この装幀はひどい。村上訳はいいです。清水訳も悪くないけれども、もっとよく伝わる。要は女に去られて滅入った男が、似たような寂しさを抱えた女たちと寝てみたりしたけれども、やっぱり忘れられませんでしたというだけの話なんです。大恋愛の末に結ばれた18歳上の女に先立たれ、自暴自棄になり、自分にもそう長い時間は残されていないのを悟った老人が、マーロウものに仕立てればとりあえずカネにはなるとでも思ったのか、没になった脚本をどうにか活かそうとして苦闘した結果、こんな代物ができあがった。そう思って読んでみてくださいよ、老いてなお若い女へ執着し、金の力でどうにかしようとする老人への共感と侮蔑のまなざしや、ほほえましい若い男女への祝福の(そしてちょっぴり羨望の)まなざしの意味が、じんわり伝わってくるというものじゃありませんか。村上訳で読み返してわかったんですが、そして案外ちゃんと探偵小説になっている。
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レイモンド・チャンドラー 著
午前六時半。一本の電話が私立探偵フィリップ・マーロウを眠りから覚まさせる。それは、列車で到着するはずの若い女を尾行せよとの依頼だった。依頼主の高圧的な態度に苛立ちながらも、マーロウは駅まで出向く。女はすぐに姿を現すが、彼女には不審な男がぴったりとまとわりつき―。“私立探偵フィリップ・マーロウ”シリーズ、長篇第七作。新訳版。
¥1,870
早川書房 2016年, 単行本 319頁
ジャンル: 老いと死
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2017.
09.05Tue
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