D.I.Y.出版日誌

連載第226回: さらに進捗

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2019.
10.11Fri

さらに進捗

前回のつづき泥酔していたせいかうっかり OS を更新しMedibangPaint が起動と同時に落ちるようになったやむを得ず iPhone に Medibang をインストールし PNG でレイヤーごとに書きだし Gimp で仕上げた本当は人物が手にしている本にぼやけた絵を描くつもりだったのだがおれの環境では Gimp がまともに動作しないので断念したMedibang がいかに使いやすかったか思い知らされるこの際フルセットの adobe を導入すべきかとも考えた現状は印刷版のために inDesign だけ使っている在りし日の Medibang 唯一の難点は自前のフォントではカーニングが使えないことだった今回は Pages で字詰めして PDF に書き出しプレビューで PNG に変換するというわけのわからない工程を経てどうにかしたプレビューは簡易画像編集アプリとしてとても優秀だちょっとした編集なら直感的かつ手軽にやれるしかしイラレが使えるようになればこんな苦労は要らないわけだ年に一度使うかどうかのために adobe 税を収めるべきか悩むいずれ自分の人生を精査して本当に必要なものだけに金を投じるようにしたいいまはまだあれこれ試す時期なので無駄な出費が生じるのはやむを得ない発達障害だし両親がきちがいだったので健常者が子供の頃に身につけることを四十すぎてから学ぼうとしている食べるもの身につけるもの道具他人との距離の取り方読むもの観るもの⋯⋯などなど。 『ぼっちの帝国はそうしたフィールドワークの成果物だ三年前は自分だけに閲覧できるように設定した Facebook を日記代わりに使っていたそれによれば構想は当時からあった。 「『ぼっちの帝国という中年男が集団生活する疑似家族ものというメモをちょうど三年前のきょう投稿している。 『ぼっちの帝国についてはそれよりも前から案があり当初はウェブマガジンのようなものにしようかとも考えていた発達障害のおっさんが人生を愉しむライフハック的な情報を集めたサイトだ作中で登場人物らがウェブサービスを起ち上げるのはその発想の名残だ結果として小説になったわけだがおれは人種として作家なのでそれで正解だった人種として作家というのは他人に説明してもわかってもらえるとは思わないが生まれながらにそういう人間がいるとおれは信じているプロになれるかどうかはまた別の話だそれは商売だどちらかといえば他人や社会とうまくやれる技能がそこには関わってくる商売にするには他人とうまくやること自体を愉しめたりうまくやれたりする技能が何よりも重要だそれは芸術とは必ずしも関係がない必ずしもというのは基本的には関係があるだろうとも思うからだわれわれが知ることのできる作家や作品はそのあたりをクリアした才能だけだからだふるい落とされた天才もおそらくは星の数ほどいるのだろうボタンを押すだけで AI が一回性の傑作を自動生成する時代になればそんなことは何の意味もなさなくなる星の数ほどある傑作だけがわれわれの触れ得る作品となるし同じものには二度と出逢えないし他人とも共有できない明け方の夢みたいに芸術はいずれそのようなものとなるとりあえず現在は店に売られている商品だけが世間に存在するものとして語られ、 「国民にとって気に入らない表現はあってはならないとされるわかりやすさだけが商品としてわれわれの目の前に並びその条件を満たさぬものは排除されつづける。 『ぼっちの帝国は排除される側の物語である着想のもとになった作品はこれまた星の数ほどあるがそのうちひとつである結婚できない男の続編を Gyao! で観たリンチのDUNEを観たホドロフスキーのように元気が出ればよかったのだがあいにくその逆だった他人の失敗を素直に喜べないのは作品の問題ではないからだこの国のエンターテインメント自体がもはやそのようなものになってしまったもとより日本人はものを考えるのを憎む長年そのように政治的に教育されてきたからだエンターテインメントには実のところ視点が案外重要なのだがその視点が致命的に欠けているというかこの国では視点を持つことが許されない獅子文六が国策に協力させられたとき軍人の態度があまりに軽かったので驚かされたという逸話があるひとびとがそのような社会を求めるのだ。 「わかりやすいとはそのようなことだ三木聡のドラマも続編をやっていてこれもひどかったおそらく若い視聴者のためだろうがこれはギャグなんですよという説明がくどいほど挟まれる逆にいえばたかだか十数年前の日本人はいまよりもまだしもものを考えていたのかもしれないこの国のエンターテインメントはそのようなことになってしまったプロにならなくてよかったと心から思うとりあえず装画はこんなもので妥協しようと考えている

ぼっちの帝国装画

追記:いろいろめんどくさくなったので結局出版したあしたには amazon に並ぶと思う

追記 2 :反映された


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。