杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第191回: ほぼ五分の一

書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2019.
03.28Thu

ほぼ五分の一

書いているときは他人の本を読めないもう二ヶ月ものあいだ何も読んでいない音楽も新しいものは聴けない十代の頃からさんざん親しんできた音楽ばかり聴いている。 『ぼっちの帝国にはその影響が反映されているたとえば章の題名だあるほうが目次で見栄えがするので無理につけている単行本にまとめる際には変えるつもりだ便宜的につけているだけなので意味はないたまたまそのとき聴いていた音楽からとったものが多い初回だけ多少は考えてつけた。 『女には向かない職業のもじりだ確かいしいひさいちも同じ駄洒落を使っていたように思う第2回は初期の Beatles を聴きながら書いたジョージがインタビューで好きな食べ物を訊かれ深く考えずにジェリビーンズと適当に答えたらライヴで客席からジェリビーンズが降りそそいだという逸話からつけた第3回は Bob Dylan を聴いていた彼の音楽はBringing It All Back HomeからBlonde on Blondeまでが好きであとは関心がない人格OverDrive では英数字の記事名であればそれがそのまま URL になる日本語の記事名を URL にすることもできるのだが文字化けしたり共有のリンクがうまく生成されなかったりするので英数字だけにしている第3回から英数字の章が増えたのはアクセス解析でどの記事が読まれたのか見分けやすいからだ第4回と第5回は Suzanne Vega だ別に彼女のファンではないのだがおれが十代の頃 Mitchell Froom と Tchad Blake という二人組プロデューサーが人気でその音はいかにも 90年代という感じがしたそのことをなんとなく思い出してつけた次の変な男というのは変な男が登場する回だからで音楽は関係ない第78回は母親が登場するので Beatles と Stones の母親が出てくる唄からとった第9回はちょっと意味がある。 『ぼっちの帝国のネタ元にフィッシャー・キングドリーム・チームというふたつの映画があるこの二作は製作された年も近いのだがどういうわけか同じ曲が似たような意味合いで使われているそれがHit The Road Jack人格的に欠陥のある男が女から追い出される唄だこのネタは題名だけではなく本編でも使い回すつもりでいる第10回にもひねりはないそういう名前の人物が登場するだけだ第11回は Martin Newell の名盤から小説の内容とはまったく関係がない書いたときにたまたま聴き返していただけだ第14回まで書いたら第一部が終わる序破急の序にあたる部分だ起承転結の起といってもいいそこまで書いたら細切れにして職と男と家を失った 28歳女子がシェアハウス暮らしのおっさんに恋する話と題して定期刊行するつもりだつづきが知りたければサイトに読みに来いと奥付に書く最終話だけは細切れにしない読みたければ完全版ぼっちの帝国を買えとAmazon 専売でなければ利益が出ないのでサイトのほうはパスワードつき限定公開にするうまくやればこれまでより読まれるのではないかと思うのだがそれだけでは駄目だとも思うやはりソーシャルメディアの運用を考えたほうがいいのかもしれないその方面の適性がからきしなのでどうしたものか悩んでいるゲームに親しまずに育ったせいだプロを雇うのが一番なのだろうが当然そんな金はないそれをいえば外部の書き手から原稿を募ることもやりたいのだが金がなくてできないむかし泉谷しげるがロックンロールにゃ金かかると唄っていたが出版にもやはり当然のように金がかかるとりあえずいまやれることをやるしかない全 56話のうち 11話まで書いた書き上げれば原稿用紙換算で 630 程度にはなるのではないかと思うようやく若い頃の筆力を取り戻せたような気がする10枚ずつ小分けに書いて公開する仕組みがモチベーションを上げているサイトがなければ書けなかった。 『ぼっちの帝国の次に予定しているGONZOも同じ仕組みで書くつもりだがそちらは最初から限定公開にするかもしれない価値のあるものは書いているのにゲーム的な才覚他者に認められる才覚がないために損をしているどうにかして乗り越えなければ書いたものが無駄になるどうにかしなければどうにか


(1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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