妄想中年日記

連載第207回: 進捗

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2019.
08.22Thu

進捗

530枚書いた。残すところあと十話、原稿用紙にして百枚。いちおう予定どおりの進捗だ。第三幕の手前から何度も書きなおしている。第42話は著作権の問題をクリアするために苦労を強いられたし、第43話に書くべき挿話を早まって第36話に書いてしまったせいで、ふたつを足して二で割るような作業を強いられたりした。おかげでそれらは最初の投稿時点と現在とで大幅に変わっており、読んでいただいた方を混乱させる結果となった。でもまぁ、いいんだ。どうせ自分のほかにはひとりしか読んでいない。九月末には書き上がる予定で、十月後半には四分冊にした電子版を毎週一冊ずつ刊行するつもりでいる。値付けは99円で三日ずつ無料キャンペーンをやる。こういう粗悪で醜い売り方は嫌いなのだがストアでは粗悪で醜いほうがコンバージョンするので試してみる価値はある。その後、十五万ほど支払って校正した統合版をまず印刷版として刊行する。380円の電子版は一週間後だ。何度も書いてきたことだけれどもアルファベット最初の文字からはじまる偉大なるモール様の電子書籍ストアの客層は極めて偏っていて、小説を読むだけの最低限の能力を持ち合わせないお客様が不自然に多い。アニメとゲームが好きな幼児性愛のおじさんばかりだ。そこからはずれたお客様のためにはストアはつくられていない。アニメもゲームも悪くないが価値観のすべてがそこにあっては小説は不当に扱われる。幼児性愛者に代表されるようなストアの文脈で裁かれないためにはその手の輩と関わりにならぬがよい。twitterの利用もほかのアマチュアと関わるのも百害あって一利なし。小説を読む能力のないお客様の変なレビューがつくだけだ。アニメにもゲームにも虐待にも嗜好がなく、ただ小説が好きなだけの読者に向けて書いているおれはストアに適性がない。ペドフィリアになってまで金を稼ごうとは思わないので別にそれで構わないが、いちおう本好きに見出される導線は用意しておきたい。そのため人格OverDriveでは「本の網」を設置している。読んだ本の感想と、おれの視点に基づいた関連本がそこに表示される。似たような読書傾向のひとが関心のある本を検索して訪れ、そこから関連本に出逢ったりするのが理想だ。アニメとゲームと性的虐待にしか関心のないお客様には理解できまいが、本は人づてならぬ本づてに読まれるものだ。一冊の本が書かれるに至った影響関係をたどったり、似たような読書傾向のひとが次に何を読むのか知りたくなったり、そういうひとが書いているものがどんなものか知りたくなったり、そういうのが読書なのだ。そのようにして読まれるための工夫を人格OverDriveには盛り込んであるのだけれど、残念ながら検索経由で訪れるお客様を自著に誘導するところまでは現状、あまりできていない。たとえば「人間失格 性的虐待」で検索して感想文を読みに来るお客様は多いのに、そこから感想文を書いた人間に関心を持ってもらったり、『逆さの月』へ誘導したりするのには現状は成功していない。「似ている本」の表示はランダムなので自著が表示されるとは限らないが、興味を持って「似ている本」の繋がりをたどってもらえれば、いつかは自著にも行き着くはずなのだ。むろん一度でそうした出逢いが発生するはずはない。長い期間の積み重ねで認知が高まるのを期待しているのだが、そのためには集客力を上げなければならず、集客力を上げるには、読んだ本について検索するといつも人格OverDriveがヒットして「このひとは自分とおなじ本をいつも先に読んでいる、いったいどんな人物だろう」と関心を持ってもらえるくらいに記事を増やさねばならず、そのためには当然、読書量を増やさねばならないが、残念ながら小説を書いていると読む方は致命的におろそかになる。出版で喰っているわけではないので自分しか買わなくとも問題はないが、いずれはどうにかしていきたい。その前にまず『ぼっちの帝国』を完成させねば。死後に神の前に立ったとき胸を張っておれはこれをやったといえるだけのものを書きたい。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『逆さの月』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。最新恋愛小説『ぼっちの帝国』連載中。
ぼっちの帝国