妄想中年日記

連載第193回: パブー閉店と特定商取引法とpagesとPub DB

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2019.
04.05Fri

パブー閉店と特定商取引法とpagesとPub DB

書いて出版する理由は向上する努力を自分に証明するためだ。社会不適合者なのでソーシャルなインターネットと相性が極めて悪い。仕事の価値と読まれるかどうかはいっさい関わりがない。書いたものがどこかに残る安心感と充実感のためにサイトを利用している。きのう『ぼっちの帝国』を更新した。ただのひとりにも読まれなかった。そんなものだ。全力を尽くす動機は薄れた。ペースが落ちるのはやむを得ない。六月までに書き上げるつもりだったが年内がいいところだ。どのみち存在しないも同然の本であれば出版が遅れても変わりはない。twitterアカウントをつくるべきかまだ悩んでいる。あれはソーシャルな能力のゲームであってゲームを与えられずに育った社会不適合者は悪意の標的にされるだけだ。どう考えてもサイトの閲覧機会が増える可能性はない。日記を更新すると五人ほどに読まれるがその五人もどういうつもりで読むのかわからない。貶める材料を探して監視するような連中は追い払った。しかし本当に関心があって訪れるのであれば小説も読まれるはずだ。他人の考えはわからない。当然だ。彼らが何をどうしようが知ったことではない。出版は自分のためにやることだ。独立出版レーベル人格OverDriveは2010年の6月にepub2で『Pの刺激』などいくつかの本を出版した。ウェブサイトの設立は12月だ。それからさまざまな経験をしたが悪意以外の関心をだれからも持たれない。現在は出版に伴うあらゆる機能をアルファベット最初の文字からはじまる偉大なるモール様に依存している。それが健全だとは思わない。そもそも社会不適合者なのでソーシャルでなければ存在を許されない場はそぐわない。ゆくゆくはウェブサイトに販売機能を持たせて完全に独自ショップとして運用するつもりでいる。いますぐやらないのは個人情報や金の責任を負いかねるからだ。やるとしても無料でepubを配る方向になりそうな気がする。プライスマッチを申請した出版者はだれでも知っていることだが偉大なるモール様において著者・出版者は事業主体ではない。価格を決める権利もそれ以前に店に商品を並べる権利もない。彼らのメールに明記されていることだ。こちらが望む価格での販売はもちろん、そもそも店に並べてもらえるかどうかも決定権は店側にある。彼らには彼らが売りたいと思う商品を売りたいと思う価格で売る権利がある。皮肉でもなんでもなく当然のことだ。アマチュアの本が品質を満たさないという理由で、あるいは詐欺の疑いがあるという理由で販売中止になることがある。あるいは特に理由もなく店から消えることもある。理不尽なことは何もない。われわれにも別の場所に商品を持っていく権利や独自ショップで売る権利がある。出版の自主性という観点から本来は後者が望ましい。しかし独自ショップはよほど世渡りのゲームに秀でていないかぎり成立せず、モールにおいてさえ適応できず無に等しいのであれば得られるものはなおさらないし、金ばかりかかる上に伴う責任があまりに重い。一冊の本にはさまざまな責任が伴うのでかつては企業としての出版社に意義があった。著者を護ることも販促も彼らの役割だった。現在は厳しい時代なのでかつてほど熱心に役割を担ってくれるのか怪しい。さまざまな分野で著者の自己責任が問われるようになりつつある。出版企業の責任とは次元が異なるが人格OverDriveと同じ2010年にサービス開始したパブーがそうだった。epub2のまま時代の波に乗り遅れ、身売りを繰り返すうちに体力を失ったのだろう、果たすべき責任を放棄し著者に押しつけようとして破綻した。そんな動きがあった時点で……といいたいところだがnoteなど最初からうちは場所を貸しているだけだという姿勢だ。ソーシャルに最適化された人格ならそんな場でもうまく渡っていけるのだろう。他人がどう考えるかは知らないが少なくとも人格OverDriveは事業主体であることを志向する、いまはそうではないが目指す理念としては。氏名や住所を公開することに抵抗のある著者もいるようだが出版を行う以上、責任に伴うそうした事柄からは逃れられない。無名人でありながら書いて出版しているというただそれだけのことで粘着されたり陰で恫喝されたり匿名掲示板に殺害予告をされたりするもので(成功した著名人はそもそもそんな危険が少ない上に企業や支持者に護られていたりする)、にもかかわらずISBNなど取得して出版しているのはわれながら度を超した酔狂だと思うがほかに方法はない。いいかえればその覚悟がなければ出版などできない。というか実際には月額数千円で住所を借りるなど抜け道はあるのだが面倒なのでやっていない。電話番号だけはアプリで米国のを取得した。一度実際にかかってきて驚いたことがある。出なかったのでだれだったのかはわからない。そういえば書誌データベースの検索サイトが以前から予告されていたように新装開店していた。『逆さの月』の登録がなぜか洩れていたので試した。登録できるはずの項目の多くがグレーアウトされたまま使えない。たとえば著者紹介文や書影などだ。アルファベット最初の文字からはじまる偉大なるモール様への依存から脱するには書誌情報の代替apiが必要なのだがこれでは使いものになるまい。「電子版あり」のフラグが表示されるという噂も聞いたが試したかぎりではそんな事実もない。やはり小説と違って日記は楽に書ける。なんの手間も苦労も要らない。書くのはともかくせめて出版の手間だけでも減らしたい。Pagesが偉大なるモール様に使えればよかったのだが何をどうしてもプレビューすると横書きになる。いくらぐぐってもAppleを礼賛する信者ばかりで役に立つ情報はヒットしない。epubがどうという以前に棒引きすらまともに表示できないアプリで喜んでいる信者が薄気味悪く感じられる。「Apple Booksに公開」なんてボタンができていたから(以前はなかったような気がする)自社モールのほうは簡単になったのだろうが、しかし唯一にして絶対なるモール様に奉納できないのであれば、そんな本は存在しないも同然だ。少なくとも現状の人格OverDriveにとってはそうなのであってまだ解決法は見いだせていない。何かいい方法があればお問合せフォームでご教示いただきたい。最大五人しか読まない記事でそんなことを訴えてどうするとも思うがtwitterアカウントなら完全なゼロなのでそれよりはましだ。思ったより長くなったので当分は日記は更新しない。結局小説は書かなかった。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的な作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『逆さの月』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。最新恋愛小説『ぼっちの帝国』連載中。
ぼっちの帝国