D.I.Y.出版日誌

連載第196回: 出版の技法

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2019.
06.02Sun

出版の技法

POD のやりかたを詳細に教えてくれといわれたので書く人格 OverDrive ではその話題はずいぶん前に終わりました自分で調べてください以上あなたの出版はあなたにしか見つけられない他人に教わるものではないだれにも教えられない人格 OverDrive の出版について質問されたのであれば話せることは多少あったかもしれない他人がどうすべきかなんて尋ねられても知らんがなとしかいいようがないこういう質問がくるということはアマチュアのあいだで POD が流行っているのだろうCreateSpace が米 KDP に吸収されてから日本では業者向けの AmazonPOD を庶民のみなさんに特別に使わせてあげますよというきわめて不自由かつ上から目線のぼったくりサービスしか使えなくなったBookBaby のような海外のサービスとは残念ながら水準がまるで違う日本のユーザは舐められている選択肢がないのでその業者を使うしかなかったが素人のゴミが増えるようならもう見限るべき時期かもしれないもとよりストアは読書家に最適化されてはいないその逆だインターネットのサービスとはそういうものだ低次元の貶め合いでいかに得点を稼ぐかのゲームだ現実の社会がそういうものであるからそれはしょうがない読書はそういう世界からの逃避であってほしいもちろんおれの読書がそうあってほしいだけで他人に強制するものではない世間の健常者たちは馴れ合ったり貶め合ったりするために読書するのだろうそれはそれで構わないだれだって好きなように生きる権利がある願わくばおれの権利を奪わないでほしいAmazonPOD は偉大なる天下の大モール様で扱ってくださるというありがたきお慈悲を別にすればたいした利点はない他人に説明しやすいし自分でも買いやすいというだけの話だJAN コードすら記載できないCreateSpace ではむりやり記載できたやる価値がないのですぐにやめたけれど)。 Amazon で売ることを考えなければ製本直送がよさそうに思えるが試していないいっそ在庫と心中する覚悟で千部くらい印刷屋に頼んで刷ってしまうのも手だと考えていると書いてから気づいたがそんな大金は持ち合わせていないもっと簡単にいかないものですかねぇMartin Newell や R. Stevie MooreDaniel Johnston といった音楽家が自宅でカセットテープをコピーしてDaniel Johnston はダビングという方法を知らず受注のたびにいちいち吹き込んだそうだが雑誌の文通欄みたいなところで通信販売していたように自宅で印刷して製本してウェブサイトで通販するようなわけにはいかないものかそのための簡単な製本キットが売られていたらいますぐにでもそうするどのみち人格 OverDrive の本はインターネット向きではない他人を貶めて得点を稼ぐのに使えるような安易なコンテンツではないそのためモールに出してもそこでの文脈で好意的に評価されることはあり得ない毀損されるだけだ客層が違いすぎるというか人格 OverDrive にとっては悪すぎる一般にモールには集客力があり独自ショップにはないことになっているし実際そうなのだけれど客層が違いすぎればその差にたいした意味はないむしろ無駄金をじゃぶじゃぶ投じて独自ショップを宣伝したほうが多少の部数は捌けるし多少はましな文脈で読まれるいずれにせよ人格 OverDrive は最終的に出版社の機能を目指していて次は校正・校閲にちゃんと金を投じることを考えている装幀もそろそろ考えはじめたい外注はできればしたいが頼みたい他人はいない。 『逆さの月は自力でやって失敗した小学校の虫歯予防図画コンクールのようになったおかげで売れ行きは散々だった次はもっとましな絵を描きたいしそのための努力をしたい


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。