杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第125回: 広める

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2018.
04.05Thu

広める

Kindleは客筋が悪い。本ではなくガジェットに親和性のあるひとたちが利用するからだ。ストア開始当初より改善されつつあるとはいえ本好きにはまだ届いていない。ずっとその問題に悩まされてきた。この状況でまともな本を書いて売ろうとしても自らを貶める結果にしかならない。客筋の改善が先決だ。読書の文脈を提示してその流れに自著を関連づけるのがよい。このサイトを充実させることが遠回りのようでいて結局は近道のようだ。

旧筆名と紐付いた旧ドメインが不快だったのでリダイレクトとサイト自体を削除した。検索順位が低下した。検索順位を戻すためにFacebookページと広告をはじめた。直後に考えなおしてドメインとリダイレクトを設定しなおした。リダイレクト設定によって検索順位が回復した。広告の意義は薄れたが、知識欲のために別のやり方を試すことにした。「こうするとどうなるのか」というのをなるべく多く試したい。いま知りたいのはアクションの男女比を揃える方法だ。どうしても中高年男性ばかりが反応する。年齢はともかく性別の偏りは是正したい。女性に限定して広告を実施しても男性に較べて明らかに反応が悪い。冒頭に書いた客筋の悪さとも関連するが、Kindleを利用する日本人女性の絶対数がそもそも少ないのだ。ガジェット的な玩具から遠ざけられて育てられるためだと思う。Kindleを対象ワードに含めず「読書」「小説」「文学」などで実施してもやはり同様の傾向がある。下手をすると読書や学問からも女性は遠ざけられているのかもしれない。全国に広告しても地方からの反応はないので都市部に限定して実施してはいる。文化的なものに対するアクションは地域格差、男女差がとにかくひどい。

たとえばFacebookページにいいねしてくれたら抽選で五名にオリジナル書籍をプレゼント、といった企画をやりたい。ギヴアウェイの発送が米国内限定なのが痛い。カウントダウンディールなどどうでもいいがインスタントプレビューすら使えないままなのは痛い。Amazon Book Reviewに至っては噂すら聞かない。フルスペックのAmazonが使えたらやれることはたくさんある。いつまで機能制限版でがまんしなければならないのだろう。技術的な制約よりも人材の確保がむずかしいのかもしれない。KDPの求人は出たままだ。そもそも求人を出す場所をまちがえている。人件費の安い土地にコールセンターをつくりたいのはわかるけれども、完璧な英語を駆使するスーパーエリートがこの街のような田舎にいるわけがない。プリントオンデマンドにしても日本では外部委託で済ませたようだ。外部企業がやると制限が多すぎて、実際に試したけれど使いものにならなかった。別にその会社が悪いわけではない。仕組み上どうしようもないのだ。

実際のところ同じことがやれるのであればAmazonである必要はない。BCCKSのような汎用性のない完全ローカルであっても構わない。BCCKSはPDF入稿可にしてISBNを使えるようにしてくれたらいいのだけれど。直接購入ボタンや試し読みのWordPress用プラグインがあれば理想だ。せめてそうした機能を可能にするノウハウを公開してほしい。プラグインの要望は何年も前に出した。何通ものメールのやりとりをしたが担当者は最後まで意味を理解しなかった。話にならないので断念した。技術的にはとても優れたサービスなのにどこを目指しているのかわからない。何もかも中途半端だ。

『悪魔とドライヴ』は2016年の初版刊行時から何度かFacebook広告を実施している。恋愛小説でありながらこれまでは紹介文が男性向けの文章になっていた。方向性が絞り切れていなかった。文章を改めて広告を実施し、並行してサイトの広告も走らせた。土日祝日は反応が悪いので平日のみの運用とする。読まれるためではなく好奇心を満たすのが目的だ。身銭を切ってこういう思考実験をつづけていると、自分がだれに何をどのように売りたいかが見えてくる。もっといえば、それによって自分が何者であるか見定められるような気がしてくる。……というほど大げさなものでもないのだけれど。読書家ではないなりに本が好きだし、本が好きなひとに向けて書いているのだと、少なくとも思う。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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