだ。窓に衝突をくり返す蜂を外へ出してやろうとすると攻撃されたと思われて刺されたりする。たかだか一度いやな思いをしただでこの騒ぎよう。他人にどう思われようが好きに生きねばならぬのに、つまらぬことをいちいち気にしてクヨクヨするのがわたしの悪い癖だ。昨夜のつづきを書くつもりだったが気が滅入った。手元の瓶にはまだ残っている。ぐいっとやって元気を出す。下戸にはウィスキーがちょうどいい。飲みすぎる畏れがないからだ。ええっとなんだっけ、そうだ広告の話だった。五年ほど前からあれこれ試している。Facebookは一日五百円でもそれなりに効果がある。百円でもやらないよりはましだ。しかしあそこには年寄りしかいないし「いいね」が集まるばかりで読まれはしない。属性が細かく絞れるのが利点だが、個人情報保護の観点からか勤務先企業は選べなくなった。わりと低コストでそこそこ楽しめる博打という点では宝くじに似ている。googleは出稿先が選べるし年寄り以外にも閲覧される。肝心の効果はまったくない。Facebookよりも高くつくしクリックはされても売上にはつながらない。出稿したいサイトがつねに選べるともかぎらないし、出稿先をまちがえるとかえって客層が濁る。大金をじゃぶじゃぶ投入できるのなら成果も変わるのかもしれないが宝くじめいたささやかな楽しみは得られない。暴力団や起業家の博打にまぎれこんだ素人のような気分にさせられる。みるみるうちに金が減り売れない上に客層が濁る。偉大なる某インターネットモール様(長えな)は客筋がよくないので可能ならよそから招き入れたい。実際には店内を巡回する客のみが客なので結局のところストア内SEOのみが有効だ。そこで偉大なる某インターネットモール様(だから長えって)内部での広告枠を、仲介業者を通じて買ってみたところ金がかかるばかりだった。使い方を改善したところで当然ながら客筋改善はまるで見込めない。Facebook、google、偉大なる某(略)様、いずれもだめ。そこで先日はじめてtwitter広告を試したのだが、これは最悪だった。糞の役にも立たない「いいね」に無駄金を投じるだけのお粗末な代物だ。URLはクリックされないしまして本など読まれない。おまけにその「いいね」でさえもFacebookと同程度を得るのに十倍の金がかかる。まったくの虚無に金を投げ棄てるようなものである。金は音もなく吸い込まれる。もう二度と試さない。やりようによって可能性を感じるのは偉大(略)様、小銭でそこそこ楽しめるのがFacebook、金がかかり客層を濁らすばかりなのがgoogle、ソーシャルメディアの餓鬼どもは一銭も出さないと学べるのがtwitter。という結果であった。D.I.Y.出版に関心のある諸君、参考になりましたか? ならないね。ではまた明晩。鬱や疫病に殺されていなければの話だが。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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