D.I.Y.出版日誌

連載第220回: ディスカバラビリティと関連付け

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2019.
10.20Sun

ディスカバラビリティと関連付け

知人が買ってくれたので 99 円で売る理由がなくなった200 円は断られたなんていいひとなんだ拝んだインターネットは他人を貶めることに特化された場だそこで本を売るとろくなことにならない実際に知っていて信用できる相手に名刺代わりに配るのがいい配られた相手は内心迷惑に感じるかもしれないが構わないいちど受けとってもらえただけで満足だ今後は印刷版を作成する。 『ぼっちの帝国に片をつけたら買ったきり一年近く放置していたJRをさっさと読み終える序盤を読んでから半年以上経ったので最初から読みなおす必要があるそれから若い頃に読んで感銘を受けた本をひたすら読み返す予定だ。 『オードトワレの戸田 鳥さんに小林信彦の書評を頼んだ予想を遙かに上まわる素敵な文章が届いた読めてよかったまだの方は読んだほうがいいよさしあたり関連付けはスラップスティック!を選んだのちに自分で実際に読んでから微調整するつもりではいる小林信彦に関心のある読者が検索経由であの書評を読む書評家の紹介文をクリックすれば戸田さんの作品が表示される現状はオードトワレきゅーのつれづれのみだがそれらをクリックした客がもしかしたら購入に至るかもしれないあるいは似ている本に表示された本をクリックすればそこからも新たな本との出逢いが得られる関連付けがされてさえいればここにも戸田さんの本が表示される特集スラップスティック!に彼女の本は関連づけられていないので実際にはそこから読まれることはないが喩えていうならばそのような導線が生じるわけだそうした出逢いの機会をいくつかの項目をちょいちょいと入力することで簡単に自動生成できる日記をいくら書いても石をひっくりかえして醜い虫を観察するような輩が群がってくるばかりだが小林信彦作品の書評にはまっとうなニーズがある本好きが検索経由で訪れそこから関心を持ってくれる人格 OverDrive は Facebook ページでいいねを募る広告をこれまでに何度か出したそこから知ってくれたお客様方はいずれも本好きだそのようにして少しずつ客筋を改善していこうと考えている戸田さんはテストケースで彼女のような筋のいい書き手にもっと参加してもらえれば参加者にとって客筋の改善ディスカバラビリティの向上ブランディングといいことづくめなのだがあいにく参加を募る金がない無償で参加してもらっても充分に旨味は得られる理屈だが極めて長期的な視点に立たねば利点は感じられないので公然と募集もできないそもそも他人と関わる余力もないとりあえずはこの調子でごく小規模にやっていこうと考えているというかここまで書いてもおれが何をやっているか理解できるひとはいないだろうな。 『ぼっちの帝国は当初考えていたより百円高い 480 円にする250 円で売っている既刊の倍以上の分量があるし99 円でも 480 円でもだれも読まないのは同じだしどうせなら高く値付けをしたほうが商品ページの見栄えがいい自己満足を愉しまねば


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。