この装幀はひどい。 村上訳はいいです。 清水訳も悪くないけれども、 もっとよく伝わる。 要は女に去られて滅入った男が、 似たような寂しさを抱えた女たちと寝てみたりしたけれども、 やっぱり忘れられませんでしたというだけの話なんです。 大恋愛の末に結ばれた 18 歳上の女に先立たれ、 自暴自棄になり、 自分にもそう長い時間は残されていないのを悟った老人が、 マーロウものに仕立てればとりあえずカネにはなるとでも思ったのか、 没になった脚本をどうにか活かそうとして苦闘した結果、 こんな代物ができあがった。 そう思って読んでみてくださいよ、 老いてなお若い女へ執着し、 金の力でどうにかしようとする老人への共感と侮蔑のまなざしや、 ほほえましい若い男女への祝福の (そしてちょっぴり羨望の) まなざしの意味が、 じんわり伝わってくるというものじゃありませんか。 村上訳で読み返してわかったんですが、 そして案外ちゃんと探偵小説になっている。
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プレイバック
by: レイモンド・チャンドラー
午前六時半。一本の電話が私立探偵フィリップ・マーロウを眠りから覚まさせる。それは、列車で到着するはずの若い女を尾行せよとの依頼だった。依頼主の高圧的な態度に苛立ちながらも、マーロウは駅まで出向く。女はすぐに姿を現すが、彼女には不審な男がぴったりとまとわりつき―。“私立探偵フィリップ・マーロウ”シリーズ、長篇第七作。新訳版。
特集: 老いと死
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読んだ人:杜 昌彦
(2017年09月05日)
(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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