妄想中年日記

連載第173回: いつだって読み込み中

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2019.
02.14Thu

いつだって読み込み中

困ったことになった。Amazon.jsが正常に動かない。奇妙なことに動作するページもある。いろいろ条件を変えて試したところ『逆さの月』単体なら動くようだ。ほかの商品を表示させると読み込み中の輪が永久に回転しつづける。単体でも動かないし組み合わせると『逆さの月』まで表示されなくなる。規約に変更があって売上のないサイトにはAmazon Product Advertising APIを利用させないことになったというが原因はそれしか思い当たらない。『逆さの月』だけお目こぼしにあずかる理由は依然として不明だが現実にそうなのだから仕方ない。やはりAmazon謹製のプラグインに乗り換えるべき時期かもしれない。それならAPIの制限はないらしい。Amazon.jsは通常の利用法のほかに価格と出版社の表示にも使っている。技術的には書影の表示にも使えるがアイキャッチ登録が規約違反になるので諦めた。紹介文は権利の問題でAmazonからは取得できない。どうしてもやりたければGoogleから取得できるようだがセルフパブリッシング本も扱うことを考えると漏れが多すぎるようで断念した。Amazonには思うところも多いが結局はあらゆる部分で頼らざるを得ない。きょうは何ひとつうまくいかない日で注文していた荷物も受け取り損ねたし図書館の用事も忘れた。机上には不在伝票と『世間知らず』がある。後者を返して『チューリップ』を借りてくるつもりだったのだ。ハメットが書けなくなってからの未完の長編で、どうやら伝記に断片的な部分訳が出ていただけで実際に読んだかのように錯覚していたらしい。発行年が四年前であるのについ最近気づいて驚いた。2002年に『崖っぷちマロの冒険』というハードボイルド・オマージュを書いたのだがそこにブラジルという綽名の教師を登場させた。『チューリップ』の主人公からとったのだ。精神的に追い詰められた時期だったのでハメットとチャンドラーを読み込みすぎて記憶が混乱したようだ。読んだのに記憶にない本もあれば読んでいないのに読んだつもりになっている本もある。どちらがましかわからない。おれの頭もAmazon.jsのように永久に読み込み中のままのようだ。この不具合は耄碌したのではなく遺伝や生育環境による。健全な精神は健全な肉体に宿るというから(昭和の運動会では校長が必ずそのように挨拶したものだが実際には誤訳であるらしい)、せいぜい筋トレに励んで心身共に健全になりたいものだ。しかし荷物を受け取り損ねたのも図書館の用事を忘れたのも実のところジムに行ったせいなのである。あしたは早番でジムも定休日だ。残業を免れて閉館前に図書館に寄り、再配達に間に合うよう帰宅できることを祈っている。『ぼっちの帝国』はいまだ放置されている上にいま見たら『逆さの月』のリンクも動作しなくなっていた。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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