D.I.Y.出版日誌

連載第161回: 新しい習慣

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2019.
02.02Sat

新しい習慣

昨夜は次の一手次の一手とあたかも何か策でもあるかのように連呼してしまった当然そんなものはないあっても書くものかつまらない連中が群がってきて潰されるのにはうんざりだしかし今回は実際に何も考えていない何かしなければとの思いはあるが具体的にやれることはないそもそもなんでこんな文章を書いているのか毎晩欠かさず日記をつける習慣を試したかっただけだ新しい習慣をはじめるのが好きなのだたぶんジム通いだってそうだ筋トレも有酸素運動もすっかり生活の中心に居座ったいまでは通いはじめる前の生活が思い出せない日記もそうなるかといえばそんなことはなかろう私生活を覗き見たがる輩が群がって陰口をいいふらすばかりだたまに自分の文章を読み返すと無理はないと思えるがしかしそんなことはどうでもいい策はないが考えていることはあるあるにはあるのだが書けるほどのことはひとつもないたとえば投稿を募って書き手をブランディングするツールの実装を数年前からあれこれ試している参加しやすくすると UI がどうしてもソーシャル寄りになり文学史上の偉大な作家たちと投稿者とを同列に並べる意図が機能しなくなるソーシャルな機能をすべてバイパスしてバックエンドも完全に塞いだセキュリティ上の都合と UI の単純化のためだtwitter ログインなど可能にするとろくなことがない登録は手動ログインもメール経由でいちいち個別に承認するようにしたフォームに画像と文章を貼りつけてボタンを押せば縦書きの連載小説ができあがる著者名をクリックすれば著作一覧ページへ飛ぶ著作はタームを付与すれば古今東西の名著と関連づけられ特集ページも自動生成される将来的には投稿した小説を epub にまとめられるようにするつもりだソーシャル寄りの UI を避けたことで記事をあとから編集できなくなったのが難点だがあとから直せないのは雑誌に投稿したって同じだ小説連載機能は本の感想機能にも応用できる現在はバックエンドのフォームにいくつか入力するだけで自動的にページが生成されるようにしているがこれを来訪者向けに投稿フォームとして開放することは技術的には可能だこのシステムを数年前に意図した通りに運用すればかなりのインパクトになるだろうしかしやらないとりあえず実験しているだけだ縦書き連載機能は次の小説に使うことも考えているが何しろアーヴィング方式で結末から書くことを検討しているのでどうなるかわからないそもそも WordPress でまともな epub を生成する方法がないさまざまなプラグインを試したがどれも使いものにならなかった自作する知識などかけらも持ち合わせてはいないこのウェブサイトはぐぐってコピペのくりかえしで既存テーマを魔改造したものにすぎない逆にいえばデジタルデバイドに取り残された痴呆中年でも努力すればそのくらいはやれるのだ肥満だってたかだか二ヶ月ジムに通っただけで解消された深く考えることはない職場での無能はおれには出版があると思えば気にならないし一冊も売れないのはこれで喰ってるわけじゃないと思えば気楽なものだどこで何をしてどう生きたって嗤われるのだ生きたいように生きればいい


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。