妄想中年日記

連載第197回: 近況報告

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2019.
06.01Sat

近況報告

五月中に前半を書き上げられるかと思ったが細菌性腸炎のために断念した。医者に点滴を打ってもらい抗生剤をもらってようやく恢復した。まだ本調子ではないが一週間ぶりに飲酒した。随筆と小説では使う筋肉が異なると開高健も書いているが小説に注力していたので日記は丸ひと月放置していた。おかげで書き方を忘れた。小説こそが自分には重要で日記は惰性で更新している。小説の書き方は十五年ぶりにようやく取り戻せた。書き上げたら校正と簡単な校閲を外注するつもりでいる。そもそもこれまでは誤字も言葉の誤りも気にしたことはない。近年では大手出版社もそうしたことにかける予算がないらしく一冊の小説に数カ所の誤字を見つけるほうが普通だ。しかしオンデマンドを用いた独立出版でそれをやれば侮られるだけなので今回はちゃんとやろうと考えている。電子出版はあとまわしにするつもりだ。他人に読んでもらうのに手に取れる現物があるのは大きい。名刺代わりに手渡すこともできる。今回は名刺代わりに気軽に配れる分量ではないけれども。校正・校閲に金を出してオンデマンドで印刷版を出し、広告も打つつもりでいる。そんな真似をしたところで自己満足にすらならず金をドブに棄てるようなものだとはわかっている。金や社会的評価を得るつもりならインターネットで親しまれる種類のコンテンツを量産するほうがいい。量産は努力の問題だけれどもインターネットで受け入れられる条件は、普通の家庭に生まれ育って普通の人生を生きている普通の人だけが手にすることのできる、生まれながらに他人から受け入れられる才能ギフトなのであって、それを持たぬ身には憧れたところで詮のないことだ。インターネットに最適化された才能というのは要するに安易に他人を貶める競争のことだ。そこで巧く立ちまわれるのがインターネットでは正義となる。人格OverDriveの刊行物はもとよりインターネット向きではない。だれからも愛されたことのない人間が他人に受け入れられる仕事をやれるはずがない。そういうことが小器用にできるならもっとましな人生を歩んでいるし、そんなことがやれる人間は大勢いるのでわざわざ自分がやるまでもない。他人からの評価がなければ成立しないものはつくる意味がない。自分にしかやれないこと、自分でいいと信じることをやるしかない。とりあえずは『ぼっちの帝国』を書き上げて一冊の本として手にするのを目標にしたい。秋にはそれを成し遂げたい。九月をめどに考えている。年初の時点では六月中に『ぼっち』を刊行して後半は女装男子と中年探偵のBLアクション『GONZO』に着手するつもりだったが年一冊が限度のようだ。昨年買った『J R』もまだ読めていない。書いてもいいかなと考えていたことは山ほどあったがそんなことを書くくらいなら小説を書くか読むかしたほうがいいと思えて放置してきた。結果どうでもよくなった。本日はこの辺にしておく。もっと読みたいとかこういうことを書いてほしいとか質問とかあればメールフォームからお便りください。書くとはかぎらないけれど。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的な作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『逆さの月』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。最新恋愛小説『ぼっちの帝国』連載中。
ぼっちの帝国