杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第132回: 見せる

書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2018.
04.27Fri

見せる

作家と読者は権威と取り巻きの間柄ではない完全に対等でなければならないあえて上下を問うならばむしろ読者のほうが立場は上だ編集者や出版社は発注者であっても対等でなければならない)。 書くのも読むのもひとりでやる内省的な作業だ小説は不特定多数へ向けていながらただひとりの相手へ向けた手紙のようでもあり対等かつ一対一の関係性であるといえるそうでありながら頑然と一方通行でなければならないソーシャルメディアに見られるような評価経済を前提とした Patreon やそれを模倣したウェブサービスは双方向でありながら対等でも平等でもなく一対多の非対称な関係性を要求し取り巻きの多さで価値を計る出版や読書の望ましいありようとはいえない

経済的な支援なら Kindle 版の購入・閲覧で行ってもらえばいいお布施カンパコーヒーなりビールなりを奢るという方式を目にする機会は多いが実際に金を投じた話は聞いたことがない音楽であれば音源を無料にして公演や物販で稼ぐところだが加えて近年では YouTube の無断アップロード者に話をつけて広告料をまわしてもらうことも一般的になっているストリーミングサービスも普及したがほとんど収入にはつながらないだろう)、 小説ではその逆になるかもしれない単行本の購入なり閲覧なりがお布施であって著者の人となりや思考のストリーミングが無料の見世物となるそのため著者のペルソナをあたかも小説の登場人物のように構築しブランディングする試みを二年前まで行っていた個人が主体的に行動するのはこの国では好まれないとわかった

登録制にして会員限定コンテンツを載せるのが五年ほど前から流行っている。 「クリエイター支援などと称しているが要は評価経済の換金装置だお山の大将をのさばらせ一般読者を取り巻きに貶める仕掛けにすぎない有料であるべき新聞社の記事でさえ有料会員でなければ先が読めないと不満を憶えるまして無名の書き手にだれが金を払うものか何様だという話だ無料で読めるとしても登録の手間でさえかけたくない登録すれば特典コンテンツが読めるのはいいしかし通常の記事はだれにでも読めなければならない無名の書き手であれば読んでもらえるだけで感謝すべきでむしろ読者に金を払ってもいいくらいだそういう商売はいずれ発生するいまは評価経済の非対等性をごまかし、 「15 分間の有名人に憧れる愚か者を集めて搾取するサービスが横行するばかりだWordPress が掲げる出版の民主化とは正反対でありコンテンツを付録の握手券に貶めている

会員登録のすべてを否定するつもりはない利点がほかにあるはずだ限定コンテンツ提供は手段であって目的ではない手段自体が目的になり得るのであれば別だ)。 記事は記事だけで読ませたいコメント欄は情報量が多すぎて混乱する第三者の意見は別の場所で区別して読みたいアクティヴィティを開放してそこに感想を書いてもらう手はあるしかし他人を視界に入れたくないし話しかけられるのも困るいっそサイトの機能すべてを開放して読書感想の SNS にすることも考えたがそんなものは世の中にすでに腐るほどあるBuddyPress を利用して何かできるはずなのだが今のところ思いつかないアクティヴィティマイクロブログ機能を備忘録代わりにしているだけだところがトップページ以外でもっとも閲覧が多いのはそのアクティヴィティなのだ仮想人格の構築を軸とした販促は二年前にやめて筆名も変えた杜昌彦であることは見世物として成立していないはずだ解せない

そもそもだれがなんのためにサイトを訪れるのか一時期は悪意をもつ輩が多数を占めていたさまざまな対策を打ったのでさすがに減ったはずだどんな間柄でも二年も離れたら他人になるかつての知り合いが様子を見に訪れるとしても多くてせいぜい二三名だろう広告の影響はない少なくとも Facebookページからの流入はないいいねは気に入ってくれた証では決してない流れてきた投稿すべてにいいねする習慣をもつひとが一定数いるだけだランディングページ広告からの流入はすぐに離脱される本は読まれないしサイトの再訪もないごくまれに書名の検索から訪れる閲覧者がいても目当てのものではないと気づくと去っていく回遊は生じないし再訪もおそらくないそれでもいいと思ってやっている二年前までと異なり自著が読まれることは重視しないこういう酔狂な趣味をもつ人間が増えれば読書の価値は Amazon のランキングばかりではないということが少しずつ広まるはずだと信じている


(1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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