D.I.Y.出版日誌

連載第195回: 近況報告

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2019.
06.01Sat

近況報告

五月中に前半を書き上げられるかと思ったが細菌性腸炎のために断念した医者に点滴を打ってもらい抗生剤をもらってようやく恢復したまだ本調子ではないが一週間ぶりに飲酒した随筆と小説では使う筋肉が異なると開高健も書いているが小説に注力していたので日記は丸ひと月放置していたおかげで書き方を忘れた小説こそが自分には重要で日記は惰性で更新している小説の書き方は十五年ぶりにようやく取り戻せた書き上げたら校正と簡単な校閲を外注するつもりでいるそもそもこれまでは誤字も言葉の誤りも気にしたことはない近年では大手出版社もそうしたことにかける予算がないらしく一冊の小説に数カ所の誤字を見つけるほうが普通だしかしオンデマンドを用いた独立出版でそれをやれば侮られるだけなので今回はちゃんとやろうと考えている電子出版はあとまわしにするつもりだ他人に読んでもらうのに手に取れる現物があるのは大きい名刺代わりに手渡すこともできる今回は名刺代わりに気軽に配れる分量ではないけれども校正・校閲に金を出してオンデマンドで印刷版を出し広告も打つつもりでいるそんな真似をしたところで自己満足にすらならず金をドブに棄てるようなものだとはわかっている金や社会的評価を得るつもりならインターネットで親しまれる種類のコンテンツを量産するほうがいい量産は努力の問題だけれどもインターネットで受け入れられる条件は普通の家庭に生まれ育って普通の人生を生きている普通の人だけが手にすることのできる生まれながらに他人から受け入れられる才能ギフトなのであってそれを持たぬ身には憧れたところで詮のないことだインターネットに最適化された才能というのは要するに安易に他人を貶める競争のことだそこで巧く立ちまわれるのがインターネットでは正義となる人格 OverDrive の刊行物はもとよりインターネット向きではないだれからも愛されたことのない人間が他人に受け入れられる仕事をやれるはずがないそういうことが小器用にできるならもっとましな人生を歩んでいるしそんなことがやれる人間は大勢いるのでわざわざ自分がやるまでもない他人からの評価がなければ成立しないものはつくる意味がない自分にしかやれないこと自分でいいと信じることをやるしかないとりあえずはぼっちの帝国を書き上げて一冊の本として手にするのを目標にしたい秋にはそれを成し遂げたい九月をめどに考えている年初の時点では六月中にぼっちを刊行して後半は女装男子と中年探偵の BL アクションGONZOに着手するつもりだったが年一冊が限度のようだ昨年買ったJ Rもまだ読めていない書いてもいいかなと考えていたことは山ほどあったがそんなことを書くくらいなら小説を書くか読むかしたほうがいいと思えて放置してきた結果どうでもよくなった本日はこの辺にしておくもっと読みたいとかこういうことを書いてほしいとか質問とかあればメールフォームからお便りください書くとはかぎらないけれど


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。