D.I.Y.出版日誌

連載第225回: 戻して進む

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2019.
11.03Sun

戻して進む

飽きたので普通の書き方に戻す先日の妄想を考え直した必要なのはストアのディスカバラビリティ欠如を補う作風のマッピングだけだというか作風や影響関係や視点の共通性でつながる読書の文脈だけだ品質向上の手立てがほしければ大手企業を利用すればいい偉大なる先達の佐藤亜紀氏は大手出版社から引き上げた原稿を自力で電子化されている一部プリントオンデマンドもあり)。 企業の資金による校正・校閲を経たテキストをアップロードされておられるわけだ企業は投下資本が充分に回収されたと判断して許諾しているのだろう自動化と書いたがよく考えれば省力化だった最低限の手間で済ますだけで実際にはキュレーションは人力だ不特定多数に委ねるのはふたつの観点から愚かしく非現実的だったまず参加者がいなければ機能しない逆に増えればセキュリティの維持が困難になるそもそも他人を関わらせると精度が担保できないやはりすべてを制御できる規模でなければならないそう考えるとやるべきは現行の本の網の精度向上だ新たなタームないしカスタムフィールドの付与で指標を追加し複数要素の重複によって表示を決めるようにしなければならないいつかは解決法を見出すだろう急ぐ必要はない優先すべきは小説だぼっちの帝国ペイパーバック版は数日後にはストアに並ぶ実物を取り寄せて問題ないのを確認したらストアと Google と Facebook に広告を出す今回はそれほど金を投じるつもりはない反応が薄ければすぐに停止するその後今月いっぱいは読みたい本を読む来月はGONZOの参考になりそうな本を読む来年の頭にはプロットを考えて二月には書きはじめる書くことに対するアプローチを五年以内に変えたいと考えているそう考えた理由のひとつはストアへの適性のなさでもうひとつは書くものがある程度の規模になると企業の資本が入らねばどうにもならないと痛感したことだ三百枚なら校正・校閲なしでもごまかせる六百枚ではそうもいかないそしてこれからは八百枚や千二百枚を書いていかねばならない。 『ぼっちの帝国の連載はプロとしての仕事ができるかどうかの個人的な試験だった単純に書く技能だけでいえば問題ないようだ企業から仕事を請けるには当然それだけでは足りないだからこそ別の道を模索してきたがそろそろ残りの人生も考えねばならぬ歳だ生きるための最低限の自己肯定感を得るにはこれまでのやり方ではだめだかといって別にいまさらプロを目指すとかそんな話ではないまだ答えは見えていない五年後には違う自分になっていたいというだけだ


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。