D.I.Y.出版日誌

連載第123回: 広める

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2018.
04.05Thu

広める

Kindle は客筋が悪い本ではなくガジェットに親和性のあるひとたちが利用するからだストア開始当初より改善されつつあるとはいえ本好きにはまだ届いていないずっとその問題に悩まされてきたこの状況でまともな本を書いて売ろうとしても自らを貶める結果にしかならない客筋の改善が先決だ読書の文脈を提示してその流れに自著を関連づけるのがよいこのサイトを充実させることが遠回りのようでいて結局は近道のようだ

旧筆名と紐付いた旧ドメインが不快だったのでリダイレクトとサイト自体を削除した検索順位が低下した検索順位を戻すために Facebook ページと広告をはじめた直後に考えなおしてドメインとリダイレクトを設定しなおしたリダイレクト設定によって検索順位が回復した広告の意義は薄れたが知識欲のために別のやり方を試すことにした。 「こうするとどうなるのかというのをなるべく多く試したいいま知りたいのはアクションの男女比を揃える方法だどうしても中高年男性ばかりが反応する年齢はともかく性別の偏りは是正したい女性に限定して広告を実施しても男性に較べて明らかに反応が悪い冒頭に書いた客筋の悪さとも関連するがKindle を利用する日本人女性の絶対数がそもそも少ないのだガジェット的な玩具から遠ざけられて育てられるためだと思うKindle を対象ワードに含めず読書」 「小説」 「文学などで実施してもやはり同様の傾向がある下手をすると読書や学問からも女性は遠ざけられているのかもしれない全国に広告しても地方からの反応はないので都市部に限定して実施してはいる文化的なものに対するアクションは地域格差男女差がとにかくひどい

たとえば Facebook ページにいいねしてくれたら抽選で五名にオリジナル書籍をプレゼントといった企画をやりたいギヴアウェイの発送が米国内限定なのが痛いカウントダウンディールなどどうでもいいがインスタントプレビューすら使えないままなのは痛いAmazon Book Review に至っては噂すら聞かないフルスペックの Amazon が使えたらやれることはたくさんあるいつまで機能制限版でがまんしなければならないのだろう技術的な制約よりも人材の確保がむずかしいのかもしれないKDP の求人は出たままだそもそも求人を出す場所をまちがえている人件費の安い土地にコールセンターをつくりたいのはわかるけれども完璧な英語を駆使するスーパーエリートがこの街のような田舎にいるわけがないプリントオンデマンドにしても日本では外部委託で済ませたようだ外部企業がやると制限が多すぎて実際に試したけれど使いものにならなかった別にその会社が悪いわけではない仕組み上どうしようもないのだ

実際のところ同じことがやれるのであれば Amazon である必要はないBCCKS のような汎用性のない完全ローカルであっても構わないBCCKS は PDF 入稿可にして ISBN を使えるようにしてくれたらいいのだけれど直接購入ボタンや試し読みの WordPress 用プラグインがあれば理想だせめてそうした機能を可能にするノウハウを公開してほしいプラグインの要望は何年も前に出した何通ものメールのやりとりをしたが担当者は最後まで意味を理解しなかった話にならないので断念した技術的にはとても優れたサービスなのにどこを目指しているのかわからない何もかも中途半端だ

悪魔とドライヴは 2016 年の初版刊行時から何度か Facebook 広告を実施している恋愛小説でありながらこれまでは紹介文が男性向けの文章になっていた方向性が絞り切れていなかった文章を改めて広告を実施し並行してサイトの広告も走らせた土日祝日は反応が悪いので平日のみの運用とする読まれるためではなく好奇心を満たすのが目的だ身銭を切ってこういう思考実験をつづけていると自分がだれに何をどのように売りたいかが見えてくるもっといえばそれによって自分が何者であるか見定められるような気がしてくる⋯⋯というほど大げさなものでもないのだけれど読書家ではないなりに本が好きだし本が好きなひとに向けて書いているのだと少なくとも思う


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。