諸屋 超子

豚はいつ飛ぶ?

第1話

諸屋 超子書いた人: 諸屋 超子, 投稿日時: 2020.07.09

 僕が《リア充》について知っていることは二つ。とにかく人と繋がっている。みんなオシャレをする。
 僕が知らないことは山ほど。自分にパートナーが居ることを、いつどんなタイミングで誰かに伝えてるんだろう? もてない友人に、自分のことを好きかもしれないデート相手に。
 特定のパートナーはいないけれど、僕と付き合いたくないと言う女の子は、遠くない未来にもっといい相手が見つかると踏んでの断りか? それとも、僕と付き合うくらいなら未来永劫独り身で
通した方がマシだという気持ちなのか? 僕のなにがそんなに嫌なのか? 
 例えば僕は、一般的にいうところのぶおとこにあたるだろう。しかし僕に瓜二つの父には妻も子もいる。これは「人は顔ではない」証拠になりうるか?
 僕の身長が成人男性の平均より15センチほど下回るからかと考えてみるが、友達のよっちゃんは190センチ超の身体で連戦連敗。女の子たちは1ヶ月もしないうちによっちゃんを避けだし、最後は必ず音信不通で片想いが終わる。
 僕が貧乏だからか? と考えてみるが、けちで貧乏の佐々木君は「色男、金と力はなかりけり」で奥さんに養われつつ不倫相手が3人もいる。デートはすべて女性持ちで、うち1人は小遣いまでつけてくれるらしい。
 僕がそんな極悪非道な人間になれない優しすぎる人間だからかもしれないとか考えてみたいけれど、残念ながら僕は他人への愛情なんてほとんどない。友人知人の結婚式の度に早く離婚しろと思う。実際に離婚したら、ご祝儀泥棒、ご祝儀詐欺と罵る。
 結局、この世はどうあがいてもモテない奴と、何もしなくてもモテる奴に分かれるんじゃないかって気がしてくる。その考えは、安心とも絶望とも恐怖ともつかない思いに僕をさせる。小さい頃に布団の中でこんな想像をした。僕たちは、とてつもない巨人に飼われた小人で、家も学校も巨人にはシルバニアファミリーみたいなおもちゃにすぎないんじゃないかって。あのとき感じたみたいな安心とも、絶望とも、恐怖ともつかない気分になる。
 アイドルオタク……これがモテない一因のように感じて、僕はひた隠しに隠した。しかし、夫婦でコンサートに通うヲタ夫婦なる存在を知った時に情けなくなってやめた。モテないだけじゃなくて、そんな自分を慰めてくれる存在であるところの虹色リボンマックスのミウミウを言い訳にするなんて。ミウミウは1ミリも悪くなくて、少しも汚れていないのに、僕はとことんに卑劣だ。
 早めに伝えておくが、この物語で僕は生まれ変わったり、恋に落ちたりしない。そうだな。これは言うなれば、何やってもモテない僕の愚痴の集大成のようなもの。それ以上にも以下にもならない。そんなものを君に語って聴かせるなんて、情けなく感じるし、申し訳なく思っているけれど、何とも出来ない。
 ただ聴いて欲しい。誰でもいいから。君一人でもこの際構わない。こういう言い方って嫌な言い方かもしれないけれど、でもなんというか、分かってて欲しいんだよ。どうしても。僕の話を聞いてくれるのが君一人だってことがどうにも不本意だってこと。


長崎市にある本のセレクトショップ『Book with Sofa Butterfly Effect』店主。読書について、本について、文学について。好きなことは「しゃべって、読んで、無駄な時間を過ごすこと」。本を通じて人と人が交わる場所をつくりたい。月2~4回、本を読んでいなくても参加できる読書愛好会を開催。編集室水平線ウェブサイトにて連作『コロナinストーリーズ』連載中。紹介記事:朝日新聞長崎経済新聞西日本新聞
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