妄想中年日記

連載第208回: 近況

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2019.
09.03Tue

近況

あと六章。最後の章はあっさり終えるつもりだから55枚といったところか。どうにか今月中に書き終えられそうだ。電子版は来月には出してしまおうかと考えている。その後、校正を外注に出して改訂してから印刷版を出す。印刷版のみで出版することも考えたがその前に事故死してもつまらない。とりあえず表に出してランディングページを設置し、これまでの記事はすべてそこへ飛ばすようにする。同人やらアマチュアやらの文脈で読まれると困るので、今後は広告にせよ何にせよ印刷版を軸に展開するつもりでいる。電子書籍にしてもストアにしても客層がそぐわないからだ。美少女アニメもゲームも悪くないがそういう文脈で貶められるのはかなわない。印刷本の実物があれば少し違う層へ訴えることができる。これまではせっかく適切な層にリーチしても印刷版が弱かったために購入につながらなかった。CreateSpaceで作成した本はSEOこそしっかりしていてgoogle検索でもしっかり表示されるものの商品画像が裏表紙になったり紹介文に日本語が使えなかったりで訴求力がなかった。『逆さの月』は日本の仲介会社を使ったが作品そのものが弱かった。『ぼっちの帝国』はこれまでの本よりは売りやすいのではないかと期待している。いずれにせよ満たしたいのは自己顕示欲でも承認欲求でもない。大切なのは読書であって、一読者として読みたい本が読めるようになってほしい、書店や出版社がそのように変わってほしいというのが願いだ。人格OverDriveがやりたいのは読書の可能性を広げる試みだ。「本の網」による視点の提示、関連付けがあってこそ出版活動が意味を成す。出版物は網における無数の結節点のひとつでしかない。読書とはその網の目をたどることであり、それによる結節点との出逢いであり、新たな視点の獲得であって、そういうのを実現したい。読者の側に立たずして出版はあり得ない。読書や読者を疎外した出版ばかりが褒めそやされる現状は気持悪いなと思う。しかしまぁ、才能のないアマチュアでいつづけることがあたかもよいことであるかのように喧伝しさえすれば、それで商売になるひとたちがいるのだろうし、「ありのままのキミが素敵さ」と甘やかされたい素人も大満足なのだろう。他人が進んで騙されるのは自由だけれど、甘えを賞賛し舐め合うような場におれは関わりたくないし、本を読まない商売人に旨い汁を吸われたくもないし、読みたい本が読めなくなるような迷惑を被りたくもない。ストアの汚染とは隔絶された場所で新しいことをやりたい。そのために試行錯誤している。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『逆さの月』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。最新恋愛小説『ぼっちの帝国』連載中。
ぼっちの帝国