D.I.Y.出版日誌

連載第222回: ディスカバラビリティと関連付け

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2019.
10.20Sun

ディスカバラビリティと関連付け

知人が買ってくれたので99円で売る理由がなくなった。200円は断られた。なんていいひとなんだ。拝んだ。インターネットは他人を貶めることに特化された場だ。そこで本を売るとろくなことにならない。実際に知っていて信用できる相手に名刺代わりに配るのがいい。配られた相手は内心、迷惑に感じるかもしれないが構わない。いちど受けとってもらえただけで満足だ。今後は印刷版を作成する。『ぼっちの帝国』に片をつけたら買ったきり一年近く放置していた『JR』をさっさと読み終える。序盤を読んでから半年以上経ったので最初から読みなおす必要がある。それから若い頃に読んで感銘を受けた本をひたすら読み返す予定だ。『オードトワレ』の戸田 鳥さんに小林信彦の書評を頼んだ。予想を遙かに上まわる素敵な文章が届いた。読めてよかった。まだの方は読んだほうがいいよ。さしあたり関連付けは『スラップスティック!』を選んだ。のちに自分で実際に読んでから微調整するつもりではいる。小林信彦に関心のある読者が検索経由であの書評を読む。書評家の紹介文をクリックすれば戸田さんの作品が表示される。現状は『オードトワレ』と『きゅーのつれづれ』のみだが、それらをクリックした客がもしかしたら購入に至るかもしれない。あるいは「似ている本」に表示された本をクリックすればそこからも新たな本との出逢いが得られる。関連付けがされてさえいればここにも戸田さんの本が表示される。特集『スラップスティック!』に彼女の本は関連づけられていないので、実際にはそこから読まれることはないが、喩えていうならばそのような導線が生じるわけだ。そうした出逢いの機会をいくつかの項目をちょいちょいと入力することで簡単に自動生成できる。日記をいくら書いても石をひっくりかえして醜い虫を観察するような輩が群がってくるばかりだが、小林信彦作品の書評にはまっとうなニーズがある。本好きが検索経由で訪れ、そこから関心を持ってくれる。人格OverDriveはFacebookページでいいねを募る広告をこれまでに何度か出した。そこから知ってくれたお客様方はいずれも本好きだ。そのようにして少しずつ客筋を改善していこうと考えている。戸田さんはテストケースで、彼女のような筋のいい書き手にもっと参加してもらえれば参加者にとって、客筋の改善、ディスカバラビリティの向上、ブランディングといいことづくめなのだがあいにく参加を募る金がない。無償で参加してもらっても充分に旨味は得られる理屈だが、極めて長期的な視点に立たねば利点は感じられないので公然と募集もできない。そもそも他人と関わる余力もない。とりあえずはこの調子でごく小規模にやっていこうと考えている。というかここまで書いてもおれが何をやっているか理解できるひとはいないだろうな。『ぼっちの帝国』は当初考えていたより百円高い480円にする。250円で売っている既刊の倍以上の分量があるし、99円でも480円でもだれも読まないのは同じだし、どうせなら高く値付けをしたほうが商品ページの見栄えがいい。自己満足を愉しまねば。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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