杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第124回: 次へ

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ: ,
2018.
03.31Sat

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旧筆名は仮想人格として運用した認知を高めるのが目的だったそれなりに機能したが本は読まれなかったセルフパブリッシングの状況を改善する活動も理解を得られなかった後者は展開の仕方が稚拙だったし仮想人格と相性が悪かった何より悪意を集めるばかりで逆 SEO のようなことになったのは始末が悪かったそもそも適当に習作の主人公からとった名前で愛着もなかったそれで筆名も運用法も改めた旧ドメインからのリダイレクトをサイトごと削除したやはり八年の重みはそれなりにあるトップページが検索に出なくなった検索順位は日増しに低下するやむをえずリダイレクトの設定を戻した旧ドメインは六月に契約が切れる解約を取り消さねばならないGoogle によればリダイレクトは最低でも一年できれば永久に継続すべきだそうだ現在のドメインは七千円弱旧筆名と紐付いたドメインのためにプラス二千円を払うのが業腹だがやむをえない

経験上ソーシャルメディアからのリンクは評価を上げるように感じるFacebookページを作成して広告を出した試験的に悪魔とドライヴKindle 版の無料キャンペーンを行いそれに対しても広告を実施した40代後半から 60代後半までの中高年男性ばかりがクリックするマジョリティのために書いているのではない内容を理解してくれる読者は主に女性だとアーヴィングも書いているあの本の商品紹介文はひとに書いてもらったものを元にしていて気に入っているしかし書き方が恋愛推しではないので誤った客層に訴えている可能性があるためしに広告対象を女性に絞ったら多少の変化が生じた単純に Kindle の利用者が男性に多いせいもあるかもしれないそれもまたこの国の差別的な側面だと思う女性限定で広告を打つことで Facebook には出会い系か何かと思われたようだ世界中の見知らぬ他人を表示する知り合いかも機能にうら若き美女ばかりが表示されるようになったこれまでは国籍性別年齢を問わず完全にランダムに表示されていた——ナイロビの男子中学生ばかり表示されたごく一時期を除けばザッカーバーグのユーモア感覚は理解できない

現在の筆名は投稿時代に使ったうちのひとつだそのため検索上位に過去の恥が表示される)。 本名をもじったもので匿名的な運用に適しているbandcamp 的な支援サイトを今ならやれそうな気がするコピペで目的を果たせる程度の PHP の知識もついた前回の失敗はセキュリティの欠陥に主要因がある旧筆名が悪意を招いたことと twitter ログインとマルチサイトを利用したことだ今度やるなら人格OverDrive の簡略版のような機能にフォーラムを追加しメールアドレスの登録を必須にした上で最初からだれでも利用可能にするドメインやサイト名も考えてあるしかし今そんなことをする意味があるのか。 「品質向上と販促のために作家が主体的に利用するツールという概念は海外では一般的であってもこの国ではいまだに理解されまい売るのに品質がいっさい関係がない粗悪なものほどよく売れるが優れたものでも売れることはある現状では品質を向上させることに関心が集まるとは思えないそもそも主体性という概念がこの国には馴染まない。 「be myselfではなく自分探しの文化であり権威者が与えてくれるのを当然とする国なのだ個人が組織を規定するどころかその逆だ主体的であろうとすれば憎まれ蔑まれる

交流の場ではなくツールとして提供するにしても場のような意味が生じるのは避けられまい不特定多数の利用者にうまく対処できるか好きに使ってもらうようにして整備だけに注力すればどうにかなる現在の筆名ならそれが可能だし現実的に考えればそもそも利用者などいまいあくまで趣味の技術習得のためにやるにすぎない準備を進めても差し支えないようにも思うが読書の価値そのものがないがしろにされる現状では何をやっても意味がないストア表示における読書の文脈そのものをまず先にどうにかしなければ日に十人しか閲覧しないサイトで何をどれだけ働きかけてもどこにも影響を及ぼせないのはわかっているしかし世間は変えられなくとも自分は変われる本の魅力を伝える努力だけはしたいどれだけの他人が見ていようと見ていまいと


(1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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