D.I.Y.出版日誌

連載第191回: パブー閉店と特定商取引法とpagesとPub DB

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2019.
04.05Fri

パブー閉店と特定商取引法とpagesとPub DB

書いて出版する理由は向上する努力を自分に証明するためだ社会不適合者なのでソーシャルなインターネットと相性が極めて悪い仕事の価値と読まれるかどうかはいっさい関わりがない書いたものがどこかに残る安心感と充実感のためにサイトを利用しているきのうぼっちの帝国を更新したただのひとりにも読まれなかったそんなものだ全力を尽くす動機は薄れたペースが落ちるのはやむを得ない六月までに書き上げるつもりだったが年内がいいところだどのみち存在しないも同然の本であれば出版が遅れても変わりはないtwitter アカウントをつくるべきかまだ悩んでいるあれはソーシャルな能力のゲームであってゲームを与えられずに育った社会不適合者は悪意の標的にされるだけだどう考えてもサイトの閲覧機会が増える可能性はない日記を更新すると五人ほどに読まれるがその五人もどういうつもりで読むのかわからない貶める材料を探して監視するような連中は追い払ったしかし本当に関心があって訪れるのであれば小説も読まれるはずだ他人の考えはわからない当然だ彼らが何をどうしようが知ったことではない出版は自分のためにやることだ独立出版レーベル人格 OverDrive は 2010 年の 6 月に epub2 でPの刺激などいくつかの本を出版したウェブサイトの設立は 12 月だそれからさまざまな経験をしたが悪意以外の関心をだれからも持たれない現在は出版に伴うあらゆる機能をアルファベット最初の文字からはじまる偉大なるモール様に依存しているそれが健全だとは思わないそもそも社会不適合者なのでソーシャルでなければ存在を許されない場はそぐわないゆくゆくはウェブサイトに販売機能を持たせて完全に独自ショップとして運用するつもりでいるいますぐやらないのは個人情報や金の責任を負いかねるからだやるとしても無料で epub を配る方向になりそうな気がするプライスマッチを申請した出版者はだれでも知っていることだが偉大なるモール様において著者・出版者は事業主体ではない価格を決める権利もそれ以前に店に商品を並べる権利もない彼らのメールに明記されていることだこちらが望む価格での販売はもちろんそもそも店に並べてもらえるかどうかも決定権は店側にある彼らには彼らが売りたいと思う商品を売りたいと思う価格で売る権利がある皮肉でもなんでもなく当然のことだアマチュアの本が品質を満たさないという理由であるいは詐欺の疑いがあるという理由で販売中止になることがあるあるいは特に理由もなく店から消えることもある理不尽なことは何もないわれわれにも別の場所に商品を持っていく権利や独自ショップで売る権利がある出版の自主性という観点から本来は後者が望ましいしかし独自ショップはよほど世渡りのゲームに秀でていないかぎり成立せずモールにおいてさえ適応できず無に等しいのであれば得られるものはなおさらないし金ばかりかかる上に伴う責任があまりに重い一冊の本にはさまざまな責任が伴うのでかつては企業としての出版社に意義があった著者を護ることも販促も彼らの役割だった現在は厳しい時代なのでかつてほど熱心に役割を担ってくれるのか怪しいさまざまな分野で著者の自己責任が問われるようになりつつある出版企業の責任とは次元が異なるが人格 OverDrive と同じ 2010 年にサービス開始したパブーがそうだったepub2 のまま時代の波に乗り遅れ身売りを繰り返すうちに体力を失ったのだろう果たすべき責任を放棄し著者に押しつけようとして破綻したそんな動きがあった時点で⋯⋯といいたいところだが note など最初からうちは場所を貸しているだけだという姿勢だソーシャルに最適化された人格ならそんな場でもうまく渡っていけるのだろう他人がどう考えるかは知らないが少なくとも人格 OverDrive は事業主体であることを志向するいまはそうではないが目指す理念としては氏名や住所を公開することに抵抗のある著者もいるようだが出版を行う以上責任に伴うそうした事柄からは逃れられない無名人でありながら書いて出版しているというただそれだけのことで粘着されたり陰で恫喝されたり匿名掲示板に殺害予告をされたりするもので成功した著名人はそもそもそんな危険が少ない上に企業や支持者に護られていたりする)、 にもかかわらず ISBN など取得して出版しているのはわれながら度を超した酔狂だと思うがほかに方法はないいいかえればその覚悟がなければ出版などできないというか実際には月額数千円で住所を借りるなど抜け道はあるのだが面倒なのでやっていない電話番号だけはアプリで米国のを取得した一度実際にかかってきて驚いたことがある出なかったのでだれだったのかはわからないそういえば書誌データベースの検索サイトが以前から予告されていたように新装開店していた。 『逆さの月の登録がなぜか洩れていたので試した登録できるはずの項目の多くがグレーアウトされたまま使えないたとえば著者紹介文や書影などだアルファベット最初の文字からはじまる偉大なるモール様への依存から脱するには書誌情報の代替 api が必要なのだがこれでは使いものになるまい。 「電子版ありのフラグが表示されるという噂も聞いたが試したかぎりではそんな事実もないやはり小説と違って日記は楽に書けるなんの手間も苦労も要らない書くのはともかくせめて出版の手間だけでも減らしたいPages が偉大なるモール様に使えればよかったのだが何をどうしてもプレビューすると横書きになるいくらぐぐっても Apple を礼賛する信者ばかりで役に立つ情報はヒットしないepub がどうという以前に棒引きすらまともに表示できないアプリで喜んでいる信者が薄気味悪く感じられる。 「Apple Books に公開なんてボタンができていたから以前はなかったような気がする自社モールのほうは簡単になったのだろうがしかし唯一にして絶対なるモール様に奉納できないのであればそんな本は存在しないも同然だ少なくとも現状の人格 OverDrive にとってはそうなのであってまだ解決法は見いだせていない何かいい方法があればお問合せフォームでご教示いただきたい最大五人しか読まない記事でそんなことを訴えてどうするとも思うが twitter アカウントなら完全なゼロなのでそれよりはましだ思ったより長くなったので当分は日記は更新しない結局小説は書かなかった


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。