杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第200回: 途中経過

書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2019.
06.11Tue

途中経過

四ヶ月近くもかけてまん中まで書き終えたどうしてこうも書くのが遅いのだろう三幕構成でいえばようやくミッドポイント起承転結でいえば転じはじめたところだやることなすことうまくいく愉しい前半部が終わりこれから先は主人公は追い詰められていく危機に次ぐ危機はたして運命や如何今月は三連休を多くもらえたので第二幕後半のなかばまでは進めると思う現時点で 330枚弱だから書き上がれば 650枚程度にはなりそうだ予定よりもほんの少しだけ増えている今回はちゃんと書いているのでそれなりにちゃんとした本にしたい校正・校閲に金を出すことは腹をくくったがその先も考えねばならない装幀をどうするか流通をどうするかできれば書く以外のすべてを出版社に一任したいいわゆるひとり出版社に手当たり次第に原稿を送りつけることも考えただれかひとりくらいは気に入ってくれるのではないかしかしそんなことをされては相手も迷惑だろうしこちらも自費出版詐欺の被害にあいかねない自費出版をしたいわけではなく出版にともなう苦手分野をアウトソースしたいだけだ人格OverDrive は出版レーベルであっても法人ではないので出版社は名乗れない法人でなければ取次には相手にしてもらえないZINE やリトルプレスに理解のある書店に直接営業して置いてもらうことも夢想したそんな社会的行動力があれば小説なんて書かないいつかは法人にとも思うが金もないし法律の知識もないとりあえず現状はプリントオンデマンドで自己満足するしかない発達障害でなければもう少しうまく立ちまわれたろうかとも思うが健常者ならそもそも小説など書かないそういえばヤマシタトモコは異国日記で発達障害を明確に意識して描いているそうだみんな似たようなことをやってるんだなと思ったりした九月中には書き上げる予定だがそこから先が悩ましいどのみちだれも読まないものにこれだけ金や労力を投じるのは愚かしいとわかってはいるしかしほかにどうしようもない病気なのだ愛されて生まれてきた人間は読まれて賞賛されて金が降りそそぐ一方生涯に一度としてだれからも愛されない人間はどれだけのものを書いてもだれにも相手にされないかせいぜい蔑まれるだけでおれはその事実を受け入れねばならない。 『ぼっちの帝国は乱暴にひと言でいってしまえば発達障害とジェンダーについての小説なんだと思う書き上げることがいまのおれにとって重要で成し遂げたから何かいいことがあるわけではないがやらなければ何か人生にとって重要なものが損なわれるような気がしている


(1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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