D.I.Y.出版日誌

連載第231回: 小説投稿サイトとD.I.Y.出版とディスカバラビリティ

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2020.
04.03Fri

小説投稿サイトとD.I.Y.出版とディスカバラビリティ

中村航さんの小説投稿サイトを見に行った肝心の小説が横書きのゴシック体でがっかりした小説を読ませるつくりになっていないプロも書いていることが売りのようだが体裁が醜いのでプロの作品に見えないというかそもそも投稿小説サイトが人気なのはどれも代わり映えのしないアマチュアのゴミだからだそこで求められるのはプロの技術でも文学的な豊かさでもない。 「馴染み感そのためには素人のゴミであるほうが歴然と有利だ自分とおなじ素人によって馴染みのあるものが書かれているというのが重要なのだほかのだれにも書けない豊かなものを高い技術で読ませるのがプロなのでゴミが尊ばれる世界ではどうしたって素人にはかなわない戦場が違いすぎる素人であればあるほど喜ばれる世界では筋の悪い客層にとんちんかんな低評価をつけられるのが関の山だプロがそんな次元に降りていく必要はないしかしこれまでの出版のありようでは戦えないという問題意識は正しいであればこれまでにないものをつくらねばならないしそのためには読書とは何か出版とは何かといった根源的な定義に立ち返らねばならない人格 OverDrive では電子書籍元年といわれた 2010 年からずっとそればかり考えて実践している当サイトに参加者が小説を投稿すれば読みやすい縦書きで表示されるさらに読書感想文を投稿することで導線が生じるすなわち検索して訪れた客が感想文の書き手に関心を持てばそこから著書に出逢う機会が生じる。 『本の網によって関連付けも強化されるというのはつまり検索で訪れた客が似ている本の表示によって参加者の本に出逢う機会が得られる自動生成された著者ページで世界の文豪と同格に並ぶ新着一覧や人気ランキングや運営側のおすすめによってのみ出逢いが発生するのではどんな傑作も埋もれるばかりでディスカバラビリティも何もあったものではない実際に本が読まれる機会のあらゆるパターンをウェブで模倣するところからはじめなければならないその上でなおかつウェブでしか得られない新たな可能性を見出さねばならないアルファベット最初の文字からはじまる偉大なるモール様の栄華はそういう理由で長くつづかないと断言する。 『本の網』 (本の紹介ページでは似ている本として表示は現在、 「特集なるパラメータによって関連づけているいずれはもっとさまざまなパラメータを付与して精度を上げるつもりだ参加者の連載が溜まれば ISBN つきのペイパーバックで単行本化することも将来的には考えている利用している仲介業者が印税振込先の複数指定に対応しておらず報酬を渡す手段がないので書籍化については自著でしか実現できていない出版レーベルでもある当サイトにはそのような機能があるのだが試してみませんか興味のある方はご一報ください


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。