妄想中年日記

連載第168回: 助走の次へ

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2019.
02.07Thu

助走の次へ

何も考えずに思いつくまま垂れ流す日記も習慣化して二週間ほど経過した。やれるかやれないかでいえばいつまででもつづけられる。しかしつづけるべきかは悩んでいる。体力も睡眠時間も削られるしそもそもやらねばならぬことがほかに山ほどある。それでもここまでつづけたのは一日の終わりにささやかなりとも何か成し遂げた錯覚が得られるから、もっといえばその錯覚がかたちとなって残るからだ。単に成し遂げた錯覚でいえば本を読めばいい。買った本も借りた本も目の前に積んであり読んでくれと訴えてくる。多少なりとも消化すれば帰宅してからの時間を無駄にしなかった、と安心して床につくことができる。充実感の錯覚にはそれで足りるしどちらかといえばそのほうが生産的だ。映画を観てもいい。昨年末からAmazonプライムに加入したので観てもいいかなと思える作品はいくつかある。何度も書いたがストリーミングや電子書籍のようなデータは権利者がその気になったときしか閲覧できない。フィジカルとの差は弾数と猶予期間だ。円盤やプリント本は最後のひとつが廃棄されるまで流通しつづける。ゆえに閲覧できるものはデータで利用し、そうでないものはフィジカルを借りるなり購入なりすることになるが、いずれにせよあるときに手をつけておかないといつかは消失する。地上から消え去る前に楽しみたい作品はあまりに多すぎて時間はあまりにも少ない。だれも読まない日記に費やす時間などどう考えてもない。しかしひとたび習慣化したからには放り出すのは負けたようで悔しい気持もある。妥協点としてはきっかり三十分で書くのをやめる、とかそのあたりだと思う。『ぼっちの帝国』のプロットは四百字詰め原稿用紙換算で五十四枚になった。日記と同じように何も考えずとも手癖だけで書けるところまで詰めておきたい。重要な箇所の掘り下げが足りないのであともう少し手間をかけるつもりだ。明晩のことはわからないがとりあえず今夜はここまで。更新が絶えたら小説を読むなり書くなりしているのだなと思っていただきたい。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的な作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『逆さの月』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。最新恋愛小説『ぼっちの帝国』連載中。
ぼっちの帝国