D.I.Y.出版日誌

連載第228回: 出来

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2019.
11.08Fri

出来

ペイパーバック版が届いたCreateSpace や KDP Print と違ってデジタルプルーフがないので実物を手にするまではどんなものができあがるか想像つかないざっと見たところ問題はなかった表紙は例によってずれている一部のみの印刷だと回転数が上がらないからだ五冊も注文すれば徐々に回転数が上がって最後には正しい位置で印刷される茶色のロゴは色ムラがひどいjpg を pdf にしたせいだjpg はどうしてああも均一な色が得られにくいのだろうかpdf のバージョンの関係で png は使えなかったような気がするそれとも透過でなければ使えたのだろうかいまとなってはどうしようもない色ムラは回転数のせいもある一度に大量に刷ればもっとましな品質が得られるのは経験上わかっている裏表紙は意図した以上にホワイトアルバム感が高かった電子版はストアで見劣りするがペイパーバック版は総じて満足感が得られた本としての質感も上々だペイパーバックに最適化されたデザインだったモノとしての完成度が思ったより高く所有欲が満たされる価格も本として商品として適正だと思うこれ以下の値付けはしたくなかったただし名刺代わりに配るには高すぎる著者割引を使えば多少は安く買えるし出版者による購入は表示に影響を及ぼさないのも経験上わかってはいるなのに関連商品にナボコフが表示されたらいいなとかランキングを少しでも上げたいなどと欲をかいてしまう偉大なるモール様にとってはいい鴨だとりあえず初刷りの一冊は国会図書館に納本する義務のようなものだ外部ストアでも買えるようにした自分では楽天で買うことがないので追加料金の五千円をドブに棄てるようなものだ出版情報を JPRO に登録した二部追加注文した一部はどこかに献本するつもりだ一部は若い同僚にあげる約束をした正確にいえばほとんど強引にほしいですといわせた心からすまなく思い恥じている献本やら納本やらの雑用を片づければ晴れてぼっちの帝国から解放されるなぜかまだ電子版と結びつけられなかったり裏表紙が商品ページに表示されなかったりと不具合があるがいずれ解消されるだろうこれだけのものを書いたのにだれにも評価されないのは奇妙なことだしかしそのことをいつまでも嘆くつもりはない次へ行くそもそも読まれるために出版するのではない自分にとってそうすることが重要だからやるだけだ


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。