D.I.Y.出版日誌

連載第210回: 何の感慨もない

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2019.
10.08Tue

何の感慨もない

先日ついに脱稿したのだがなんの感慨もなかった少し長くなるかと思ったがほぼ予定通り 640 枚ほどに収まった中途半端な分量だFacebook の過去投稿によれば四年前の同じ日に悪魔とドライヴを書きはじめていたあれよりはましなものが書けたような気もするがあれは大勢に見てもらってから出版したので多少は一般向けにできた今回は校正に金を投じるつもりでいた少なくとも二十万かかる書いているあいだはそれだけの価値があると信じていた書き上がってみればそんなわけはないおかしな夢から覚めたような心地がするFacebook には長いあいだご愛読ありがとうございましたと書いたが実際に最後まで読んでくれたのは HAL さんただひとりだ出版しても読むのはおれくらいだろうおれでさえ読まないかもしれない半年のあいだずっと取り組んできてさすがにうんざりした校正をどうするかはあとで考えるにしてたぶん誤字だらけのまま出版すると思う表紙画像の作成に取りかかったできれば他人に頼みたいがその相手もいないし金もないとりあえずロゴ作成と下書きをやった発想は悪くないがデッサンが狂っていてイライラするどうにもならないのでこれもこのまま完成させるつもりだそもそも絵など描けない上に発達障害のおれはペンタブが苦手だiPad の購入も検討したがいまのおれには贅沢品だあきらめただれも読まないどころか見知らぬ他人から馬鹿にされるだけの本になぜこれほどまでに労力をかけるのか書いているあいだは何も考えずに突っ走れるが書き終えると鬱に襲われる装画にしても見るからに下手くそだ嗤われるためにやっているようなものだとにかくさっさと片づけて忘れたい年内は本を読んで感想を書いて次の小説のためにプロットを構築しなければならないやることは多いがやったところでどれひとつ何の意味も成さない世の中には愛されるために生まれてくる子もいれば憎まれたり嗤われたりするために生まれてくる阿呆もいる不幸にして後者に属するがそうではあっても残りの人生を有意義に使わねばならない愉しむのだ下の画像は描きかけ何をやろうとしているか見ていただければおわかりいただけるかと思う明日はペンを入れる髪の毛をがんばる予定だ

かきかけ


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。